不定形な文字が空を這う路地裏

僕らは空に向かいて二発の銃弾を撃った、それはまるで購いを拒むかの様に








僕らは空に向かいて二発の銃弾を撃った、それはまるで購いを拒むかの様に
何者にも僕らを理解させない、それは声無き約束であって、しいて言えば
即席で設えた僕らなりのしきたりであったのだ、潰れた農場の上に切れ長の雲を引く秋の初めの空で銃弾は果てしなく彷徨い
硝煙は雲になろうとしてるみたいにゆっくりと頼りなく風に乗っていった
たったそれだけの決意で僕らは英雄になったつもりでいたのだ、安物のカクテルのさじ加減も手伝って―今にして思えばあれは悪夢だった、そうとも、本当に悪夢だったらこんなに喜ばしいことはなかったのに
僕のミスだった、引く必要はなかったはずのトリガーが火を噴いてしまったのは
ストアーの親父が僕らに金を渡した後で、急に身をこごめて…今思えばあれは命乞いのようなものだったのだろうに
酔いの覚め始めていた僕は怖気づいて思わず指に力を込めてしまった
あんなふうに見えるのだ、人が何かを奪われる瞬間というのは―それは長い年月が過ぎた今でも少しも色褪せることはなく、むしろ
いっそう激しくコントラストを増して脳に染み込んでくる
耐え切れなくなった、きっと君は耐え切れなくなった、その光景に、ねえ、きっとそうなんだよね
魅せられたみたいに君はそれをじっと見つめていたのだもの、そして僕もきっとそうだったのさ
僕らは空に向かいて二発の銃弾を撃った、それはまるで購いを拒むかの様に
真夜中にシーツを幾重にも束ねながら君はきっと戻れない道を思い涙を流し続けていたんだろう、君が自ら階段も上らずお祈りも捧げず刑を執行したと聞いたとき
僕は自分の両手にべっとりと粘りつく動脈からの血の幻影を見たよ
どうしてあんな風に思い出すのだろう
まるで恋の記憶の様にあの空はそよぐんだ
僕らはまるで新しいゲームではしゃぐローティーンみたいに
殺傷能力のある火薬の匂いをうっとりと嗅いでいた、あのときの銃は今はどこにあるのだろう―きっとポリスが処分してしまったに決まってる
君の体重が編まれたシーツに掛かる音がする、それは長い長い廊下にずっとエコーして
少しくすんだ色になった僕の両手の上で
運命が深紅のコートを纏って踊る
あの日、僕らは英雄の様に銃弾を
潰れた農場の




秋の始めに

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