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小さき花-第2章~9

2021-09-02 12:24:37 | 小さき花
その時、姉マリアが、あなたと一緒に隣の部屋に居りましたが、私は大きな声で「お父さん、お父さん」と呼んだ変な声を聞いて、不審に思い、恐れの念を懐いて、長女のマリアは自分の驚きを隠して「あなたはなぜお父さんを呼ぶの? 今アランソンに行っておられるのに」と諭すように話したので、私は今見た一切の事を詳しく話しました。すると姉は、私に、安心させるため「それは大方、うちの乳母が、前掛けで頭を隠して、あなたを怖気させるためにしたのでしょう」と話しました。乳母はその時刻は台所にいましたから、乳母ではありません。男性でした。確かに父に似ていました。そして、みんな一緒に庭に降りて松林の中に行きましたが、何も見当たりませんでしたので、姉達は「もうそんなことを思ってはいけません」と申しましたが。私はどうしてもこの事を忘れることができず、その後もたびたび、この奇妙な幻の事を思い、いつか必ずこの幻のなかに含まれている深い意味を全て悟る事が出来ると心の底から深く信じていました。
 
  敬愛なる母様! あなたはいまその意味をよくご存じでございましょう。これは天主様が深い摂理をもって、私に父の将来を見せてくださったのです。即ち、父は腰が屈むようになり、その尊い顔には皺が寄り、頭髪には白髪が混じり、大きな試練のしるしでした。(1888年、父が数回に全身各部、脳卒中(中風)に罹り、頭脳にも変化をきたし、三年間病院に入院し療養しました) 聖主が御苦難のときに、尊き御顔が神なる光栄を被られたように、この忠実なる僕の顔も、後に天国において、一層余計に光を放つために、苦難に遭わせられる必要があったのです。私は父がこの値打ちある十字架を被るという事を、前もって私たちに示してくださった天主さまの摂理は、まことに感謝に堪えません。天主さまが私たちに対しての為され方は、ちょうど親が、自分の子供等のために喜ばしい未来を備えて、これを見せるように、また親自身も、彼らのために家督として備える貴重な宝を見て楽しみとするように、天主さまも私たちに対して同じようにしてくださいました。しかし、私は心に次の思いが浮かんできました。つまり「天主さまは、なぜ私のような幼い子供に、今の幻を見せてくださったのでしょうか。私はその時、その深い意味を悟ったなら、必ず、憂い悲しみのあまり、気絶したのに違いないのに」と、深い摂理に対して不信を抱きました。なぜなら、これはこの世界では到底悟ることが出来ない、極めて神秘な事柄であって、天国に行って、はじめて悟ることが出来て、これは永遠に感嘆すべきもの、玄義の一つです。
 
読んでくださってありがとうございます。yui
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