白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

4月の投稿一覧

2016年06月20日 23時33分17秒 | 当ブログについて&バックナンバーまとめ
皆様こんばんは。
まずはお知らせです。
本日発売の週間碁6月27日号で、NHK杯の本木克弥七段清成哲也九段戦を解説しています。
また内田修平七段山城宏九段戦も解説していますが、そちらは来週あたりに掲載されると思います。
テレビ放送とは違った視点で解説しておりますので、ぜひご覧ください。

さて、それでは本題に入りましょう。
当ブログでは私が今まで投稿した全ての記事をご覧頂く事ができます。
しかし、ご存知の通り私の記事はとても長いです。
あの記事はどこにあったっけ・・・と探そうとしても膨大な文字と画像の海を泳いで行かなければいけません。
現に私が困っています(笑)
という事で月ごとに記事へのリンクをまとめておくことにしました。
カテゴリー「当ブログについて&バックナンバー」に投稿して行きます。
今回は4月分です。

4/2 はじめまして・・・ご挨拶です
4/2~4/3 コンピュータ囲碁について・その1その2その3その4その5その6その7その8その9その10その11その12その13・・・アルファ碁について語りました
4/5(表示は4/6) 手筋その1・・・実戦に出来た爽快な手筋を紹介しました
4/6 囲碁とは何か・・・囲碁普及の問題点について語りました
4/7 本日の対局・・・初めて盤面を使った記事を投稿しました
4/8 明日は指導碁・・・永代塾囲碁サロンでの指導碁を宣伝しました
4/9 本日の指導碁・・・3子局を題材にしました
4/10 電王戦&教室のこと・・・将棋電王戦について語りました
4/11 オープン初日・・・五反田に指導碁専門の教室をオープンしました
4/12 本日の指導碁・・・4子局を題材にしました
4/13 本日の指導碁・・・6子局を題材にしました
4/14 本日の対局・・・鈴木伸二六段と対局しました。
4/15 本日の問題・・・私の対局に出来た手所を問題にしました
4/16 マトリョーシカ?・・・問題を出題しました。自信作です
4/17 中央大学囲碁部現役・OB交流会・・・中大囲碁部の紹介をしました
4/18 鉄人・杉内雅男九段・・・杉内九段の凄さをご紹介しました
4/19 幽霊の正体見たり枯れ尾花・・・上手を怖がり過ぎてはいけません
4/20 井山七冠誕生!・・・大ニュースについて思う所を述べました
4/21 本日の対局・・・大森泰志八段と対局しました
4/22 最も危険な瞬間とは・・・守りの重要性について解説しました
4/23 結婚式・・・先輩の結婚式に参列しました
4/24 指導碁・・・指導碁に出来た格好良い手筋を紹介しました
4/25 本日の問題・・・指導碁を元に、皆様への問題を出題しました
4/26 5年前の真実・・・私の対局に出来た手所を解説しました
4/27 本日の指導碁・・・6子局を題材に、根拠の重要性を解説しました
4/28 両セキ崩れ?・・・林海峰名誉天元と対局、面白い形が出来ました
4/29 軽さと重さ・・・2子局を題材に、石の軽さと重さについて解説しました
4/30 身軽に打つ・・・2子局の白の打ち方を題材にしました

紫綬褒章受賞を祝う会

2016年06月19日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は如水会館にて、24世本因坊秀芳(石田芳夫九段)の紫綬褒章受賞を祝う会が開かれました。
石田九段の囲碁サロンで指導碁を行っている私も出席しました。
来賓の皆様からのお祝いの言葉は、石田九段の事を知り尽くしているだけあって大変ユーモアに富んだものでした(笑)
また余興は何と大橋拓文六段のピアノ演奏!
自然にアンコールの声が上がる、見事な演奏だったと思います。
料理も美味しく、素晴らしい会でした。

私ばかり楽しんでいるのも申し訳ないので、皆さんには石田九段の対局をご覧頂きましょう。
昭和46年の第26期本因坊戦第4局、石田芳夫七段(黒)対林海峰本因坊戦です。
このシリーズで石田七段(当時)が林本因坊を4勝2敗で破り、一躍トップに躍り出ました。
後に兄弟子の大竹英雄名誉碁聖を始めとする木谷一門隆盛の時代が始まりますが、そのきっかけがこのシリーズだったと思います。



黒1と打ち込みました。
しかし「コンピューター」石田七段は戦いには拘りません。
白2の低い受けを見て・・・





黒1とあっさり引き上げました。
次に黒Aが厳しいので白2ですが、黒3と大場に先行しています。
この足の早さが特徴です。





白△と打たれた場面です。
ここで黒Aなどと打っていれば普通の感覚でしょうが・・・





実戦はツケ押さえを選択しました。
黒5となった黒石4つは陣笠と呼ばれる悪形なので、私はアマの方にはお勧めしていません。
しかしこれは石田七段の大好きな形、後々まで愛用しています。
石の形より現実(この場合実利)を重視する、石田七段らしい打ち方です。





ツケ押さえに対して白1と下がりましたが、これに対しては黒2と上を切るのが定石です。
白の1子を取って厚みを築きます。





しかし、実戦は黒1と隅を押さえました。
白3の繋ぎを許してしまいますが、黒4と打って地を重視しています。
このカラさが、いかにもという感じです。
またこの打ち方の理由はもう一つあり・・・





後の黒1の侵入を見ていました。
この手があるので白地は大したことはないと見切っていたのですね。
黒3などとぺたぺたくっつけて手にするのは石田七段の得意とする所です。





黒8まで、白地のど真ん中を割っては成功しました。





その後、戦場は上辺に移っています。
黒1、3は侵入の常套手段です。
白4ときつい手を放ってきましたが、黒はどう対応しますか?





