白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

手筋その1

2016年04月06日 01時35分12秒 | 問題集
皆様こんにちは。
今回は手筋の問題を紹介したいと思います。
問題用に周囲の形は少し変えましたが、実戦でできたものです。
黒番で大きな利益を挙げる手段を見つけてください(黒4子は取られています)。
こちらをクリックすると問題に飛びます
実際に石を置くこともできるので、級位者の方も是非挑戦してみてください。
解けた時の爽快感は保障します!

解答はこちらです
高段者でも大抵は実戦では素通りしてしまうでしょう。


手筋を身に付けるためには、目にした時の驚きや喜びに勝るものはありません。
この問題を通して手筋の素晴らしさをお伝えできれば幸いです。
今後も良い問題ができ次第、投稿していきたいと思います。

コンピュータ囲碁について・その13「今後の囲碁界のあり方は」

2016年04月03日 00時06分18秒 | AI囲碁全般
最終回です。
その1はこちら

トップ棋士には是非とも頑張ってコンピュータと戦って頂きたいと書きました。
しかし正直な所、いつまでも同じ土俵に立てるとは思えません。
2045年問題という予測がありますが、そこまで待たずとも人間に到達不可能なレベルにまで達してしまうでしょう。
そうなった時に我々囲碁棋士の対局はどこに価値があるのか、ここでもう一度考え直す機会ではないでしょうか。
ただ強ければ良い、碁の真理に近付けば良いという時代は終わると考えています。

話は変わりますが、今日の大相撲では白鵬対日馬富士の結びの一番が話題になりました。
白鵬の横綱らしくない変化で、注目の大一番が一瞬で終わってしまったというものでした。
白鵬の相撲の是非については、議論もある所だとは思います。
やはり勝負として見れば勝ちたいのは当然ですし、あっさり飛んで行ってしまう日馬富士もどうかと思います。
ただ大事なのはファンは満足しなかったということですね。
表彰式までに多くの観客が帰ってしまいました。
優勝した白鵬自身はともかく、相撲興行としては大失敗でしょう。

囲碁の世界も、ファンのためにプロの対局があるのは同じことです。
プロはファンに楽しんで頂かなければなりません。
プロの棋力を生かして、アマにはできない雄大な構想、ぎりぎりの鍔迫り合い、等といったワクワクするような碁を打たなければならないと思います。
例えば武宮正樹九段の宇宙流は、囲碁界を席巻しました。
豪快に模様を広げ、最後には相手の石を丸ごと取ってしまうなど、なんとも派手な碁でした。
その影響でプロもアマもみんな三連星を打っていたのですから、凄いものです。
武宮九段のおかげで碁が楽しくなったという方は、相当多いのではないでしょうか?
そのレベルに突き抜けるのは難しいと思いますが、魅力的な碁を打ちたいものです。

また、対局者だけでなく解説のあり方も変わっていかなければならないと思います。
プロの対局における解説とは、盤上で何が起こっているか、頭の中で何を考えているのかといったことを伝える役割です。
現在はそれが内容の正確さに拘り過ぎ、レベルが高くなって一部のアマしかついていけない状況になっているように思います。
アマがどういった所に注目すれば楽しめるか、それを伝えることを最優先しなければならないと思います。

さて、長々と書いてきましたが、一つはっきりしていることがあります。
囲碁は数千年間人々を楽しませてきた、素晴らしいゲームです。
この素晴らしいゲームの魅力を伝える役割を得られたことは、とても幸運なことだと思っています。
世界の激変にも負けず、今後も頑張っていきたいと思います。


※コンピュータ囲碁に関しての一連の記事は3月23日~3月27日にかけてfacebookやホームページで投稿したものとほぼ同一です。
日付に関する言及で一部ずれている所があります。

コンピュータ囲碁について・その12「アルファ碁に勝つためには?」

2016年04月02日 23時53分03秒 | AI囲碁全般
彗星の如く現れたアルファ碁は、人間のトッププロ棋士を破ってしまいました。
開発者のデミス・ハサビス氏は間違いなく歴史に残る天才でしょう。
しかし、囲碁は数千年の歴史があります。
いずれ完全に上を行かれるにしても、今はまだ人間が頑張れる、一度は人間が勝たねばならないと考えています。
そのためにはどうすれば良いでしょうか?

