白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

伊田八段、予選突破!

2016年07月21日 22時17分11秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
昨日は三星火災杯予選決勝が行われ、伊田篤史八段が見事枠抜けを果たしました!
本音を言えば、最低2人は抜けると思っていたのですが・・・
ともあれ、世界戦優勝経験者でも苦労する予選を突破したのは素晴らしいです。
それでは対局の模様を振り返って行きましょう。



伊田八段の黒番です。
まだ8手目ですが、白△の挟みから難解な戦いに突入しました。
プロには違和感を覚える配置なのですが、一時期研究された型です。
ただの挟みのように見えるかもしれませんが、実は罠が仕掛けてあるハメ手紛いの形です。
黒はAなどと難解型を避ける手もありますが・・・





黒1、3で隅に向かうのが普通の形で、実戦もこう打ちました。
ここで定石は白A、お互いに△を取り合う変化になりますが・・・





白1と逆からの当て!
定石には無い手ですから、普通は成立しません。
これを成立させるための白△の配置でした。





普通は黒1、3でダメですが、白10まで星下の石との綱渡りが可能です。
実戦もこう進みました。





普通は何故ダメなのでしょうか?
まずは下辺星下に開いていた白を一路高くしてみましょう。
すると黒9となって、白は段違いになっています。
連絡出来ない事をご確認ください。





今度は左辺の白を一路低くしてみました。
すると黒3まで利き、白10のハサミツケに黒11と遮る手が成立します。
中の黒5子は捕まらず、白4子は取られます。

このように、少しでも配置がずれると白の逆から当てる打ち方は成立しません。
というよりこの打ち方を成立させるための配置であり、ハメ手紛いと申し上げる所以です。





実戦は白の狙い通りになりました。
黒△には2眼無いので取られです。
黒、ハマってしまったのでしょうか?





勿論そんな事は無く、伊田八段はその先を見ていました。
黒1が用意の手です。
白の上下を分断して行きました。
黒△はいずれ取られますが、攻め取りにする狙いです。





その後、このような局面に進みました。
黒△と抜き、下辺の白地よりも大きな黒地が出来ました。
中の黒には白Aと出られる傷がありますが、それを打つと隅の攻め合いの関係で黒B、C、D全て先手になるので眼が出来てしまいます。
つまり中央の黒は強い石です。
それに対して左上一帯の白は弱い石です。
総合判断としては黒はっきり優勢となりました。

この後は伊田八段ががっちりと打ち進め、付け入る隙を与えませんでした。
完勝だったと思います。
読み合いで負けないというのは世界戦では大きな武器になります。
本戦での活躍に期待しましょう!


本日は棋士の対局日という事で、幽玄の間では多くの対局が中継されました。
明日はその中から何局か取り上げてご紹介したいと思います。

6月の投稿一覧

2016年07月20日 12時03分47秒 | 当ブログについて&バックナンバーまとめ
皆様こんばんは。
現在第21回三星火災杯世界囲碁マスターズ統合予選が行われており、日本棋士4名が決勝に進出しました!
世界戦優勝経験者が次々に脱落する中、ここまで勝ち残って来たのは素晴らしいです。
4名全員の本戦出場に期待したいと思います。
予選決勝は本日行われます。

