今日、紹介する本は
『文人悪食新潮文庫』
です。
夢をみたならば覚えているはずなのに、今日という日は目覚めたときすっぽりと夢の内容を忘れていた。
絶対に見ていたはずなのであるが。
夫のほうは、目が覚めるなり『蛇と鳩が仲良くしている夢をみた』とのたまった。
私は夢解きをしてみようとしたが、あまりに面妖な夢なのであきらめた。しかし、蛇は夫ではないのかという気持がしてきたので、
『蛇は呑みこんでばかりいるわ。蛇はあなたじゃないの』と言ってしまった。
『腹減ったなあ』が口癖で、夜中になんども腹減ったと起こされたことがあるから、つい恨めしくなってそう言うのである。小食なのだが、回数が多くて困る。
私はと言えば、暮の12月31日に夢をみた。
申年さいごの日だというのに、食べ物の夢である。意地汚いなあ。
仕事先にお弁当を持って行っていなかった夢である。お昼のパンを買おうとしてウロウロとする夢。
中々決まらずに、我ながらじれったい夢。しまいには、友達が夢に出てきて、お昼のお弁当を久しぶりに
一緒に食べようねと話し掛けてきたのに、まだ決まらない。まったく・・・。
さて、本日、紹介するのは嵐山光三郎氏の『文人悪食』である。ぶんじんあくじき。文士である。
夏目漱石、胃病で悩んでいるのに落花生の砂糖菓子が止められない。鏡子夫人が隠しても捜し出して
食べる。蕎麦なんかより、こってりした洋食を好む。何か食わせろと駄々をこねる。最後の言葉は
『何か喰いたい』
饅頭茶漬けで有名なのは森鴎外。
異常な生もの嫌い。衛生には気を配り桃も煮てたべるという神経質なところがある。焼き芋はその点
安心である。漱石は昼にビスケットを食べるようなハイカラさだが、鴎外は焼き芋を食べる。
光三郎氏は言う。鴎外が一番意識したライバルは漱石だが、その漱石はビスケットを好んだ。焼き芋とビスケットの違いが、両者の文芸の差に反映している。
うーむ、素晴らしい文芸論だよ。膨大な資料の中から作家の食べ物嗜好を拠りだしながら、作家論に持ち込んでいる。もと編集者の眼がキラリと光るという名作であると風信子は思う。で、食い意地が張っているのは人間みな同じなんだなあと思いながら、お節でもたれたお腹をさする風信子である。
今日、紹介の本の詳細は、オンライン書店『セブンアンドワイ』ーみんなの書店ー『ひやしんす書店』から調べることができます。
『文人悪食』 嵐山光三郎著
『文人悪食新潮文庫』
です。
夢をみたならば覚えているはずなのに、今日という日は目覚めたときすっぽりと夢の内容を忘れていた。
絶対に見ていたはずなのであるが。
夫のほうは、目が覚めるなり『蛇と鳩が仲良くしている夢をみた』とのたまった。
私は夢解きをしてみようとしたが、あまりに面妖な夢なのであきらめた。しかし、蛇は夫ではないのかという気持がしてきたので、
『蛇は呑みこんでばかりいるわ。蛇はあなたじゃないの』と言ってしまった。
『腹減ったなあ』が口癖で、夜中になんども腹減ったと起こされたことがあるから、つい恨めしくなってそう言うのである。小食なのだが、回数が多くて困る。
私はと言えば、暮の12月31日に夢をみた。
申年さいごの日だというのに、食べ物の夢である。意地汚いなあ。
仕事先にお弁当を持って行っていなかった夢である。お昼のパンを買おうとしてウロウロとする夢。
中々決まらずに、我ながらじれったい夢。しまいには、友達が夢に出てきて、お昼のお弁当を久しぶりに
一緒に食べようねと話し掛けてきたのに、まだ決まらない。まったく・・・。
さて、本日、紹介するのは嵐山光三郎氏の『文人悪食』である。ぶんじんあくじき。文士である。
夏目漱石、胃病で悩んでいるのに落花生の砂糖菓子が止められない。鏡子夫人が隠しても捜し出して
食べる。蕎麦なんかより、こってりした洋食を好む。何か食わせろと駄々をこねる。最後の言葉は
『何か喰いたい』
饅頭茶漬けで有名なのは森鴎外。
異常な生もの嫌い。衛生には気を配り桃も煮てたべるという神経質なところがある。焼き芋はその点
安心である。漱石は昼にビスケットを食べるようなハイカラさだが、鴎外は焼き芋を食べる。
光三郎氏は言う。鴎外が一番意識したライバルは漱石だが、その漱石はビスケットを好んだ。焼き芋とビスケットの違いが、両者の文芸の差に反映している。
うーむ、素晴らしい文芸論だよ。膨大な資料の中から作家の食べ物嗜好を拠りだしながら、作家論に持ち込んでいる。もと編集者の眼がキラリと光るという名作であると風信子は思う。で、食い意地が張っているのは人間みな同じなんだなあと思いながら、お節でもたれたお腹をさする風信子である。
今日、紹介の本の詳細は、オンライン書店『セブンアンドワイ』ーみんなの書店ー『ひやしんす書店』から調べることができます。
『文人悪食』 嵐山光三郎著