マリアは、私が前に申したように、聖母は、ただ私の病気を治したばかりでなく、なお何か神秘的の恩寵を与えてなさったに違いないという事を、深く信じまして、私とたった二人になった時、彼女は深切に何回も繰り返し繰り返して頻りにその事を問い質しますので、私はこれを答えずにおられぬようになりました。そしてマリアが私にかかるこの秘密を、まだ一言も云わない前に知っているのは不思議である、と思いましたので、遂に私は何事も隠さず詳しく打ち明けてしまいました。ああ、ここにおいて私は先に誰にも語らないと決心したことも水の泡となり、折角得た幸福も思った通り悲しみと変りました。そしてこれから後4年というものは、この大いなる恩寵を思うたびに、私の霊魂上に、大いなる悲しみを与えたのでます。のち、私がパリ市に行き「勝利の姫君」の天主堂に参りました時に、この失った幸福を立派に取り返す事が出来たのであります。この理由はいずれ後にお話しいたしますが、なぜ私の幸福は、このようにまで憂い悲しみの種になったのでありましょうか……、それは他でもなくマリアは、私が受けた恩寵を偽らず飾らず話した事を聴いてのち「この事をカルメル会やその他でも話して良いか」と尋ねましたから、私は無論一度語った以上はこれを妨げる事が出来ないと思い黙ってうなずいたのであります。
読んでくださってありがとうございます。yui
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