霧雨に身をこごめながら
明りの消えたメイン通りを歩いた
街灯がヴェールを被る
死んでしまいそうな気分の夜だった
時間は
勇み足と逆行を繰り返し
その度に
恐ろしいものを見たように動機は震えた
すれ違う車はまばらで
歩道を歩いていたものたちは
みんな暖かいところへ隠れて
俺はそういう場所の鍵を
ずいぶん昔になくしてしまっていた
役に立たないモップのような
長く放置された野良猫の死骸
空のボトルに頭を乗せて
昨日の太陽の夢を見ていた
ゴミ箱で新聞を拾い上げ
潰れた雑貨屋の
テントの破れた軒先に忍び込んで読んだ
被害妄想のウェイトレスが
周辺の人間をみんな疑った挙句
果物ナイフで次々に傷つけて逃げたそうだ
衝動的に過ぎる反抗
捕まるまでに時間はかからないだろう
議員の浮気と競馬の結果を流し読みして
そのままそこに捨てていった
浮浪者がザ・バンドを口ずさんでいる
アイ・シャル・ビー…洒落にもならない
マットレスと屋根があるだけ
多分俺の方がマシなのさ
週末はいつも
あてもなく彷徨ってしまう
パン屋が配達の仕分けを始める光景を
見るともなく眺めながら
俺と言う個体は
果たして連続しているのか
それとも
たまに思い出したように
世界の中にぽつんと置かれるものなのかを
古い小説の主人公のように考えた
答えは出なくもなかったけれど
古い小説の中の答えだから
少し楽になる以外なんの効果もなかった
ツイードのコートのポケットに突っ込んだ手は
生まれてからずっと凍えてるような気がした
夜のかけらたちが北風に乗せて
守るもののない頬を傷つける
廃屋の砕けた窓ガラスが
片目のヘッドライトに照らされてきらめいた
特別きれいではなかったが
ちょっと忘れられなかった
最近の「詩」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事