白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

コンピュータ囲碁について・その9「第4局、待望の初勝利!」

2016年04月02日 23時42分21秒 | AI囲碁全般
圧倒的な強さを見せ付けたアルファ碁。
しかし、弱点はありました。

http://gokifu.net/t.php?s=331458914962039
途中までは全く李九段らしからぬ碁でした。
白22まで十分の布石ですが、黒23への対応からおかしくなります。
黒39まで、すっかり押さえつけられてしまいました。
さらに右辺の白52も信じられない対応。
李九段ならずとも切りたいところなのですが・・・。
結果、中央を丸呑みされては敗色濃厚となりました。
しかしここから奇跡が起こります。
白72の味付けから白78の割り込み!
誰も気付かないような妙手でした。
この一手で急に難解な局面になりましたが、正しく対応していれば黒はリードを保てていたはずです。
しかし、ここからアルファ碁は信じられない乱れ方をします。
まず、大事な黒79の手を間違えてしまいました。
これで白は逆転に成功しました。
それだけならまだ勝負は決まっていないのですが、そこから悪手のオンパレード。
あっという間に白勝ちが決まりました。
まるで白78によって、動揺したかのようです。
他の対局の正確さから考えれば恐らく稀なケースだとは思いますが、大きな弱点であることは疑いのないところです。
意図的にそういう局面に導けるかどうかによって、今後の対アルファ碁での勝率が変わってくるでしょう。
ともあれ、1勝返したことで次もひょっとしたら、という期待が生まれました。

コンピュータ囲碁について・その8「第3局、アルファ碁は中盤も人間を超えている」

2016年04月02日 23時39分08秒 | AI囲碁全般
第3局は、アルファ碁の強さが最大限に発揮された碁でした。
http://gokifu.net/t.php?s=1641458826753109
黒15と序盤から仕掛けましたが、やや無理だったようです。
白28まで、難なく中央に脱出しました。
白30は、形が頼りないので一見悪そうな手です。
しかし次の手と関連していました。
白32!この手が凄い手です。
とても思いつかない手ですが、見れば見るほど急所に来ているのがわかります。
そしてきつい手を打ったかと思えば、白36とあっさり体をかわします。
しかし黒37の追及に対しては、一転白38の最強手で反撃しました。
変幻自在の打ち回しです。
白76となって、早くも黒絶望的な形勢になってしまいました。
ちなみに白50や白62といった手は明らかに悪手なのですが、その損失は無視できるレベルのものです。

この対局は、連敗して後のない李九段の必死の頑張りが印象的でした。
序盤はそれが裏目に出てしまいましたが、ここからも気力を振り絞って戦います。
黒77は、誰も気が付かないような手です。
ここから無理やり事件を起こして、上辺の白と刺し違えようという捨て身の作戦です。
白はここでも冷静で、90や112とがっちり生きました。
然らばと黒は113から策動し、125に勝負をかけました。
普通では手にならない所ですが、結果的にコウに持ち込んでは大成功といえます。
しかし、残念なことにコウ材が足りず、逆転には至りませんでした。

トップ棋士の中でも特に李九段は戦いを得意にしていますが、その李九段が戦いでコンピュータに遅れを取ってしまいました。
第1局に引き続いてのことですから、これはコンピュータは中盤戦も人間を上回っている、と考えざるを得ません。
コンピュータの戦力分析は更新され、中盤戦までにリードしていなければ人間は勝ち目がない・・・そう思われました。

コンピュータ囲碁について・その7「第2局・ヨセの強さが想定外」

2016年04月02日 23時34分43秒 | AI囲碁全般
なんとも不思議な一局でした。
http://gokifu.net/t.php?s=371458823244731
黒15、あり得ません(笑)
序盤で決める意味が全くなく、明らかに損です。
話題になった黒37のカタツキですが、多くのプロが驚くほど突飛な手だとは思いません。
しかし、良い手ではないでしょう。
白64、白70・・・慎重な打ち方ですが良くない感じがします。
お互いミスが数手あったようですが、黒129となってヨセに入ったあたりでは黒やや優勢というところのようです。
しかし、ここからアルファ碁がどんどん差を広げていきます。
黒157からのヨセは、簡単には見付けられないないものでした。
白166に対して手を抜いたのも驚きです。
その他のヨセも完璧でした。