正直に黒1、3と繋がるようでは、白4となって全く眼のない形になってしまいます。
治まるまでに苦労する事でしょう。





黒1とツケていきました。
こういうサバキのツケは石田九段の碁には頻繁に出てきます。
あちらを打ったりこちらを打ったりですが、黒7となってみるとなんとなく形が出来ています。





しかし白も簡単には治まらせまいと、中から動き出して来ました。
黒Aと押さえたくなりますが、すぐにはうまく行きません。





すぐに黒1と押さえると白12まで攻め合い負けとなります。
その上右側もまだ治まっておらず、黒全くダメな図です。





ここで黒1と切ったのがうまい様子見です。
こういった所での手の見えは、当時から大きな武器にしていました。





白1と下から抱えると、黒4で打つ事になります。
白5から9と切って行きたいのですが、黒10で両アタリです。





前図を嫌って白1と上から抱えましたが、黒2、4とおまじないを打ってから黒6と押さえました。
その心は?





おまじないの効果で、攻め合いの手数が伸びました。
この後白A黒B白Cでコウですが、ただ取られとコウでは大違いです。
黒成功と言って良いでしょう。
この後コウ替わりで左辺を破られますが、そこもうまく乗り切って勝ちを決めました。


石田九段は正確な読みと計算を武器にして一時代を築きました。
現在では珍しくないスタイルですが、石田九段がそのはしりだったと思います。

スペースマン&会津中央病院杯感想

2016年06月18日 23時36分00秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日はネットラジオ、スペースマンでGO!にゲスト出演しました。
観覧席との距離の近さにビックリ!
直接声が届くので、出演者に質問や突っ込みをぶつけて見るのも面白いでしょう。
個人的には慣れない事に苦労しました
視聴者、観覧者の皆様に楽しんで頂けたのなら幸いです。

さて、本日は会津中央病院杯決勝の2日目が行われました。
振り返って行きましょう。



封じ手は白1のツケでした。
またしても外れ・・・
今攻め方を決めるのは怖いかと思ったのですが、思い切って行きましたね。





その後、形を決めてから白△ツケを決行!
黒は受け切れず、黒1と中央を守って白2の連打を許しました。
好形を得て白成功です。




黒は1が最善、黒7までと渡って粘り強く打ち進めています。
白10の守りを待って黒11と先行、地合いで引き離されない打ち方です。
白は12と入り、新たな戦いが始まりました。





下辺を曲がられた場面、Aあたりの傷が心配です。
どう守るかと見ていましたが・・・。





白1と格好良いツケ!
一種のモタレ戦法です。





黒1と当然反撃したくなりますが、白先手で薄みをカバーする事ができました。
白6、8の攻めに回って好調、戦上手の謝さんらしい打ち回しです。





黒も簡単には土俵を割りません。
黒1のノゾキから、黒3と手筋のツケで反撃!
周囲の白の薄みを衝いて行きました。





結果、中央の大石が脱出した上に黒1の開きに回れては黒盛り返したかと思われました。





しかし、白1、3、5と流れるような攻め!
これが厳しく、白が優位を保っています。





最終的には黒4子を飲み込む事になり、白の勝利が決まりました。





2日目黒がそう悪い手を打ったとは思えませんでした。
となると1日目が敗因でしょうか。
気になったのはこの場面、実戦は黒Aと打ちましたが黒1の方が勝ったと思います。
この碁は上辺の黒が弱くなってしまったのが最後まで尾を引きました。

謝女流本因坊が持ち味を出し切っての快勝でした。
青木八段は守勢に回ってしまい、自慢のパンチを繰り出すチャンスが無かったのが残念でした。
しかし容易に決め手を与えず、最後まで観戦者を楽しませてくれたと思います。
2日に渡る熱戦に拍手を送ります。

会津中央病院杯

2016年06月17日 23時42分47秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
第3回会津中央病院杯・女流囲碁トーナメント戦、決勝戦が始まりました!
和服での2日制対局です。
現代ではあまり見られない様式ですが、やはり素晴らしいですね。
それでは対局の模様を振り返っていきましょう。



序盤、青木喜久代八段が左辺にこんな構えを敷きました。
この構えは数十年前には黒十分とされましたが、段々評価が変わって来て現在では黒あまり好まないとされています。
しかし流行に左右されないのが青木さんです。





