白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

昨日の対局

2019年02月15日 23時59分59秒 | 対局
<本日の一言>
今年は仲邑菫(9歳)、福岡航太朗(12歳)、上野梨沙(12歳)という非常に若い子達が入段を決めました。
皆素晴らしい才能で、今後の活躍が楽しみですね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は昨日の対局を振り返ります。
十段戦予選、相手は謝依旻六段です。



1図(実戦)
私の白番です。
黒1から3という流れには未だに慣れません。
他の棋士の対局で見慣れているはずですが、自分の対局では想定図に入ってこないのです。
つまり私の感性に合わない打ち方ということで、今後も自分で打つことはないでしょう。

三々入りに対しては色々な打ち方がありますが、迷ったらこのように対応することが多いです。
あえて難しい打ち方をせずとも、自然に打っていればそうそう悪くなるものではありません。





2図(実戦)
黒1に対して、白A、B、Cなどとつなぐのは自分だけが頭を下げる手なので、プロは絶対に打てません。
そこで受けずに白2と打ちましたが、これはちょっと不自然な手でした。
上辺が白の大きな財産であり、そこに黒3と入ってくることは当然予想できるのですが、白2の石はその戦いに参加するには遠すぎるのです。





3図(参考図)
どう見ても白1と打つ一手で、黒の上辺への侵入を牽制するべきでした。
黒2~8といった手が気になりますが、上下の隅の黒は既に生きているので、白×は捨てても良いのです。
白9と中央を制して、夢のある進行です。





4図(実戦)
実戦は早くも普通に打っていては勝てそうにない形勢になってしまったので、上辺黒に猛攻を仕掛けていきました。
右上白の死活が怪しい上に、中央は黒Aからの出切りを狙われていて、見るからに無理そうではあります。
ただ、簡単に潰れることもないという読みだけを頼りに、必死に頑張りました。





5図(実戦)
その後は逆転に成功しましたが、甘い打ち方をして再逆転されるなど、形勢が揺れ動きました。
図は大振り替わりが起こった場面で、お互いに×の石を抜く派手な分かれになりました。
少し盛り返して、さあこれからもう一勝負と思っていたのですが・・・。
直後にとんでもない方向音痴が出て、あっという間にダメになってしまいました。
棋譜クリニック院長も、まだまだ修行が足りませんね・・・。
2月14日、謝六段がくれたのは●でした。

棋聖戦第4局感想

2019年02月14日 22時42分24秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
本日の対局は午前中に形勢が悪くなり、お昼は気分転換と思って全く情報の無いお店に行ってみたのですが・・・。
何気なく注文した料理に口を付けた瞬間、電流が走りました。
これは・・・トラウマ食材!
かなり苦手な味で、大昔にこれをメインに味付けされた料理を食べて気分を悪くして以来、極力避けるようにしていたのですが・・・。
すっかり忘れていました。
しかも当時と同じ料理です。
苦手は克服されておらず、さらにダメージを負って対局場に戻ることになりました・・・。
手合日に冒険はダメ。ゼッタイ。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は棋聖戦第4局の2日目が行われました。
早速振り返っていきましょう。
注目の封じ手は・・・。



1図(封じ手)
黒△でした!
ようやく予想が当たりました!
この調子であと2回当てたいので、山下敬吾挑戦者に頑張って欲しいところです。





2図(実戦)
井山裕太棋聖が黒△と飛んだ場面です。
次に黒Aと切られると、要石の白△が取られてしまいます。
また、黒Bと飛ばれると白×が取られてしまいます。
いわゆる見合いの状況になっていて、白が困ったように見えますが・・・。





3図(実戦)
妙手!
黒Aとつながせてから白Bに回れば、黒Cも成立しなくなっているというわけです。
凄い手があったものですね。

こういった手が見られることは、戦いの碁の魅力の最たるものでしょう。
派手な手筋は、ぎりぎりの戦いの中で多く現れるものです。
この後も手筋が多く現れました。





4図(実戦)
最終手もまた手筋でした。
眼取りとダメ詰めを兼ねています。


それにしても、この2人の対局は本当に激しい戦いの碁にしかなりませんね。
おそらく意図してのものではなく、なるべくしてこうなっているのでしょう。

棋聖戦第4局封じ手予想

2019年02月13日 23時55分24秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
レオパレス21の問題が続いていますね。
建物の裏がどうなっているかは見えないので、入居者にはどうしようもありません・・・。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は棋聖戦第4局の1日目が行われました。
早速振り返っていきましょう。



1図(実戦)
井山裕太棋聖の黒番です。
ここで山下敬吾挑戦者、なんと三々打ち!
かつては初手を天元に打っていたこともある山下挑戦者ですが、ずいぶん下に行ってしまいましたね(笑)。





2図(実戦)
白が黒×を取り、その代わり黒は白×を腐らせて外勢を築く、派手な振り替わりが起こりました。
ぱっと見では黒の姿が立派に見えましたが、数えてみると白の利益も大きいですね。
この後、黒は外勢を生かして上辺白に攻めかかっていきました。





3図(打ち掛け局面)
白△と打った場面で、次の黒の手が封じ手となりました。
「ツケコシ切るべからず」の黒Aは筋が良く、ほとんどの棋士が真っ先に思い浮かべる手です。
ただ、この配置では愚直な黒Bにも魅力を感じます。





