不定形な文字が空を這う路地裏

彼女の軌跡





どこからともなく甘い火が点る、速やかに流れない水の悲鳴をごまかそうとでもするかのように
時は真夜中、いつでもその時間にしか咲かない花の中で揺れてる蜜蜂の残した短く薄い羽根
それは哀しみを炙るもの言わぬ罵倒に見えたよ、そうすることでしか生きていけないときも確かにあるさ
破綻したコンクリート、新聞の片隅で見かけた
名前も知らない少女の哀れな死体のことをどうしてこんなとき思い出す?
昨日の俺の災いと彼女の激突は、きっとどこかで錆びた歯車のように軋みながら噛み合っていたに違いないのさ
錆びてゆく鉄は、ねえ錆びてゆく鉄の搾り出すような泣き声はどうしてあんなにも耳にこびりつくのだろうね
かさぶたが剥げ落ちるような血を流しながら歯車は何度か救いを求めていたんだ
アスファルトの路上、アスファルトの路上には見苦しいほどの存在の欠片が、きっと俺のことを見上げていた
交わせる言葉なんて挨拶程度も残っていなかったのに
どこからともなく甘い火が点る、火種が空気と交尾する音を聞きながらじりじりと落ちていく眠りはなんだか首筋に触れる固く結んだ縄の
ひやりとした感触をなぜか思い起こさせるんだ
誰とならここに居られたの、誰とならここに残るの
ハードディスクが俺には判らない何かを懸命に調整している
今はきっと彼女の家で主の無い血まみれのブレザー
妄想の中のこちらにゆっくりと伸びた腕が、手招いているように見えるのは
なぜ
なぜ…

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