不定形な文字が空を這う路地裏

一番古いビート














頭上で弾けた蛍光灯の不自然な寿命、疑問の意を表明しようと首を傾げたら偏頭痛の幕が開いた、浮かばれない蝶のように閉ざされた窓の側で外界を探す小さな蛾…例え今俺がこの窓を開けてやっても
やつはそんなに長くは生きられないような気がした





眼は開いているか?言葉を書き綴るための眼はちゃんと開いているか?おまえは確かに内にあるものを外界に向かって差し出すことが出来るか?指を伸ばして光にかざしてみる―そこから新しいものはなにも出てこないような気がする…





「新しい言葉」は必要なのか?人々をはっと言わせるような、それまで誰も見たことがないような新しい言葉―それを追いかけるがあまり別の世界に行ってしまうやつらがあまりにも多いんじゃないのか?言葉の途中に改行を施し
て、それを斬新と呼んだりするのが正しい事なのか―俺たちはピエロを手厚く迎えすぎる―見つけやすい虫のようなものだけがいつも…





キィ・ボードに手を置くと、責任が物陰からこちらを伺っているのを感じたような気がした―それは文学的なものではなく、それは文法的なものではなく、詩学とももちろん関係のない―連綿と続く放出される魂の軌跡に続く責任というようなもの…俺は指先がそれらの空気を感じ取って、いつもとは違うものを吐き出そうとしているのを感じる、それは新しい言葉とはなんら関係がなく―だから今日はもう少し考えないで書けるかどうか試してみる事にした





思えばここ数日の篇は、シチュエーションという文脈のみによって構成されていた、それも決して悪い事じゃないが―誤解して欲しくないのだが、俺はどれかひとつだけの局面を持って理想とする気持ちなどない、人間が存在する数だけ―言葉に対して敏感な人間の数だけ―受け取る形は違うものということは理解しているつもりだ、だからこれはしいて言うなら…あえて言うなら、俺の、自己満足のレベルでの話のようなものと考えてもらえればいい―そう、なにか自動初期的な、んー…スピードに欠ける気がしたんだ、そのことについちゃ前にも書いたよな?スピードってやつの中にあるものについては?このプロセスが始まったころに、まだまだ有り余ってたころにつらつらと書き連ねたインプロビゼイションのことさ―あそこに書いてあっただろう、スピードってやつは俺を一風変わった景色の中へ連れて行ってくれる―今になって考えるに、それは指先からなにか、老廃物のような感情が吐き出されている…そんな感じなんだ…思えば、こうして言葉を並べ始めてから、俺は胸の内に余計なものを溜め込むことが少なくなった、いつかにはずしりと脳味噌を重くさせたものを―吐き出すすべを知ることが出来て本当に良かったと思う…綴る、という行為は俺をいつでも少し楽にさせてくれるんだ(毎日書く、なんて約束をしたときには面倒になることもあるけれど…それでもさ)何の話をしているんだっけ?そう、綴るっていうのは欲求だよ、違うっていうやつも居るかもしれない、もっとそれはたしなみ的な、生花みたいなものだと…だけど俺は間違いなく、詩はそこにカテゴライズされるべきものじゃないと信じているよ、欲求―いや、いや、いや!もっと他の―衝動、そう
衝動ってやつだ…初期衝動であり続けられる表現形態―ロックン・ロールよりも自然にね、初期衝動であり続けられる表現形態、そいつが詩だ
俺はそういう言葉の流れに向かっているんだということを初めから知っていたような気がする、そういう感覚を知ったのはいつだった?そう、たぶん、十九の頃だ…それは確か十九のころのことで間違いがないよ…あふれる、という感覚を始めて感じたんだ、それは止まることが無かった、その気になればいつまでだって書くことが出来たよ、いつまでだって…俺が言葉を並べることが好きなのは、そのときの感覚が今でも変わることなくずっと心の中にあることが判るからなんだ、判るかい、衝動であるべきだとは言わない、だけど俺にとっちゃこれは衝動以上の何物でもないんだよ―ここまで書くのに半時間もかけてないぜ、衝動っていうものの参考になれば…





初めて書いた言葉なんか思い出すことが出来ないけれど、初めて読んだ詩なんか思い出すことは出来ないけれど、最初の感覚をずっとキープし続けて…キープし続けたままページを重ねる事が出来るんだ、それは義務感のようなものでそうしているわけじゃなくって…変わりたくなったやつは変わればいい、そうだろ?嘘をついたってボロが出るだけさ―それは同じようにそこにあるんだ、何故そうなのかは判らないけれども…時々不思議に思うことがあるよ、これはどうして俺をこんなにも楽にさせてくれるのだろうかって…思うに酒みたいなものなのかもな、俺はアルコールの変わりに言葉に酔っ払っているのさ、ヘヴィメタ・マニアが血行がおかしくなるくらいヘッド・バンキングをやり続けるみたいにね―だから俺はアルコールで気持ちよく酔ったことがない…俺にしてみりゃ酔うってのはアルコールを摂取する事じゃないのさ―ヘッド・バンキングをし続けるみたいに言葉を吐き出すこと、それが俺にとっちゃ酔うってことなんだ―それについちゃ他に選択肢なんか残されちゃいない





もちろん、それだけがいいとは思わないぜ、こうして書かれた言葉達にはたいした意味なんかないんだ、ただ、このスピードがどれだけリアルに感じ取ってもらえるのか―俺には決して判断は出来ないけれども―スピードを装って書いたものよりもきちんとスピードが届いていればいいななんてたまに考えるんだけど…つまりさ、重要な一部分ではあるけれどそこだけを持ち上げるわけにはいかない…これだけがスタイルだって言われたら俺はちっと困ってしまう―指先だって毎日くたくたになっちまうぜ、つまりさ―間欠泉のように時々噴出してくれればいい、時々狂ったように噴出して―俺をすっきりとさせてくれればいい、こんな連なりに俺が求めるものはたぶんそれだけなんだ、昨日のものとは同じじゃない…一昨日のものとも…だけど、それより前に書いたいくつかのものとこれは同じかもしれない、読みやつにとっちゃ違いなんか見つけられないかもしれない、だけどさ―






ボ・ディドリーの器用なギターソロなんて誰も聴きたくはないはずさ、こいつはそういうものだと思ってくれればいい―なんならステップを踏んでくれ、古いビートだ、こいつは俺の心の中に生まれた一番古いビートなんだよ…

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