茎を薙ぐ鎌のような速い内臓の呻き
傷みと呼ぶには無自覚に過ぎて
骨に刻まれた記録みたい
袋小路の高いブロック塀を死に物狂いで超えたら
揺るぎないかに見えた路面は底なしの沼だった(人食いのような擬態、そして吸引)
人食いのような擬態、そして吸引―圧迫
心臓を起点に
血液が逆流を起こし始める、ああ、そのときにおいてなお
なおも他人事の阻まれた魂
思い知らずのうちに仰ぎ見た太陽の
なんと、なんと、群青色だったことか!
穢れもまた生命の喜悦である事を知るがため、知るがために
瞬きほどの行にすべてが見えたらと焦がれる
耳を捥がれた兎の
存在を問うその眼の赤みのようななんという火
天秤ばかりが真一文字に並んだそのときに
骸同然の肢体には仄かに電流が走るのだ
声もなく、ただ、声もなく、ただ
歪み、淀み、穢れ、失い、なお
水晶体の奥の奥は
まだひかりの見つけ方を知っている、細かに絞りを調節しながら
暗がりの中に臭う一点を探している
世はこれすべておぞましき飢餓
着飾ってしまうには遅過ぎるみたい
痛い、暗い、辛い、不意に迷い込むそれらは
その胸中にまだ希望が
朝露のように転がっていればこそ
強い雨よ降れ
呪いのように濡れる事が出来れば
衣服の重みとともに知ることがある、ああ、触れてこそ
触れてこそそれは知と
肌に刻まれるのではないか?
胸倉を激しく掴んで
引きちぎらんばかりに振り回すと
逆流していた血液が反転を始める(なぜだ、それは利口な蛇のようだ)
その胸中に、その胸中にまだ希望が
朝露のように転がっていればこそ!認知せずとも言葉は生まれる
傷みすら感じさせぬ
薄い刃のようなまたとない綴りが欲しい
(それを欲することは過ちの極みであるのだろうか?)
太陽が
群青色から血の色へ
胸を震わせるようなただ紅い血液の色味へ、眼は
眼をそれを深く知る
だからこそ
ひかりは求められるのだ、ひかりは
こころの中で赤い血流となり肉体を振動させる―そのときの音を
そのときの音を詩と呼び捨てるのは
まごうことなき穢れなのか!!
穢れた詩になりたい
穢れた詩になって
本物の喜悦をものどもの眼前に
ものどもの眼前にしかりと晒したいのだ
どれほどのことを文節は排除してきたのか知っているかと
どれほどのことを蓄積が揶揄してきたのか知っているのかと
愛したものは
たしかに愛しくその胸にふれたものなのかと
神は愛を知ることはない
なぜならそれは穢れあってのものだからだ
言葉が神のものだというなら
俺は神を殺すために言葉を紡ぐ百足となろう
地に居てこそ、地に居てこそ…地に居てこその傷みを、地に居てこその思慕を
存在として投げ出すために言葉を紡ごう
悟りなどあるべきではない
ひととしての
ひととしてのこころが肉体を超えることはない
肉体と…肉体とともに超えること、それこそが
あらゆる行の奥にあるもの―そうではないのか!?
強い雨よ降れ、強い雨よ…歪み、淀み、穢れ、失い、なお、
水晶体の奥の奥はまだひかりの見つけ方を知っている
肉体よ、お前とともに行こう
肉体よ、お前とともに歩もう
こころと身体をひとつの名前で呼べるそのときが来たら
俺はすべてをこの闇に晒す事が出来るだろう
肉体よ、肉体よ、肉体よ、肉体よ
指先を深く入れて血液の温度を知れ、それは喜悦だ
大蛇のように暴れるお前の欲望は
飛ばし方次第では優美な絵画となる
指先を深く入れて血液の温度を知れ
穢れと祝福を抱いて…穢れと祝福を抱いてひとは産まれ落ちるのだ
それをなんと呼ぼう
それをなんと呼ぼう!
底なし沼の深いところに
風に揺れるような美しい百合を見つけた
体躯をひねってゆっくりとそれにたどり着き
慈しむように手を伸ばすと
濡れためしべが蜜を放ち、深遠に…
深遠に浸透して
俺は
それからひかりを、まばゆいひかりを…
見て…
それから……………………
脈動が……………………………………………
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