因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

らくだ工務店第15回公演『めぐみのいろは』

2008-09-14 | 舞台
*石曽根有也作・演出 公式サイトはこちら 新宿シアタートップス 15日まで
 今回で3度めのらくだ工務店(1 2回めは記事書けず)、劇団員と常連の客演陣に麻乃佳世を迎えての新作は、ある町の消防団の詰め所が舞台である。

☆この記事を今夜中に掲載できるかわかりませんが、千秋楽は明日です。このあたりからご注意くださいませ☆

「火災とは無縁だった町にやってくる女と 火の粉を消せない男たちの滑稽な日々 ある消防団に不意に訪れる山と谷」公演チラシに記載されたコピーを読むと、竹中直人監督の『119』が思い浮かぶ。しかし舞台の町は同一犯人によると思われる小火が頻発している。住んでいたアパートを焼かれた団員もいて、おなじみのメンバーによる軽妙なやりとりの中に、「身内の仕業では?」という疑惑が浮かび上がる。

 林和義が団長さん、中堅どころが工藤潤矢に、佐藤拓之。謎めいてわけあり風の兄貴分が古川悦史、そして毎回どうしようもないおバカさんの甘ちゃんが今村裕次郎という、ほとんど不動の配役である。団員たちのやりとりはテンポよく、客席を大いに笑わせる。このおもしろさが「らくだ工務店」のウリであり、公演に行くたびに「さぁ今日も笑うぞ。楽しませてくださいよ」とわくわくする。その願いはたいてい叶えられるのだが、ではそこから先は?

 団員の背景はそれぞれ結構複雑で重たい。突然消防団にやってきた美女の過去が語られる場面もあるが、麻乃佳世と古川悦史の会話は互いに顔を合わせないこともあって、もう少し事情があるように思われた。それらを全部知りたいわけではないが、1時間30分の上演で描ききれていない(いや、敢えて描いていないのか)ものがあるように思えてならない。俳優の個性と役柄の性格をここまで的確に掴んで、こんなにもイキのいい会話を書き出せる筆なら、あともう数歩先へ、それも別の方向へ物語を進め、掘り下げることができるのではないか。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« クロカミショウネン18『祝/... | トップ | 劇団印象『枕闇』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

舞台」カテゴリの最新記事