ヨセというのは1局の総仕上げであり、ここで勝敗が入れ替わることはよくあります。
しかし、アルファ碁はヨセに入ったらほとんどミスをしない・・・
人間視点で考えれば、ヨセに入る段階ではっきりリードしていなければ勝ち目がないということになります。
この時点で、多くのプロ棋士はコンピュータが人間を超えたと感じました。
しかし、アルファ碁の真価はこれだけではありませんでした。

コンピュータ囲碁について・その6「世界に衝撃走る」

2016年04月02日 23時31分46秒 | AI囲碁全般
アルファ碁対李世ドル九段の世紀の五番勝負、緒戦はなんとアルファ碁の勝利でした。
世界中のアマやトッププロ棋士、囲碁を打てない方にまで衝撃が走りました。
こんなことがあって良いのか・・・。
可能性としては考えていましたが、やはり実際に結果を見ると呆然としてしまいました。
しかし内容としてはどうでしょうか。
この対局は李九段に油断があったように思えました。

http://gokifu.net/t.php?s=8291458821037868
黒7の手はバランスが悪く、プロが打ちたい手ではありません。
明らかにコンピュータの力量を試した手です。
前例がない手に対してどう対応するか見ようとしたのでしょう。
黒23が恐らく打ち過ぎで、白24からの反撃が強烈でした。
「感覚」で言えば白は無理な形ですが・・・このあたりの強さはディープラーニングとモンテカルロ法のハイブリッドという印象があります。
白82からのサバキは華麗ですが、結果はどう見ても白損です。
白102は李九段も予想しなかったであろう鋭い手ですが、白106は大悪手です。
黒が追いついたように見えました。
しかし黒123が問題で、隅の地を取られて黒負けになりました。
白も130という酷い悪手を打っているのですが・・・黒のミスの方が大きかったようです。

このように、李九段がミスによって負けた印象を持ちました。 
よって1敗を考慮に入れてもこの五番勝負は李九段が勝つだろう、と却って希望を持ったのでした。
しかし、その予想は大きく裏切られる結果になりました。

コンピュータ囲碁について・その5「アルファ碁登場」

2016年04月02日 23時23分51秒 | AI囲碁全般
2016年1月28日、とんでもないニュースが飛び込んできました。
「アルファ碁、プロ棋士に初勝利」
最初は、9路盤で勝ったのだろうと思っていました。
9路盤というのは19路盤に比べて遥かに世界が狭く、プロが負けるのは早いと思っていました(それでも、実際にはプロに勝てていなかった)
しかし聞けば19路盤だということ。
わずかの期間に一体何が起こってしまったのか・・・

慌てて情報を集めたところ、このアルファ碁がディープラーニングの技術を用いていることがわかりました。
ディープラーニングについての知識は殆ど持っていませんでしたが、私はこう理解しました。
「必要な情報だけを抽出する技術」
囲碁でいえば、「良さそうな手だけを考える技術」ということになります。
囲碁の初心者であれば広い盤面の中でどこに打ったら良いのか全くわからないと思いますが、
棋力が上がっていくにつれて「良さそうな手」というのは直感で浮かぶようになります。
コンピュータが直感を身に着けたとなれば、もはや囲碁の広大な世界をしらみつぶしに探索する必要がありません。
コンピュータが人間を越すということは、「直感で」理解できました。

さて、実際に対局を見てみますと、対局者のプロ棋士の方は一般にイメージされるプロ棋士ではないことがわかりました。
私は中国のプロ組織についてあまり知識がありませんが、恐らく現在中国のプロ棋戦に参加しているわけではないと思われます。
棋力としては私に2子ぐらいではないかと感じました。
しかし、その相手に5連勝ということは、アルファ碁は先以上の差があると考えられます。
実際に棋譜を見た感じでは、私に先で良い勝負と感じました。

http://gokifu.net/t.php?s=1031458817521643
白36からの打ち方、こういうことをコンピュータがやるのは初めて見ました。
そして白58!これがまさに感覚の一手です。
従来のコンピュータですと傷を正直に守る手しか打てなかったでしょう。
この手を見た瞬間に、近い未来に人間が負けることは確信しました。
問題はそれがいつなのか・・・。
李世ドル九段との決戦は5ヶ月後ですから、相当な進化を遂げていることは間違いありません。
それでも希望的観測を込めて、李世ドル九段の勝利を予想していました。