予選の模様が気になりますが、本日は6月に投稿した記事をまとめます。
6月も休まず投稿しました。

6/1 攻めとは・・・五反田での指導碁を題材にしました。得をしながらの攻め方について解説しています。
6/2 封じ手予想・・・本因坊戦第3局の1日目の感想と封じ手予想です。
6/3 本因坊戦第3局感想・・・本因坊戦第3局の2日目を振り返りました。稀に見る難解な戦いでした。
6/4 6月の情報会員向け解説・・・日本棋院情報会員のPRを行いました。
6/5 攻めの方向・・・攻めの方向について解説しました。見た目で違いが分かる構成になっています。
6/6 サバキ・・・私の対局からプロのサバキをご紹介しました。雰囲気を楽しんでください。
6/7 勝負手・・・私の対局からプロの勝負手をご紹介しました。手所が多いです。
6/8 2目の頭・・・2目の頭を何故ハネられてはいけないのか、実戦例を使って解説しています。
6/9 手合日・・・毎週木曜日は棋士の手合日です。幽玄の間で中継された対局の名場面をご紹介しています。
6/10 井山七冠、総理大臣顕彰・・・前日に続いて幽玄の間中継対局の名場面をご紹介しています。
6/11 13路盤アマ予選終了・・・13路盤プロアマトーナメントのアマチュア・コンピュータ予選の感想です。
6/12 締め付け・・・手筋の問題です。狭い範囲なのでぜひ挑戦してみてください。
6/13 封じ手予想・・・本因坊戦第4局の1日目の感想と封じ手予想です。
6/14 本因坊戦第4局感想・・・本因坊戦第4局の2日目を振り返りました。井山本因坊の豪腕が発揮された1局でした。
6/15 スペースマン・・・石榑九段との対局を振り返りました。拙い碁でしたが皆様のご参考になれば幸いです。
6/16 手合日・・・恒例となった幽玄の間中継対局の名場面紹介です。この日はビッグニュースもありました。
6/17 会津中央病院杯・・・会津中央病院杯の決勝1日目の感想と封じ手予想です。
6/18 スペースマン&会津中央病院杯感想・・・ネットラジオへの出演報告と会津中央病院杯決勝2日目の感想です。
6/19 紫綬褒章受賞を祝う会・・・二十四世本因坊秀芳のお祝いの会に出席しました。代表局の紹介も行っています。
6/20 4月の投稿一覧・・・ブログを見やすくするために過去記事をまとめる事にしました。毎月追加していきます。
6/21 勝手読みにご用心・・・アマの碁に多い、勝手読みの怖さをご紹介しました。
6/22 会員特典・・・五反田の教室のPRと棋譜解説を行いました。
6/23 本日の対局・・・中小野田九段との対局を振り返りました。拙い碁でしたが反省を込めて。
6/24 日本チーム、乙級昇格!・・・若手チームの中国遠征での活躍と対局の模様をお伝えしました。
6/25 碁聖戦感想・・・井山碁聖に村川八段が挑戦しました。1局目は激戦となりました。
6/26 囲碁サロン尾越・・・釧路に出来た尾越九段の囲碁サロンを訪問しました。講座もあります。
6/27 5月の投稿一覧・・・5月の投稿記事のまとめです。
6/28 本日の問題・・・実戦に出来た問題です。手筋の美しさを感じて頂ければ幸いです。
6/29 封じ手予想?・・・本因坊戦第5局1日目の感想と封じ手予想?です。100回目の投稿となりました。
6/30 井山本因坊、防衛!・・・本因坊戦2日目の感想です。井山本因坊、流石の強さでした。

攻めか守りか

2016年07月19日 22時09分00秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
本日は3子局を題材にします。



白△と黒地を減らしに来た場面です。
黒は受けるべきでしょうか?





黒1と受けました。
当然のようですが実はチャンスを逃しています。
白2と守って白安心しました。
後から黒3、5と攻めを狙いましたが一歩遅く、白6となってはもう攻められません。
それどころか左辺に大きな白地が出来そうです。



もう一度最初の図に戻ってみましょう。
全体を見渡してみると、周囲に黒石が多い中で中央の白3子が孤立しています。
中央では眼を作りにくいので、白は見た目以上に弱い石です。
また下辺の黒には隙が無く、入って来られたとしても多少地が減るだけです。
そう考えると、何となく答えが見えて来ませんか?





受けずに中央の白を攻めるのが正解でした。
その前に黒1は攻める前の手続きで、先手になります。
黒Aとハネ出されると切れてしまうので、白2は仕方ありません。
この先手の利かしは知っておくと役に立ちます。
さて、ここで黒3と中央を攻めるのが本命です。
白4には黒5と、包囲網を敷きながら黒地を増やして行きます。





白1以下逃げて来る事になるでしょうが、素直に追いかけて問題ありません。
白はなんとか繋がりましたが、地は全く増えていません。
一方黒は自然に大きな確定地が出来ました。
左辺に白地が出来る事も無く、攻めの効果は明らかです。





白1のような手が気になる方は多いでしょうが、黒4まで応じていて全く困りません。
黒地を減らすだけのヨセの手です。





ただし攻めは方向が大事です。
この図のように何となく追いかけてみた結果何も残らなかった、とならないように気を付けましょう。
大雑把で良いので展開をイメージしておく事が大事です。

弱い石を守る事は第一にしなければなりません。
しかし地を守るのはヨセになってからでも十分間に合います。
常に全体を見て、お互いの石の強弱に気を配るように心がけましょう。

