不定形な文字が空を這う路地裏

朝もやに消えそうな彼女



自宅からさほど遠くない公園で、帰宅出来ない少女が繰り返すホームシック・ブルース―雨は際限なく降り続く気がする、約束出来ることはいつも、うんざりするほどの憂鬱だけなのに


朝もやの街で彼女はひときわ濡れている

パパの背中に大地を感じたあの日からもう何歩歩いたのか
台所の前に立つママの仕草がサマンサの様に見えた食卓を何度やり過ごしたのか
昨日アフタースクールに着替えたはずの制服にまだ包まれているような気がする
逃げるような気がしてる間には自由なんて決して手に入れることは出来ない


誰に愛していると告げて誰を拒否するのか?選択を繰り返してばかりいるうちに目的を忘れてしまう
億劫になるとぼんやりとして繁華街で他人の群れをずっと眺め、みんな居なくなってしまえばいいのにと独裁者のように吐き捨てる


彼女は自分の中に何も見つけることは出来ない

明方の空気が少し汚れた身体の奥深くに浸透してゆく―ささやかな救済のように―それで彼女はひと時ほっとして自分なりの笑顔を思い出そうとしてみるけれど
気分を紛らわせるためだけの幸せなど本当はもう無いと知ってしまっているからもう少し馬鹿か利口に生まれていればよかったなんてやり場の無い八つ当たりをする

友達の間でほんの少しから回りをすることがどうしてそんなに恐ろしいのか?
彼女という楽器は彼女自身の調律でしか清く美しく高く鳴り響くことは出来ないというのに
フラッパーの多過ぎる台に放り込まれ逃げ惑うピンボールの玉さながらに
右往左往繰り返すうち狙っていたハイスコアの控えをポケットから落としてしまう


自宅からさほど遠くない公園で、帰宅出来ない少女が繰り返すホームシック・ブルース―雨は際限なく降り続く気がする、約束出来ることはいつも、


うんざりするほどの憂鬱だけなのに?



朝もやの街の中で
朝もやの街の中で
朝もやの…

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