夜が壊れていくから
窓に包帯を巻いた
朝は舌なめずりして
地平線の先で出番を窺っていた
幼子の泣声、いや
盛りのついた猫だろうか
街路はあらゆる音を
まっすぐに伝えてはくれない
音源に接続していないヘッドホンをつけて
余計な反響を殺してみた
現象は
光の中だけのことだと
真夜中になればわかる
闇の中で起こることは
出来事というより心の中だけのこと
身動きの取れない
退屈は針だ
ところ構わず一斉に貫いて
世界が照らされるまで楽にしてはくれない
夜よ、俺は素直に
お前を弔うべきだろうか
お前が壊れていくとき
俺は壊死した自分を抱いているような気になる
投げ落とす言葉などに
世界を変える力などあるものか
俺はこれがまやかしだと知っている
だからこそ懸命になることが出来るのだ
砂時計を思いついたやつは
きっと上手く眠れなかったことが多かったに違いない
風が雨を横殴りにする
煽られた窓はボサノヴァを奏でている
おいしい水は汚染されてしまった
なにを移されるかわかったもんじゃないぜ
酩酊した誰かが意味のない歌をうたっている
タクシーはくしゃみ程度の頻度でクラクションを鳴らす
悪趣味な年寄りがどこかの窓を覗いている
平和を解いてみれば見えてくるのはおぞましい景色だ
だれが思いついたのか
汚いやり口は正当化される
なに、みんなで声を揃えりゃいいだけさ
手を上げたやつが多ければそれが真実になる
当り前のように
さあ、この線からこっちには入って来ちゃ駄目だからね
少し専門的な話になるからさ
小さな石しか拾えないやつなんか相手にしてる暇はない
完全に夜が壊れてしまう前に
俺、子供のころから
おやすみが上手く言えたことなんてなかったよ
本当は見えないものを見ているこんな時間が大好きだった
だから、行かないで、夜よ
もう少しだけ持ちこたえておくれ
子守歌なんか別に要らないけど
静かに目を閉じるにはきちんとしたお前が必要なんだ
最近の「詩」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事