1、隙を見せない
アルファ碁は、有利な状況を作ると決してそれを手放しません。
心理的な迷いなど一切なく、正確に追い詰めてきます。
そのような状況に追い込まれないよう、気を付ける必要があります。

2、布石は中央重視
これは1と関連します。
力関係で不利になると、必然的に弱点が浮かび上がってきます。
そうならないために、隅に潜るよりも中央重視で、戦闘の石数で不利にならないことが必要になってきます。

3、ヨセでミスをしない
ヨセでのミスは勝敗に直結します。
体力、精神力の問題で人間には厳しい部分ですが、ここを乗り切らねば勝利はありません。

今回、1、2の点で李九段は不利でした。
1に関しては、李九段の棋風が裏目に出ていました。
李九段は自分から仕掛ける棋風ですが、無理をした所を的確に咎められた印象でした。
2、に関しては、李九段はツケ引き定石など、隅の地を稼ぐ展開を選ぶことが多かったです。
しかしそれがアルファ碁の強さを引き出してしまった感は否めません。
3に関しては、これはもう頑張ってくださいと言うよりありません。
しかし、人類対コンピュータという観点からすれば、別の方法も考えられます。
アドバイザーとして他のトップ棋士が控えておくのです。
これによって所謂ポカ、うっかりミスを無くすことができます。
(対局者が着手を仮決定後、アドバイザーがそれにコメントするイメージです)
第1局井山裕太九段+アドバイザーに柯潔九段+朴廷桓九段
第2局柯潔九段+アドバイザーに井山裕太九段+朴廷桓九段
第3局朴廷桓九段+アドバイザーに井山裕太九段+柯潔九段

日中韓のランキング1位を集めた、このような3番勝負は如何でしょうか?
私は、これなら人間が勝てると考えています。

コンピュータ囲碁について・その11「アルファ碁対李世ドル九段・総評」

2016年04月02日 23時50分02秒 | AI囲碁全般
第1局から第5局まで、アルファ碁の戦力分析は1局ごとに大きく変わりました。
全部見た結論としましては、アルファ碁は長距離ランナーであるということです。
序盤は勢力志向、それを生かして中盤では決して致命傷を負わず、終盤は安定したペースでゴールに辿り着く。
これがアルファ碁の勝利パターンだと思いました。
石を取るか取られるかのような局面では意外にも完璧ではなく、むしろ李九段が自ら体勢を崩したところで止めを刺している印象がありました。
強引とも思われる仕掛けからリードを奪っていく李九段としては、相性が悪かったかもしれません。

コンピュータ囲碁について・その10「第5局、アルファ碁勝利」

2016年04月02日 23時44分55秒 | AI囲碁全般
最終局、李九段はなんとしても勝ちたかったはず。
とにかく大きなミスを出さないように心がけていたように見えました。
ただ、堅くなりすぎてしまったでしょうか。

http://gokifu.net/t.php?s=8191459001942438
毎日3万局の模擬対局を行っているアルファ碁に流行り廃りは関係ないように思えますが、白12のような最新の手を打っているのが面白いです。
ただ、白16の手によって全く違った意味を持ってきます。
人間のプロは右下に余裕を持たせるために白12を打ちましたが、アルファ碁は碁盤を大きく使うために打っている、と考えられます。
黒17からの仕掛けへの一連の対応からも同様の思想(?)が読み取れます。
黒25までの分かれは互角のように見えます。
右下の地は確かに大きいですが、白も良い姿です。
アルファ碁得意の碁形であろうことを考えると、むしろ李九段としては勝ちにくくなったようにも見えます。
しかし、右下白48からの折衝は明らかに失敗でした。
他の利き筋やコウ材をすべて消してしまいました。
ややこしい攻め合いの読みは苦手なのでしょうか?ここで黒優勢になりました。
しかし黒69はどうだったか?結果的にはこの手が敗因かもしれません。
白70とボウシされると白80までほぼ一本道、ここで黒に迷いが生じました。
黒81では膨らみで問題なかったと言われていますが、対局者としては警戒するのもやむを得なかったかもしれません。
実際に第1局、第3局と予想外の強烈なパンチを貰っているのですから・・・。
ともあれ黒99まで凹まされては白のペースになりました。
そして黒107への対応は流石のものです。
白112の剛手など思い付いても相当打ちづらい手ですが、躊躇なくやっていきます。
かと思えば白124であっさり攻めを放棄してしまう・・・。
このあたりは流れを重視する人間とは根本的に違うところです。
アルファ碁最大の強みかもしれません。
白166までと進み、どうやら白勝ちが確定したようです。
ここからアルファ碁にはミスがありませんでした(白からコウを仕掛けるチャンスなどありましたが、危ない橋を渡ろうとしませんでした)。
李九段としても最善を尽くしたと思いますが、もはやチャンスはありませんでした。