不定形な文字が空を這う路地裏

そしてがらんとした部屋のなかだけが





きみはうす汚れた扉にもたれるのをやめて
新しいにおいのする通りのほうへと急いだ
おれは正体の知れないジレンマにすこしとまどったあと
洗面台で昨日の夢をようやく洗い落とした


冬の街は過度に繊細な佇まいで
窓には結晶がはりついていた
耳がきいんとするノイズは
きっとこいつがひとしれず立てる鳴声なのだ


きっと今夜から子守歌は行方不明
インスタントコーヒーはより消費される
ラジオは昔の詩ばかり流して
なのに歌詞は明日のことばかり


いまわしい過去は
鶏の首をひねるみたいに殺されるべきだ
きみにはわかるだろう、いや
おれよりもずっとよくそのことがわかっているはずだ


その日最初の
かんたんな食事をしながら
おれは時の隙間におきざりになった
そしてむかいのビルの窓で反射する太陽を見ていた


昼過ぎになって
まぶしくなくなるまで
なにを見つめていたのか
思い出せなくなるまで

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