「たまにさ、明らかに地雷が埋まっているってわかっている場所に突っ込みたくなることってあるよね」
「そうですね。あなたはその傾向が強すぎますが」
「今日仕事忙しくてさ、会社帰りに甘いものを無性に食べたくなったの」
「ストレス解消に甘いものを摂ってたらいつまでも痩せませんよ?」
「一口に甘いものって言っても、その日によって食べたいものが違うんだ。クリーム、あんこ、チョコレート。このサイクルで食べたいものがローテーションしてるんだ。今日はチョコの日だった」
「知らんがな」
「チョコレートも色々あるけど、コンビニで売っているチョコって砂糖の味が強すぎてさ。カカオの配分が多い苦み走ったチョコを買おうと思ったんだ。で、そういうの売ってるの、ここらへんだと『やまや』しかないんだよね。そんで行ってきた」
「チョコに限らず輸入食品多いですよね、あそこ。どういうルートで仕入れているのか気になります」
「チョコの棚見たらさ、『ポリフェノールが一杯入ってます』みたいなキャッチフレーズでカカオ80パーセントとか90パーセントとかある訳だ」
「ご希望通りの品ぞろえですね」
「その中でも刻んだコーヒー豆を混ぜた苦いチョコレートがお気に入りでさ。それを買おうと思ったら、目についちゃったんだよ。これだ」
「・・・あ、それが買った品ですか。イチゴ味のチョコ。なんの変哲もないですね」
「俺、イチゴ味のチョコが大好きなんだよ」
「だから知らんがな」
「目当てのものを買おうと思ってたのに、別のものを買いたくなる。この微妙な気持ち分かる?」
「わかりますけど。頭の中は苦いチョコを食べるモードになってるけど、食べ慣れた好物も食べたくなるってことでしょ?」
「それが、食べ慣れた好物って訳でもないんだよ。このチョコの裏面をご覧ください」
「はぁ。・・・ストロベリー味、・・・・!!・・・・・・・・・コショウ入り」
「地雷でしょ?」
「地雷ですよね」
「あえて買いたくなるよね」
「賛同しかねます。ちなみにいくらしましたそれ?」
「400円」
「高ッ」
「チョコにコショウを混ぜたらどんなスパイシーな味になるのか、非常に気になって」
「気にしたら負けの部類ですよそれ」
「ま、そんなこんなで買って食ってみた」
「どうでした?」
「買わなきゃよかった」
「ですよね」
「刻んだコショウとイチゴチョコを一緒に食ってるみたいだ」
「そのまんまの味ですね。少しはひねってください」
「だってそのまんまだもの。コショウ効きすぎて辛いし。苦味を求めてチョコ買ったのに、辛みに苦しめられるって何これ?」
「自業自得でしょ」
「やっぱ輸入物だ。日本人の味覚にあわない」
「海外の『スパイシー』って言葉は結構な鬼門ですから」
「あ、スパイシーで思い出した。ファミマのプレミアムチキンあるじゃん。クリスマスが近いからかな、サイが出てた。口直しに買ってくる」
「ちょっと。このチョコどうするんです?」
「あげます」
「今の話聞いて食べたくなる訳ないでしょ」
「他人にとっては地雷でも、貴方にとっては地雷じゃないかもしれない」
「何良い事言ってる風にしてんですか。誰にとっても地雷でしょこれ。自分で買ったんだから自分で食べなさい」
「だってまずいんだもん!」
「ストレートすぎます!」
「今度こそは地雷を踏まずにいける!と思って繰り返す過ちよ・・・」
「馬鹿ですね」
「明日はクリームの日だな・・・」
「懲りてください」
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