碁聖戦第2局・後半戦感想

2016年07月18日 18時24分30秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
前半の続きです。



再開後の手は白△押しでした。
左右を分断してこの一手です。





黒も対抗して1と上辺に居直りました。
逆に左上の白に寄り付こうかという勢いです。





ところが、小細工無しで白1から5と繋がったのが手厚い好手でした。
さらに白Aと打たれては左下が確定地になり、白Bの切りまで生じるので・・・





黒1、3と渡って行ったのは仕方ありません。
小さくない稼ぎですが、白4、6となって黒を一方的に攻める態勢です。
黒は苦しくなりました。





その後上辺黒はなんとか脱出出来たものの、中央に壁を作られて下辺一帯が巨大な白地になろうとしています。
のんびりとヨセに入るようでは到底勝ち目がないので・・・





黒1と突入しました。
白4まで交換してから、さらに黒5とツケ!
あちらにツケたりこちらにツケたりするのは凌ぎの常套手段です。
右側の黒はA~Eの選択を保留しており、どれを選んで来るかわからないのが白にとって不気味です。
そこで白は・・・




全ての利きを消す白1!
格好良いですね。
後顧の憂いを無くし、黒2を待って全力で眼を取りに行きました。





その後黒1や3など、手筋を連発しましたが白に完璧に対応されています。
生きる事は出来ず、井山碁聖の中押し勝ちとなりました。

終わってみれば井山碁聖の快勝でしたね。
形勢をリードしてからは一部の隙も無く勝ち切りました。


第3局は7月28日(木)9:00から、日本棋院関西総本部で行われます。
このまま井山碁聖が3連勝で防衛を決めてしまうのでしょうか?
しかし、村川挑戦者としてもようやく掴んだ井山碁聖への挑戦のチャンスです。
そう簡単に引き下がるとは思えません。
第3局の戦いぶりに期待しましょう!

碁聖戦第2局・前半戦感想

2016年07月18日 14時15分47秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんにちは。
本日は第41期碁聖戦挑戦手合の第2局が行われています。
第1局村川大介挑戦者井山裕太碁聖を苦しませながら、惜しくも敗れました。
本局で初勝利なるでしょうか?
それでは昼休憩までの展開を振り返って行きましょう。



村川挑戦者の黒番です。
白△まで穏やかな布石で始まりました。





黒が右辺、上辺を盛り上げようとした所で白4の打ち込み、ここから主導権を握る狙いです。
黒Aなら正面衝突ですが、白石の多い所なので不利な戦いになります。





そこで黒1、3とかわして行きました。
一見関連性のないような2手ですが・・・





白1と間を裂いてくる手に対しては黒12までを用意しています。
黒Aを見られていて白は手出ししにくい形です。
この黒2~8の手順は覚えておくと便利です。





白も手を出すのは早いと見て右辺に先行しました。
あちらに打ったりこちらに打ったりと忙しいですが、これがサバキの常道です。
石数が少ないので、選択肢を多く用意しておかなければいけません。
さて、黒16と当てられた所がハイライトです。





白1のように当てられたらとりあえず繋ぐ、というのはプロの碁ではありません。
黒8となってみるとどうでしょうか。
白は1目助けた上に黒の1目を取りましたが、出来上がった形は大きな団子石です。
左方への道も止まってしまいました。





そこで1目を繋ぐ前に白2、4と仕掛けたのがプロの手順です。





黒が前図と同じように受ければ、今度は1目を繋ぐ必要が無くなります。
白6となった姿を先の図と比べて見てください。
上辺にも中央にも進出して軽快です。





実戦は黒5までと隅を目一杯に地にして、白も6の切りに回りました。
白は黒の勢力圏で安定して満足、一方黒も地が大きく満足です。
互角の分かれに近いでしょう。





その後、黒が左上三々に入って新たな戦いが始まりました。
図は昼休憩の場面です。
確定地は黒がリードしており、黒Aなどと右辺を飲み込んでさらに地は増えるかも知れません。
一方黒は上辺の左右3子が弱い石です(右側はカス石、捨てる可能性が高いでしょう)
また左辺△間が繋がっていないのもマイナスです。
よって左上の戦いは白有利ですが、それが地合不利を上回る程なのかが問題になります。
ここからが勝負所です。

対局の模様は幽玄の間首藤瞬七段の解説付きで中継されています。
午後もお楽しみください!