知らない間に煌びやかな躍動は消え失せて、傍らには煤けた
あの日連弾の様に紡ぎ続けた言葉の亡骸があったんだ
とても淋しげなモノクロームの絵の様に哀れに横たわるそれは
意思など持っていよう筈は無いのに何故だか忍んで泣いている様に見えたよ
手遅れの忘れ物を認識した様な気持ちで俺はそいつの事を見つめていた、斜陽が角度を変えるまで
辺りの建造物が車道のうねりをあちこちに弾き返すせいで、空が塞がれているみたいに感じるんだ、何か得体の知れない概念が此処を圧迫しようとしている様に
時計台の針がいつの間に進んでいるのかどうしても分からない、それは心中の苛立ちに新しい項目を追加する、引っ掻く様な傷みの成分を教えてくれ、精神に障らない程度に―知り過ぎる事は生きていられなくなるという事だから
盲人用信号の良心的だが機械的な、単調な旋律が様々な器官を持つ者達の足音に重なる―機械と魂の同化、無機質と有機質のユニゾン、眼をひんむいていると何もかもが狂気的な色彩を佩びる、ほんの少し彩度が強過ぎるんだ、ほんの少し彩度が
駅の騒ぎには添えるべき言葉が無い、使い古された風景、中身の無い祈りの様なそんなスカスカの連動―片隅の川面を眺めていることとどれほどの差があるだろう?―そんなものの為に大脳皮質を消費したくは無いのだ
地下はリヴァーブがキツ過ぎる、ねえ君、もう一度地上へ行こう
そしてくぐもった話し声の様な空に映る恍惚の下でオール果汁の飲料水を飲むんだ、馬鹿みたいに流暢な飲みっぷりでさ―サプリメントの事が気になるなら美味しい野菜を買えばいいのに、そんな考えも時々頭をよぎらない事も無いけれど
誰もが視線を交わすけれど敬遠と軽蔑と値踏み以外の意図はそこに見当たらなくて、どうしてそんなにも劣ることが怖いのか?そもそもその水準を決めた教祖はいったい何処であぐらを掻いているのか?―リモート・コントロールの受信機でも装着された様な信者どもの懸命さは彼の岸からはさぞかし滑稽な見物になるだろう―バラエティーを求めるには間が抜け過ぎている
先に口を開いた誰かの真新しい色彩がワイドショーの見出しになる、それがどんなものかなんて本当は誰も興味を抱いてはいない―通信販売の企業を立ち上げるだけでしばらくは喰っていけるだろうさ、ジュースの缶に記された成分表をあらかた眺めてみてもきっと情報なんて何も手に入らない
腐りにくい処置を施された鮮度はもはや息をしていない、確かめてみるまでも無いだろう―窒素充填される事がどんな気持ちかなんて、きっと本当は痛いほどよく分かるんだ
その時飲み干した様々な成分を心から愛しいと思った、ねえ君、俺達はきっとこの上なく慰め合えるよ―哀しみなんてすべて傷みと同じ様に感じるものだ―君はきっとあの瞬間にその事を知っただろう?それがどんなに辛い事か教えてくれ、それがどんなに慈悲の無い行為なのか―耳打ちをする様に優しく聞かせておくれよ
概念上の鼻からチューブを突っ込まれて不自然なほど生きてる君のレシチンやカロチン、俺の体内できっとそれは成就するだろう―成就するんだよね?
ならば今此処で少しの間黙祷しよう、通行の妨げにならない程度にさ―思えば奴をペットボトル再生されたゴミ箱に放り込む僅かな間、脳裏を駆け巡っていたのはきっとそんな事だったんだ
三日ぐらい前からスニーカーの履き心地が違うんだ、きっとこいつは近いうち死んでしまうのかもしれない―さて、そこでだ―疑問の種は尽きる事が無い―例えばだね、こいつにとって結び目が解けて変形してしまうまで履かれていることと、ある程度までで暇を取らせてもらう事のどちらが果たして幸せだろう?自分ならどうだろうと、その時俺は思ったんだ
そう―自分なら―
どう
思うだろうって
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