「一緒に帰るか?」
Facebookで検索したものの、結局先輩を見つけることはできなかった。Instagramでも同じだった。オレが新入社員の時に25才だったあの男性は今どこで何をしているのだろうか。
「ちょっと待ってて、パン買ってくるわ」
野球をずっとしてきたと話してくれた。背が高くてマッチョでイケメンで、そして優しかった。ガムをくれたりコーヒーを買ってくれたり、電車を待つ間ホームで一緒に食べようとパンを買ってくれたこともあった。好きだった。苦しいほどに好きだった。だから諦めた。告白などして彼に迷惑をかける訳にはいかない。精一杯の愛だった。いや、まだゲイだと自認もしていなかった時期だから、何をしていいか分からず単に何もしなかったというのが答えかもしれない。好きだった。だけど諦めた。そしてゲイとして歩き始めることにした。先輩と同じくらいカッコいい相手を見つけることが自分にとっての幸せだと思うしかなかった。だから、全てはこの時に始まったと言えた。
「コーヒ飲むか?」
それからは体を鍛えてマッチョになって、SEXをしまくって、そして恋愛もいくつも経験した。振り返ればどれも闇に輝くブラックライトのような妖しくも美しい思い出ばかりだが、それがあっての今なのだろう。あの頃の1つでもなかったら今の生活には辿り着けなかったと思うほどに、危うい道を歩き続けて1つの成功を手にしたと思う。手を伸ばしても決して届かなかった美しい月。それを諦めたのが23才の時だとしたら、その後の人生はその代替物を探し求める旅だったように思う。月、いやノンケのイケメンなど決しては自分は望んではならないものなのだ。それを知った23才からの人生も思ったほどは悪くはなかった。イケメンと呼ばれる層は実際にはピラミッドの第2階層に位置している。本物のいい男というのはその上に座しているものだ。地上に降りてくることはない。こちらに微笑むこともない。その男たちを自分は「月」と呼んだ。
「今度の休みドライブに連れてってやるよ、客先周りともいうけどw」
先日、仕事である男性と知り合った。完全な仕事だったが多少話す機会はあった。なぜか初日から気が合い、話が弾んだ。聞けば25才でずっと野球をしてきたと話してくれた。あまりそういう目で見ていなかったが、よく見ると精悍な好青年だった。
「一緒にい過ぎかな?」
先輩とは背丈も違うし顔も似ていなかった。強いて言えばマッチョで黒く焼けているところぐらいだったが、話していくうちにもう1つ共通点を見つけた。優しいところだ。女にモテるのは間違いないが、男とのどうでもいい約束をきちんと守るのだ。帰りも見送ってくれて、ちゃんと着いたか連絡もくれた。全然似ていないのに、あの頃に戻って先輩といる気がした。ただ違うのは、オレが好きにならなかったところかもしれない。
Facebookで検索したものの、結局先輩を見つけることはできなかった。Instagramでも同じだった。オレが新入社員の時に25才だったあの男性は今どこで何をしているのだろうか。
「ちょっと待ってて、パン買ってくるわ」
野球をずっとしてきたと話してくれた。背が高くてマッチョでイケメンで、そして優しかった。ガムをくれたりコーヒーを買ってくれたり、電車を待つ間ホームで一緒に食べようとパンを買ってくれたこともあった。好きだった。苦しいほどに好きだった。だから諦めた。告白などして彼に迷惑をかける訳にはいかない。精一杯の愛だった。いや、まだゲイだと自認もしていなかった時期だから、何をしていいか分からず単に何もしなかったというのが答えかもしれない。好きだった。だけど諦めた。そしてゲイとして歩き始めることにした。先輩と同じくらいカッコいい相手を見つけることが自分にとっての幸せだと思うしかなかった。だから、全てはこの時に始まったと言えた。
「コーヒ飲むか?」
それからは体を鍛えてマッチョになって、SEXをしまくって、そして恋愛もいくつも経験した。振り返ればどれも闇に輝くブラックライトのような妖しくも美しい思い出ばかりだが、それがあっての今なのだろう。あの頃の1つでもなかったら今の生活には辿り着けなかったと思うほどに、危うい道を歩き続けて1つの成功を手にしたと思う。手を伸ばしても決して届かなかった美しい月。それを諦めたのが23才の時だとしたら、その後の人生はその代替物を探し求める旅だったように思う。月、いやノンケのイケメンなど決しては自分は望んではならないものなのだ。それを知った23才からの人生も思ったほどは悪くはなかった。イケメンと呼ばれる層は実際にはピラミッドの第2階層に位置している。本物のいい男というのはその上に座しているものだ。地上に降りてくることはない。こちらに微笑むこともない。その男たちを自分は「月」と呼んだ。
「今度の休みドライブに連れてってやるよ、客先周りともいうけどw」
先日、仕事である男性と知り合った。完全な仕事だったが多少話す機会はあった。なぜか初日から気が合い、話が弾んだ。聞けば25才でずっと野球をしてきたと話してくれた。あまりそういう目で見ていなかったが、よく見ると精悍な好青年だった。
「一緒にい過ぎかな?」
先輩とは背丈も違うし顔も似ていなかった。強いて言えばマッチョで黒く焼けているところぐらいだったが、話していくうちにもう1つ共通点を見つけた。優しいところだ。女にモテるのは間違いないが、男とのどうでもいい約束をきちんと守るのだ。帰りも見送ってくれて、ちゃんと着いたか連絡もくれた。全然似ていないのに、あの頃に戻って先輩といる気がした。ただ違うのは、オレが好きにならなかったところかもしれない。