ゲイとしての人生に希望が見出せず、金曜の夜に絶望していた。若い事が何の武器にもならない自分。週末が楽しいなどと思ったことはなかった。
趣味は買い物。消費している間だけ全てを忘れられた。ブランド品に身を包むことが幸せだったあの頃、裸の自分に自信がなかったし、中身の自分にも自信がなかった。だから、より買い物に走った。アルマーニを着たら、アルマーニのモデルのようになれると信じていたから。そんな時に、今のジムと出会い、長年通っていたジムをやめ、本格的なトレーニングを目指した。体を鍛えるという作業に夢中になった。
その頃、真面目な出会いからヤリ目へとシフトしていた事もあって、殺伐とした生活を送っていたのを憶えている。そんな空虚な部分を埋めてくれたのがトレーニングだった。SEXでも埋められなかった心の隙間を、いつも、あのジムが埋めてくれた。終電近くの電車で帰宅してすぐジャージにマウンテンバイクでジムに向かっていく自分に、少し笑ってしまったほど。
「いつの間にオレは、こんなトレーニング馬鹿になってしまったんだろう。」
あれから3年、体は確実に変わった。微笑みかけてくれる男も、会いたいと誘ってくれる男も、変わった。一番変わったのは、オレ自身かもしれない。「満たされない」と思っていた自分から、「心が満たされていく」自分に。