鳴き飽きて死んだ、油蝉の死骸が
夏の落葉みたいに
揺らぐ公園を抜けて
風の強い堤防の
短いトンネルを抜ける
飛行場から南へ
昼の便が飛び
見送るみたいに
穏やかな波が手を振る
いつのまにか
もう
積乱雲じゃないんだね
ボサノバみたいに静かに
呟いて俯いた
君は
浅瀬で波に遊ばれる
ヤリみたいな貝殻をずっと見てた
焼けたみたいに錆びた
誰かが捨てた車
サメの歯みたいに欠けた
小さなサーフ・ボード
テトラポッドの上で
座礁した流木、あの日からずっと
淡い夢の中で
息をしていたのは誰
過去は決して
夢とは呼ばない
かなわないことを
もう知っているから
機銃掃射のような
夕立にまぎれて
消えたあの娘の名前
もうたぶん
意味を成すこともない
立てなくなるほど打たれて
テトラのかけらに腰をかけ
早変わりのように現れた
猛る太陽に音を上げた
たちまちになにもかも
カラカラに乾き
もう
君の心配を
する必要もない
原始から
変わらない波
一瞬の夢の僕ら
少しずつ壊れてゆくなにもかもを
なんの為にこの手につかもうとするのだろう?
背を向けると
波は
喰らいつくみたいに高くなり
テトラにぶつかり弾ける飛沫に
思わず返り見る
波のようならなにも壊れたりしない
堤防の草むらで
なにかをついばんでいた一羽のハシブトガラス
少し惚けたあと
退屈そうに飛んだ
エンドロールのような波打ち際
水平線をなぞるように
カラスは
何処かを目指している
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