夜の小さな、小さな河辺
水面の明かりに耳を澄ませる少女
哀しみの名前は普通
足りないものなど無いけれど
満たされたことも無い
そんな哀しみは
あまり誰かに伝わることは無いのだと
知ったのは
つい最近のことだった
言葉など
ある種の
装飾で無ければ
誰も
そこに
意味など
求めようとはしないのだ
石を投げます
と呟いて水面が跳ねる(ぴしゃん)
少女の心の代わりに
精一杯をやろうと試みているかのように
近くの橋を通り過ぎてく車のうねり
卑しい土足で入り込んでくる
誰かの足音にそっくりだと感じて喉を掻いた
何をしに行くのか
下流に向かって小さなボート
あれはきっと海へ向かうのだ
真夜中の海で
相当なものを探して
自分の型枠を確かめたいのだ
名も知らぬ船乗り、私のことも乗せてゆけ
急く思いに弾かれ高く叫ぶけれど
危なっかしいエンジンの稼動音に
その声は負けてかき消された
その瞬間は
なんて
騒々しかったことだろう?
嘘みたいな静けさが
そこだけに訪れて
少女はまるで
覗き込まれてるみたいで
耐えられなくなって
石を投げます
もう一度呟いたけれど
投げられず
彼女は
足音となって
どこかへ逃げていった
痛烈な静寂が残る
波紋は
音の無い反響みたい
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