そして、その構えに謝依旻女流本因坊がツケて行きました。
これはこの構えへの常套手段で、この局面では謝さんならずともこう打ちたくなる所です。





しかし、黒1に対する白2が謝さんならではの仕掛け!
これには驚きました。
この位置への侵入は常套手段ではありますが、ツケとの組み合わせは見た事がありません。





これが白の注文です。
左辺で堂々と居直ってしまうつもりです。





黒はあっさりと渡らせ、白△を飲み込んで悪いわけがないと言っています。
この鷹揚な対応もいかにも青木八段といった印象ですね。




とはいえ、白1、3と目一杯に構えられたら流石にのんびりしてはいられません。
黒4と突入して戦いが始まりました。





この場面、白の次の一手が封じ手となりました。
黒の中央の弱石、右上AやBの傷をどう狙って行くのでしょうか。





封じ手予想は白1のツケです。
黒△とノゾキを打ったことで右側にマイナスが生じています。
そこを衝いて行きたいですね。


今回は2日制という事で、内容の濃い対局が期待できると思います。
明日もお楽しみに!

手合日

2016年06月16日 23時59分59秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日はビッグニュースが2つありましたね。
一つはイチロー選手の日米通算4257安打!
もう一つは、井山裕太七冠の総理大臣顕彰!
いずれも今世紀中に破られるかどうかわからない大記録だと思います。
お二人には今後も人々の目標になる存在でいて頂きたいですね。

さて、本日は木曜日、棋士の対局日でした。
幽玄の間で中継された対局から、見所を紹介していきましょう。



たまにはヨセに注目してみましょう。
安達利昌三段(黒)対大西竜平初段戦です。
白番、次の一手は?




白1と一本切りを入れ、その後何事も無かったかのようにヨセに入りました。
白1には何の意味があったのでしょうか?





放っておくと、黒2から6までのヨセの手筋が生じる所でした。
白Aと打つしかありませんが、黒Bで白地を大きく荒らされてしまいます。





ではそれを防いで白1と押さえるのはどうでしょうか?
すると黒は他の大きなヨセに回ってしまいます。
白3と打っても1目取れるだけで、地としては小さいです。





という事で実戦の切り一本という発想が生まれるのでした。
今度は黒10に白11が成立します。





黒1にはAとBが見合いで黒取られています。

何気なく通り過ぎてしまう場面かもしれませんが、プロの碁はこういう所の巧拙が勝負の分かれ目になります。
棋譜を見ていてこういう所で手が止まるようになれば、皆様自身のヨセのレベルアップにも繋がる事でしょう。





2局目は張瑞傑二段(黒)対蘇耀国九段戦です。
白△と、黒3子を攻めに来ました。
黒はどう対応しますか?





3子が弱いので、黒1以下まず治まりを図るのが普通の発想です。
しかし白14までと進み、白地もかなり大きくなりました。
この図を不満と考えた黒は・・・。





黒1!
守りではなく、仕掛けて行く道を選びました。
無謀なようですが、下方の白の大石も弱い事が計算に入っています。





下方に気を使って白1は仕方ありませんが、黒2と白△を大きく飲み込むつもりです。
白もそれは許さんと白3以下切断して行き・・・。





このような攻め合いになりました。
黒番、どうしますか?





攻め合いの原則は本体(この場合白△)のダメを詰める事、内ダメ(黒A)を詰めない事です。
という事で黒1が正解、ここで白投了となりました。





白が続けて打った図です。
最後の最後、白石を当たりにする段階で初めて黒4の内ダメを詰めるのがポイントです。

若い棋士はよく手が読めます。
本局はその武器を最大限に生かした1局でした。





最後は張豊猷八段(黒)対依田紀基九段戦です。
白番、上下の白が弱く苦しそうな状況です。
どう凌ぎますか?





実戦は白1、これが形の急所です。
白A黒B白C、白B黒A白Dという2つの狙いを見ています。
黒は行動が不自由になりました。





黒1は打ちたい手ではありませんが、上方の黒を守るために仕方なく打ちました。
結果白12までと、自然に右下白が生きています。
白△も相変わらず急所に来ており、白のサバキは成功です。





手順が進んで、白番です。
どこに目を向けますか?





実戦は白1と格好良いツケ!
黒石のダメ詰まりを睨んで、ここが急所です。





割り込まれては困るので黒1は仕方ありませんが、白2となって黒の頭を押さえ込む事に成功しました。





さらに手順は進み、黒△とノゾいて来た場面です。
白、どう対応しますか?





白1と繋ぐのは重く、黒の注文通りです。
黒2となって、次に黒A白B黒Cで切断する狙いが生じました。





実戦はまたしても格好良い手が出ました。
白1のカケ!
黒の逆手を取って行きました。





以下長手数ですが白23まで一本道です。
白は枝葉の石を捨て、大石を攻められる事を回避しました。

筋場理論を提唱する依田九段は、石の形に拘りがあります。
本局は白石の形が崩れる場面が全くありませんでした。
棋譜並べには最適の1局だと思います。


本日は23図を掲載、ちょっと頑張りすぎました
プロの碁の魅力をお伝えできていれば幸いです。