因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

若手演出家コンクール2010最終審査 平塚直隆『続・トラックメロウ』

2011-03-04 | 舞台

*平塚直隆(オイスターズ)作・演出 公式サイトはこちら 下北沢「劇」小劇場 6日まで
 名古屋を中心に活動する劇団で、今回が初見となった。
 作・演出の平塚直隆氏は、第16回劇作家協会新人戯曲賞最優秀賞を受賞しており、その作品『トラックメロウ』に続く作品が、今回の『続・トラックメロウ』。自分は前者を読んでおらず、続編を先にみることになったわけである。

 舞台には平台が置かれているだけで、ほかには何もない。前作『トラックメロウ』で心に傷を負ってしまった兄が妹と暮らす家らしいのだが、そこで兄は軽トラックの運転をしはじめる。傍目には運転のまねごとを大真面目にしていて、兄を案ずる妹は、よく通う「スタバ」の店員さんに助けを求める。心病む人に家族や知り合いが手を焼きつつ、彼の言動に巻き込まれていかざるを得ない状況・・・ということなのだろうか。

 名古屋弁の掛け合いがおもしろく、俳優も個性的である。暴走する兄、しかし実際には自宅の居間にいるのだから何も心配ないといえばそうなのだけれども、テンポがいいような緩いような独特の間合いで進行する舞台に引き込まれながら、だんだん集中できなくなってきた。結論がみえないおもしろさはあるのだが、登場人物たちのやりとりが次第に凡庸に感じられ始めたからではないか。心を病みながら大真面目に軽トラックを運転のまねごとをする兄、現実に気づかせようとする妹、妹を助けにきたはずが、兄の助手席に乗ってしまうスタバの店員、料金所の係員や警官たちのゆるいドタバタがゆるいまま終わってしまった感じだ。前作をみていればもっと違う感想をもったのかもしれないが、設定の奇抜さ、俳優の個性を、戯曲が受け切れていない印象が残る。
 上演時間はおよそ40分であった。短すぎるということはないと思う。言い換えれば1時間にすれば客席にじゅうぶん伝わるものになったかどうかはわからない。台詞を吟味し、ぎりぎりまで削ぎ落とし、もっと凝縮した濃密な劇空間を構築できる劇作家であり、負荷の多い作品に答える力をもった俳優さんたちであると思う。第3夜終了。

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