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小さき花-第3章~3

2021-09-07 18:27:34 | 小さき花
 私との子のマリアの二人は時々叔父の家で、小さな野菜畑と小屋だけで、祈りと苦業に身をゆだねる隠遁者のような真似をしていました。それはいかにも真面目で、何事も心を合わせて沈黙を守り、一心に祈り黙想をしました。そしてもし何かの用事が出来て他人から呼ばれた場合には、残った隠遁者が変わって祈りをするというように代わる代わる用事を済ませつつ、祈り黙想を続けて、散歩のために市中に出る時も歩きながら祈り、また人目につかないようロザリオの代わりに小さい指を折り数えて、天使祝詞を誦えておりました。ある日、この小さき隠遁者テレジアは、施しとして僅かのお菓子を受けましたので、これを食べる前に十字架のしるしをしました。数人の無宗教者があざ笑いましたが、少しも頓着しませんでした。
 
 また、二人の希望の一致がときどき極端なまで走る様なことがありました。ある日も学校の帰り道に、二人とも隠遁者の謹慎を倣うとしたのです。その時、私はマリアに「私は目を閉じて歩きますから、どうかあなたは私の手を取って道を案内してくださいと言いました。ところがマリアも同じ望みで「私も目を閉じたい」といい、二人とも目を閉じて歩きだしました。歩道を通っていましたので、もちろん馬車に当たる怖れはありませんでしたが、しばらくの間、気ままな二人は、何も見ないで面白さに気持ちを奪われて、ある店頭に置いてあった箱につまづき、箱もろとも二人が倒れました。急にお店のご主人は怒って出てきましたが、この時、二人の仮の盲人は驚いて立ち上がり、大きく目を開いて、耳をそばだてながら、早く逃げ走った事もありました。


読んでくださってありがとうございます。yui
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