4図(封じ手予想)
迷いましたが、予想は黒△にします。
自信は全くありません。

目算ナビゲーター白石勇一

2019年02月12日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
<本日の一言>
2月22日(金)、SENKO CUP ワールド碁女流最強戦2019開幕します。
そしてその前日、前回準優勝者の黒嘉嘉七段(台湾)が、仲邑菫新初段と週刊碁誌上企画の新初段シリーズ対局します!
いやはや、週刊碁も斬新な手を放ってきたものですね。
もっとも、既に井山裕太五冠や張栩名人との対局が公開されている以上、他の国内トップ棋士との対局では面白みに欠けるかもしれません。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は週刊碁に連載中の講座、「目算ナビゲーター白石勇一」をご紹介したいと思います。
本当はもっと頻繁にご紹介する予定でしたが、いつの間にかずいぶん間が空いてしまいました。

前回から、今までの内容の総決算として問題に挑戦して頂いています。
前回は9路盤、そして第19回となる今回は13路盤です。



お互いの地を何目と数えますか? という問題ですね。
数えること自体は、時間さえかければどなたにでもできます。
ただ、問題点は・・・。





お互いの地の境界線が、まだ確定していないということです。
この状態で地を数えることは難しいです。
実社会において、家を売りたくても隣の家との境界線が定まっていないと値段が付けられませんよね。
おそらく似たようなものです(笑)。

解決方法としては、お互いが納得できそうなところを想定して頭の中で線を引いてください、ということになります。
そのためのコツをずっとお話ししてきました。
これまでの内容をご理解頂けていれば、必ず正解かそれに近い答えが出るはずです。

対局中に目算する際は、当然碁盤全体を見なければいけません。
しかし、全体を眺めただけで判断できるのは天才かAIだけです。
基本的には、部分を1つ1つしっかり判断することで、その結果全体の状況が分かるのです。
これは目算に限らず、石の強弱などについても同じことが言えますね。

さて、ここまでで読者の皆様は目算がどういうものか、大体ご理解頂けたと思います。
あともう少しだけコツについてお話しした後は、目算を実戦にどう活用するかということをお話ししていくことになります。
かなりの回数を費やしてきましたが、長い目で見ればこれが皆様にとって近道になると確信しています。

棋士紹介第6回・小池芳弘四段

2019年02月12日 00時35分31秒 | 棋士紹介
<本日の一言>
件名「アドレス変更」
本文「再度登録お願いします。」
・・・どちら様でしょうか?
非常にモヤモヤしますが、迷惑メールなのでしょうね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は棋士紹介シリーズの第6回です。

<小池芳弘四段(公式プロフィール)>

平成10年(1998年)7月6日生まれの20歳です。
長年棋士をやっていそうな雰囲気を漂わせていますが、そんなに若かったのですね。

小池四段はTwitterの日本棋院若手棋士アカウントを何度か担当していますが、しばしば本質を突くかのような鋭い発言をします。
将来なかなかの論客になるのではないかと睨んでいるのですが、いかがでしょうか。

さて、小池四段は昨年19連勝という素晴らしい記録を残しました。
年間成績は36勝12敗で、7割5分の勝率は全棋士中3位でした。
好成績の秘訣は、体力があることではないかと思います。
体力と言っても、運動のための体力ではありません。
囲碁の体力です。

棋士の対局は朝10時頃から始まって夕方に終わることが多く、持ち時間の長い碁では夜10時、11時まで長引くこともあります。
また、1局の持ち時間が短くても、同じ日に何局も打ったり、連日対局するような場合もあります。
長丁場の戦いで集中力を持続させられるかどうかは、勝負に大きく影響します。

棋風は典型的なじっくりタイプですね。
勝負が長引くことを全く恐れていないのでしょう。

さて、今回ご紹介するのは2016年8月18日の棋聖戦Cリーグ、片岡聡九段との対局です。
片岡九段も、若い頃からじっくりタイプとして有名でしたね。



1図(実戦)
片岡九段の黒番です。
黒×が弱いですが、白×も心配です。
慌てて攻めかかったりすると、反撃を受けて苦しくなるでしょう。
そこで、実戦は白1~5としっかりつながりました。

この打ち方は当然と言えば当然ですね。
しかし、対局していると色々と雑念が生じ、あらぬ方向に石が行ってしまうこともあります。
その点、小池四段はやるべきことを淡々とこなしていく印象があります。





2図(実戦)
黒1と左辺を広げられましたが、慌てず騒がず白2と守りました。
黒Aなどの手を防いだものですが、実に落ち着いていますね。
無理に左辺に入っていかなくても、十分やれるとみているのです。
若い頃はつい力に頼った無茶をしてしまいがちですが、小池四段はそのようなことには無縁かもしれません。





3図(実戦)
無茶はしませんが、ぎりぎりの踏み込みは決行します。
白△が鋭い手でした。
この後、黒A、白B、黒Cと対応され、怖い感じもありますが・・・。





4図(実戦)
しかし、小池初段(当時)は読みきっていたのでしょうね。
次に黒A、白B、黒Cがありそうですが、白D、黒E、白Fの反撃で右辺黒が危ないということでしょう。
深く読むことで、戦いのリスクを小さくしています。

本局は小池初段の白番半目勝ちでした。