性急な紺碧が
ときおり、夕立と入れ替わりながら
ニュープリント版のような
景色を塗り替えていく
おれたちはコカ・コーラ・ボトリングの
罪深き赤色に寄りかかりっきりで
ラジオのキャスターは猛暑日という単語に飽き始めていた
道端に放置されたカブのハンドルには
そこで生涯を終えた
鉛筆の削りカスみたいな蛾が張り付いていた
暢気な溶岩流が
無邪気に破壊しているような風が吹いていて
日付にはまるでリアリティがなかった
ブルース・スプリングスティーンの
陰鬱なアコースティックが聞こえている
誰もリズムを取ろうとはしなかった
シャツには汗が滲み
それは心を湯煎した
近頃のチャートみたいな気の抜けた歌を口ずさんで
瀕死の羊のような雲が流れていくのを見ていた
定点カメラの模倣みたいな日々
なにを見ても自分を探していた
目覚まし時計のアラームは壊れていて
時々真夜中に騒いではおれを辟易させた
スマートフォンで起きる方が楽なんだけど
手のひらに確かな感触が欲しくて使い続けていた
ニュースは不正を暴き
コメンテイターはまるで気高い人間のように
いちいちに持論を垂れ流していた
どれだけの知識を得ても
道化を演じさせられていることには気がついていない
テレビは見ない方がマシ
出来ればSNSも
火葬場を思い起こさせる
夏の夜の寝床で
明け方に見る夢の色味は
目覚めきるころにはどこかへ消えちまう
糖臭い息を吐きながら無駄に鮮やかな
よく出来た嘘みたいな世界を眺めているばかり
歩き過ぎた脚の痛みで自分の名前を思い出す
そんな夏がいつかあんたにもあったはず
訳知り顔は世界一マヌケさ
サーフィンの歌なんか似合わなかった
ダミ声のパンク・ロックが
耳の中でただただリピートされていただけさ
交通標語みたいな人生は好きになれなかった、ただそれだけのことで
駅前のホテルから飛び降りた男が居た、二十代の…
それすらステレオタイプだってことに
きっと最期まで気づけなかったんだろう
懸命な混沌の終焉は
五行の記事に記されただけだった
ロジャー・ウォーターズは目を細めて
戦争の歌をうたっている
錆びた自転車のスポークにそれが跳ね返って
ボトルネック・プレイみたいな甲高いノイズを残す
スタジオには隠しカメラがある
みんな初めから知ってたって顔で話してる
近頃じゃ飲物に
芋を浮かべるのが流行っているらしい
おれたちはそれについて議論をする
そして
そんなものは無意味だという結論に達する
そして
そんな結論もやはり無意味に違いないのだ
そんな空洞の堆積の狭間で
呼吸したいと思った誰かが詩を書き始める
本当の苦しみの始まりだ、ボーイ
だけどもしも
いつかそのまま水面に浮かぶことが出来たら…
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