午前四時だろうと暑いし暗がりだけど空は晴れていてだけど脳味噌の中じゃ狂気の入物がいまにもあふれそうで振動を与えないようにと必死で対策を講じている、暗闇の中ディスプレイに目を凝らして、それをどうにか抑制されたものに変換しようと…とうの昔に留まるべき一線は越えている、おそらくは子供のころからそうだったんだ、誰にも通じない痛みや思いがこの中にはあり過ぎて…校庭で氷漬けになったような気分をどれだけ味わっただろう、この世界は自分とは違うもので構成されていると感じ始めるもっとずっと前から、バグのようなものが周辺では始まっていたのだ、どうすれば変えられる、どうすればサバイブ出来る、眺めていた風景はいつも決まって奇妙なほどに鮮やかか色褪せているかのどっちかだった、目を傷めつけていると判っているのになぜか明かりをつけることが出来ない、見つめるものが緩慢になってしまうからだ、いまだけは黙ってディスプレイだけを見ていなければならない…これは常日頃言葉にしている断層についての連想だ、吐き出さなければならないもののために描かれる絵だ、だからひたすらに散らかしていかなければならない、出来うる限り汚していかなければならない、統制されたものなどここには必要ない、気がふれる代わりに描かれるものなのだから―叫びにしか変換しようのない感情がある、そんなものが湧き上がってくるときには有耶無耶に出来るだけの速度が必要になる、これはそのことについて語っているようで全くの他所事で塗潰されているようなものでもある、なぜならある一つの事柄について語ることは、けっしてそれ自体を語ることが出来るようなものではないからだ、その周辺の何か、それによく似た何かをどうにかこうにか構築しようと模索しているだけに過ぎないからだ、時刻を見てみろ、午前四時だ、ほとんどの人間は眠っている時間だ、俺は眠れなくなった、のんびりとした加重する夢を見て…目覚めたら眠れなくなった、眠る前に見たクソみたいなホラー・ムービーのせいかもしれない、だけどそんなものが関わっているなんて考えたくもない、そんなものを見ながら眠りにつくことなんてこれまでにもいくらでもあったことさ、そんなものに影響されてしまうほど簡単な脳味噌じゃない…だけどそう、ずいぶんと叫び声の賑やかな映画だったな、ほんの少しだけ羨ましいと思ったかもな、あれは正統的なきちがいだった、なんというか、合理的なきちがいだったよ、ある意味で、あれは俺が日頃求めている環境ですらあった、受理される書類のような狂気さ、正当な手続きに則った…夢の内容ときちがいには関係がなかった、思い出せる分には…目覚めた時刻がまずかったんだ、そう、目覚めた時刻がまずかったのさ、死のように静まり返った時間、思考が果てしなく群生しようとする時間、そんな風に感じたことはないかい、ねえあんた、そんな風に感じたことは無いかい、こんな時間に目を覚ましてさ、そんな思いに囚われたことは無いかい…ないとしたらそいつは幸せなことだね、そいつはきっと幸せなことなんだと思うぜ、こんなことは無いなら無いに越したことは無い、まるで思考が馬鹿な飼犬のように、はぐれたリードを引き摺りながら無軌道に走り出してしまうのさ、そしてそう、きっと、車のタイヤで首を捩じ切られて終わったりするんだ…昔、少しの間だけ飼っていた犬はそうして終わった、こんな夜には不思議なほど鮮明に思い出すよ、吐いていた血は僅かだった、首が捻じれていて…抱いて歩いているとぐらぐらと揺れた、そのころ住んでいた家の近所に獣医があって…いまはもうやっていないかもしれないな、とにかくそこへ連れて行ったら、もう首の骨が折れていて無理だって言われた、あんときはまだ温かいそいつを抱いて泣きながら帰ったっけな、そんな風にして別れたのはそいつだけだったな、後はみんな長生きしたよ…だけどさ、あいつらが生を忘れるとき、いつも、俺の代わりに死んでくれるのかもしれないなんて、そんなことを少しだけ考えたな―俺はいつもそんな風に代わりに死んでくれるものを探しているんだ、例えば、こうした乱雑なものの中や、あるいは小説や、コミックの中なんかにね…代わりに死んでもらって安心しようとするんだ、だからこれはある種の感情によく似たなにかというわけなのさ…午前四時だってそんな風に書き始めてからもう四十分が過ぎた、台風が通り過ぎて今日はいい天気になるだろう、猛暑日だって昨日の夕方のニュースじゃ言ってたよ、もうすでにこうしていると汗が滲んでくるくらい暑いんだ、さて、朝までにもう少し眠ることが出来るかな…少し離れた空で鴉が鳴いている…。
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