不定形な文字が空を這う路地裏

ホテル・カリフォルニアの幻のステンド・グラス






胃袋に投げ込んだアスピリンが
つぎはぎの脳味噌を魔法にかける
何をしても消せない病気がごりごりと疼く夜は
鈍い輝きが溶け込んだあの部屋の壁の窪みを思い出す
ブロード・ウェイが大好きだった赤毛のキャロル
ラジオから流れるフェバリッツに合わせて
痩せ細った膝をいつもゴーストの様に揺らせていたっけ
安い薬を打ち込む癖がどうしても抜けなくて
バッド・トリップに落ちては泣きながらひび割れた窓を叩いていた
何度も何度も「出してよ」って喚きながら
あの娘をそこに閉じ込めていたのはいつだって自分自身だった筈なのに
明日をあれこれと飾る以外に何も出来ない俺達は
少ない稼ぎを寄せ合って小さなケーキをいくつか買い込んだ
運命の様なカスタード・クリームを貪り食いながら
空想の中のステーキと比べて唾を吐いた
堪え切れなくなった誰かが最初のコードを呟くと
ろくに弦も落ちつかないギターを俺達は鳴らした
そこに留まり続けることが
夢を見続けることだとあの頃はきっと思っていたんだ
ホテル・カリフォルニアでもう一度逢えるといいね
せいぜい見栄を張って
あの頃と同じ顔をして
ホテル・カリフォルニアでもう一度逢えるといいね
失くしたもの手にしたもの
同じ天秤の上で
すべてただのジャンルに変えちまおう
フルムーンがほんの少し機嫌を損ねた
11月の夜の事を覚えてるか
はめを外し過ぎたキャロルの息の根が止まった夜の事を
病院の廊下で俺達はカードをして
誰が彼女の治療費を払うのか決めたよな
あの娘の墓の前で手を合わせた時
誰もが流せない涙を必死で堪えていた
聖書の一節なんか
あの娘は絶対に喜ばないって皆判ってたのに
幻のホテル・カリフォルニアの
埃まみれの廊下を思う時
あの娘のゆらゆらとしたステップが
オルゴールの様にぼんやりと重なるんだ
何をしても消せない霧の中で
俺はあの時のコードを必死に思い出そうとしてる
ホテル・カリフォルニアでもう一度逢えるといいね
きっとあの頃より言葉数は減るだろうけど
きっとあの頃と同じ様に少しは唄えるさ
ホテル・カリフォルニアでもう一度逢えるといいね
失くしたもの手にしたもの
俺達の天秤の上で
カスタードの中に埋め込んでしまおう
あの頃と同じ合図でコールするから
そしたらすぐに電話を取ってくれ
俺が思い出に怯えてしまわないうちに
俺があの頃の歌をすっかり忘れてしまわないうちに

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