白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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名人戦第7局感想

2018年11月02日 21時44分51秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
SNS等で記事へのリンクを張ると、冒頭の数行が表示されていることがありますが・・・。
冒頭にとりとめのないことを書いておけば、ネタバレを防止できます。
本日の一言コーナーを設けた理由の1つです。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は名人戦第7局の2日目が行われました。
早速振り返っていきましょう。



1図(封じ手)
封じ手は白△でした!
搦め手どころか典型的な直接攻撃であり、予想は大外れですね。
張栩挑戦者の並々ならぬ気迫を感じます。
ちなみに、この手は芝野虎丸七段の予想した手の1つでした。
見た目からは、いかにも強引な印象を受けますが・・・。





2図(実戦)
白△まで進んでみると、白は損をせずに黒を切り離すことに成功していますね。
封じ手が良い手だったということでしょう。
白がポイントを上げたと思います。





3図(実戦)
しかし、黒も負けていません。
白×を取り込んで治まった上、黒△にも回ってはポイントを取り返したのではないでしょうか?
この判断が正しいかどうかは分かりませんが、しばらく進むと黒の優勢が明らかになったようですね。
ところが・・・。





4図(実戦)
井山名人の防衛濃厚と見られていたところで、コウ争いが発生!
黒はこのコウに勝てず、土壇場で形勢が逆転しました。
おそらく、井山名人のポカでしょう。
井山名人もポカをするということは知られていますが、まさかこんな場面で・・・。

勝負の女神は美しく、そして残酷です。
一方には素晴らしい幸運をもたらす裏で、敗者を地の底に叩き落とします。
恐ろしいものです・・・。


本シリーズは、休養期間を経て若い頃のような体力、精神力を手に入れた張挑戦者が、疲労の見える井山名人に対して粘り勝ったという印象です。
全盛期から取り組んできた棋風改造の成果も見えますし、強い張栩が戻ってきたのではないでしょうか。