不定形な文字が空を這う路地裏

俺にDDTを


緩く縛った紐ほどほどけ始めていることに気付けない、それはあまりメジャーじゃない真理だ、それは状態として変化していないせいだ、硬く縛った紐には緩やかな状態から変化した跡というものが見える、だから、それが再び緩んだときは誰でも気付くことが出来る、でもそれは真理としては初歩の初歩だ、言うまでもないことだけれど、だが人はそんな初歩の段階で満足してしまう、緩く縛られた紐には注意など払わない、彼らは一見してわかること以外相手にはしない、だから、ずっと同じものを見続けながら生きる、それはつまり紐についてはひとつの形態しか理解し得ないということである、俺はそういう時いくつもの状態にこだわってしまう、だから紐についても、ひとつの形態しか理解しない連中よりは遥かに深い理解が出来ていると言える、俺がどうしてこんな話をしているのか君には理解出来ないかもしれない、でも俺はこういう話を根気よく続けてゆくことが結構重要だと考えているんだ、もちろんこれはほとんどの場合徒労に終わる、なぜなら彼らの前提は遮断することだからだ、他人を遮断すれば自分が確固たる理論を持っているということになる、まあ、子供騙しだけどね、でもそんなことばかりして、永遠に自分を騙し続けたまま死んでいこうとしている人間はごまんと居るんだよ、そして俺はそんな現状が少々忌々しいと感じているんだ、大多数高なんだが知らないけれど、馬鹿が幸せに暮らせるような世界でいちゃ駄目なんだよ、敢えてこういう言い方をすることを許してもらいたいのだけれど、俺は可能性のある人間は導いてやりたいんだ、良き先陣としてね、それぐらいの資格はあると言えるだけのことはしてきたつもりだ、人間は旗じゃない、強い風に靡いていれば見映えよく見えるけれど、風が無い日にはしょんぼりとしなびていることしか出来ない、そんなのあまりにも情けないし、しょうもない話じゃないか、移動し続けることさ、ひとつの地点からひとつの地点へ、移動しながら考えるということをやり続けなけりゃ人間はすぐに野良の猿に仲間入りさ、そして、群れて馴れ合って居るだけでいっぱしの大人みたいな、そんな幻想に溺れて目が覚めることなく死んでいく、考えただけで鳥肌が立つね、少なくとも八〇年は生きていける時代だというのにさ、どれだけの機会をドブに捨てるつもりなんだ、でも遮断されてるからね、俺は特に彼らに話しかけることはしない、無意味なんだよな、初めから、すべての出来事について、考え得る可能性は無限にある、思いつく数だけある、安直な結論に終始するか、本当にその現象から受け取るべきものを幾つもの選択肢の中から掴み取るかは自由だ、けれど、選択は無限に行われる方が得るものは多い、それは当り前のことだ、当り前のことのはずだろう、けれど人によっちゃあ、塾講することを無駄足のように言うやつも居るよ、俺はほんのちょっと微笑んで返すのみさ、話にならないやつと話をしても仕方が無いからね、本当に、柄にもないこと言うけどさ、こんなに選択肢の無い世間で当り前のように生きていると人間としてはろくなもんになれないと思うよ、国が悪くなるのは政治家のせいじゃない、それは絶対に国民のせいなんだ、でも、政治家に責任を押し付けて知らん顔が出来るシステムがあるものだから、みんなそうして生きてしまう、国が悪くなるのは政治家のせいじゃない、国民のせいなんだ、国が変わる方法なんてひとつさ、全体のレベルを底上げするには、国民ひとりひとりが心を入れ替えて自分の人生を真剣に考えることだ、でもそんなこと不可能なんだよ、さっき言ったように、安直な選択をすることを結論が早くて有能なことだと勘違いしている馬鹿どもは一回しか書き込めない記録メディアみたいなものさ、上書き更新が出来ないんだ、だから最初に書き込まれたことを忠実にやり続ける、そして気付くことすら出来ないで骨に還っていくんだ、この社会は本当にそういう人間を育てることに長けているよ、俺みたいな人間は変り者って言われてお終いさ、おかしな話だぜ、俺はどこにも無い話をしているのに、よくある話しかしていないような連中がどうして俺の話していることを云々出来るつもりで居るんだろう?本当に、悪いんだけど、思考の成り立ちからして違うんだよね、もう少しわきまえて欲しいものだよ、どうにも今日はくだらないことばかり話してしまう、でもまあ、たまにはこういうのもいいんじゃないか、相手にしても仕方のないやつを相手にしなきゃいけない時もあるんだよ、だから俺は近頃終始イライラしてるのさ、イライラしたって何にもならないことだらけなんだけどね、こんな街に住んでいると、本当に時々、虫でいっぱいのプールで溺れているような気分になることがあるよ、呼吸をしようとしても虫しか飛び込んで来ないんだぜ、やってられないよな、疲れてるのかって?そうかもしれないな、でもそんなことばっかりだったぜ、小学生のころからさ。


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