不定形な文字が空を這う路地裏

消灯しよう、安直に死せる理由なんてそうそうは無いものだ









なんにもない夜のすべてをつらつらと書きつくして、ああもう本当になにもやる事がないと心底思えたら、俺、布団で死ねるかな
喜びにまみれて独りになって、素晴らしい快感と書いてあるような顔をして布団の中でにっこりと死ねるかな
手の中にはもう何年も昔に駄菓子屋で買ったしぼんだ風船、さっき気紛れに膨らませたけどさすがにもう劣化してたらしくて数分もしないうちに意気消沈で果てた
未来に行くのってひとつひとつ、ねえひとつひとつ見送っていくようなもんだよね、俺の手の中のこいつにまだ意識があるとしたらいったいどんな事を思っているのだろう
存在理由の終ったあとで、物質の部分で考える紆余曲折、そんなものが醸し出すやたらな切なさに
何だか破壊衝動が地下水のように湧き出る心境だ
意識、意識、意識は陥没して、心臓の表面に真っ暗な穴が開いた、そいつが言葉を欲しがる、そいつが言葉を欲しがる、そいつが言葉を欲しがって満足に眠れないんだ、満足する言葉なんか借りてきたって適応しない、眠るな、起きろ、眠るな、起きろ、キャンゲットイナフ、俺を満足させてくれよ
さすが生命の源、貪欲で貪欲で果てしがない、生まれてから死ぬまで激しく運動し続ける機関、やつには妥協なんて決して通用しないのさ、あーんと、疲れてぼんやりしてるけど、ワード開いて紆余曲折、切なさなんて醸し出せやしない、詩人の自問は性急過ぎて、韻を踏んでるいとまもない
今日だけはリズムを欲しがるのはやめよう、なんにもない夜のような液晶のディスプレイを疲労困憊の感覚で埋め尽くそう、アンテナはキャッチする、いつもとほんの少し毛色の違う韻律を、ふらふらと不用意に車の前に躍り出る痩せた野良猫みたいなランゲージを、俺今夜ここに散らばるたわいない意識になろう、よく出来た不条理劇になって見えないところにいる友達に拍手喝采してもらっちゃおう、おい、居るんだろマイフレンズ、いつもいつもいい気持ちにさせてくれてありがとう、俺、感謝の仕方がいつもいつもうんざりするくらい下手なんだ、あんたの言う事本当だって信じてるよ、俺にだって許されるところがあったっていいと思うんだ
あーいつの間にか雷が止んでいる、あいつ俺をぶすぶすに焦がそうと狙ってるみたいだった、だからノートを開くのがずいぶん後になってしまったんだ、俺、雨男でさ、新しく仕事についたら必ず天気がおかしくなる、それが今日みたいに激しい雷なんて空になると、それはいつかにほんの少しだけ出会った誰かが俺によこした殺意なんじゃないかなんて、そんな風に思う事があるんだよな、消化出来ないものを他人に押し付けるようなやつってたまに居るだろ、これはそういう類のもんなんじゃないのかって、そんな気になる
えらく静かだ、夜も深くなってきて、数日前にはうるさかった蛙もなぜかじっとしてて声ひとつ立てやしない、手の中の風船はぼんやりとしぼんだままでいる、そいつの脳裏に飛来してるある種の悟りのような観念は相変わらず俺には理解出来ない、一応言っておくけど俺がいま書こうとしているものは多分メランコリックなものなんかじゃないぜ
詩なんてものはきっとどんな程度であれたいそうな意味なんか秘めているようなものではなくてちょっと手の込んだ日記のようなものなのさ、俺はそれでいいと思ってる、そうでなければ動機なんて全部嘘になってしまうもの、だから嘘だってつくのさ、もう何遍も言ったけれど嘘を書けない詩人は百日草みたいなもんさ、花は咲くけど伸びはしないのさ、布団で死にたいって言っていたって?少しニュアンスは違うけどそんな事確かに言ったかもしれないね
案内板のついてない小さな道みたいな入口が欲しくてさ、書き始める前に何度も何度も繰り返してみたんだ、その結果、少々迷わせるくらいが丁度いいって結論に達して
だって誰にでも判るものを目指してるわけじゃないからね、手の中の風船はもうごみ箱の中にいる、しばらく考えてみたけどもうそこにしかやるところがなかった、要するにそいつはそのとき俺の中で御臨終あそばしたという事だ、結論というものは絶対じゃないけどあるに越したことはないだろう、いま必要かそうでないかなんて気分は意外と大してあてにはならないものだ
そいつが記憶の蓋を開けるきっかけになることだってあるんだもの
なんか凄いファンタジーだねお前さんの言ってる事は、壁に貼り付けたヴードゥラウンジ94年度の怪物が、軟らかく背伸びをしながらそんな事を言った、だけどそんなものに誰も注釈をつける事など出来ない、もしつけたところで泥の船ぐらいの役にしか立たないさ、沈んでゆくための航海ならしないに越した事はない
飽きちまったって言ったら叱られるかな、こんな風につらつらと書き連ねる事に飽きちまったなんて言ったら?これは本当はもっと長く続けられるものかもしれない、だけど俺もう布団敷いちまってもいいかななんてそんな気分なんだよね
あーん、運命としちゃ非常にリアルなラインかもしれないね、自分でもそんな完璧に把握しているわけじゃないけどさ、これは運命としちゃ非常にリアルなラインなのかもしれないなんてそんな風にちょっと思うね
信じてるさ、誰かに判ってもらえる類のものを今夜は連ねたってね

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