室内楽の愉しみ

ピアニストで作曲・編曲家の中山育美の音楽活動&ジャンルを超えた音楽フォーラム

隆三さんの想い出

2014-06-10 00:55:18 | 日記
林隆三さんがお亡くなりになった。

5月28日にライヴをなさって、翌日倒れられたそうだ。そして入院後、日に日に具合が悪くなり、一週間で逝かれたそうだ。とても残念だ。信じられない。


   


隆三さんのご一家が辻堂にお住まいだった頃、毎週出稽古に伺っていた。

桐朋を卒業した時に、学校から「林隆三さんのお宅で、ピアノの先生を捜している」と偶々私に電話があったのだ。

4歳になったばかりの長女・真里花ちゃんに「先生、先生はおとな?こども?」と聞かれて答えられず、

「どっちだと思う?」「わかんない・・」「そう、ワタシも分からないの」



そんなスタートから、後に長男・征生ちゃん、母親の一子さんもレッスンするようになった。

隆三さんは、とても子煩悩で、仕事でお留守の時以外は、レッスン後必ず出てらして、色んなお話をして下さった。

俳優座養成所時代の特徴的な授業の話。「自分で個性だと思っているのは、只のクセであって、先ずはクセを取ることからやらなくてはいけない、と云われて、ひたすら歩かされたりしたんですよ」

プライベートな8ミリ映像を見せて下さったり、私ひとり観客の前で、ミュージカルのシーンを演じて見せて下さったり、お得意のピアノ弾き語りを見せて下さったり、というのも忘れられない想い出だ。

大学を卒業したての、まだまだこれから自分を構築しなければならない私に、芸術、エンターテイメント、プロフェッショナルな表現者の大先輩として、贅沢な時間をプレゼントしてくださった。それは私にとって、光り輝く一生の宝になる、とその時も思い、今も感じている。


真里花ちゃんが中学受験を機にレッスンは停止となり、ちょうどその頃、辻堂から越されたが、その後もご一家との交流は続いて来た。真里花ちゃんは桐朋学園の演劇科に進み、その後『劇団円』に入団。征生ちゃんは『青年座』に。真里花ちゃんの舞台を観に行くと、そこに隆三さんの姿があった。パパとしては歓びと不安とが綯い交ぜのドキドキだったことだろう。真里花ちゃんがピアノ教師役で、トロイメライを真っ暗な中で生演奏する舞台もあったなー。「私、《ピアノを弾ける女優》という事でやってるんですよ。征生も先生のお陰で音楽できるから、DJやってるんですよ」なんて言ってもらったりして。


写真は、真里花ちゃんの結婚式の時。ご一家に出会う前から、私は林隆三という俳優さんが大好きだったが、ミーハーな感覚でのお付き合いではないので、それまで写真を一緒に撮って頂いたことは一度もなかった。それで、この時ばかりは、私からお願いしてツーショットを撮らせて頂いた。


「ドラマやCMやらやるけど、僕自身は、ずっと舞台俳優のつもりでやっているんです」

自由で、野武士を思わせる剛胆さ、真っ直ぐな潔癖さ、超かっこいい隆三さん。

まさか古稀で人生を終えるなんて、残念すぎます。そしてかっこ良すぎます。



ご冥福をお祈り致します。