因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

とくお組第9回公演『TOWER OF LOVE』

2007-03-03 | 舞台
*徳尾浩司脚本・演出 渋谷LE DÉCO 5F 公式サイトはこちら 公演は4日まで
 先月から2度めのルデコ。前回は女性ばかりのお芝居で(石神井童貞少年團)、今日はその反対。狭い通路から劇場に入るとバーカウンターと椅子が数脚、床に横たわっている俳優がいる。客席が三方から取り囲む形になっており、少し迷ったがカウンターが正面に見える席についた。ここはタイトルの通り「TOWER OF LOVE」という名のビルで、途中のさまざまな試練を乗り越えて最上階3400階にたどり着いた男だけが、そこにいる美しい女性と結ばれるのだそう。最上階の一歩手前がこのバーであり、登場する6人の男たちはレース?の最終ステージに残ったものたちなのである。どんなテストが待っているかと思いきや、主催者?のラ・ジェントルマン(徳尾浩司)は「皆さんに争ってほしくないのです」とか言い残して姿を消す。男たちは部屋にあるジェンガに目を留め、それぞれが自分の魅力をアピールして評価をし、×ならジェンガを引いて(という表現で正しい?)塔が倒れたらリタイアと決める。

 多くの難問と試練を乗り越えた強く賢い者が、美しい姫と結婚できる・・・何やらおとぎ話を連想させるが、最終審査に残った6人はずるかったり弱かったり、あまり頭がよくなかったりおたく風だったり、「選ばれた者」らしい雰囲気がしない。自分をアピールしながら、次第にこれまでの恋愛歴や失恋話になってしまうのだが、そのうちこの6人が不思議な(ある意味単純な)つながりがあることがわかってくるプロセスがとてもおもしろい。俳優ひとりひとりの特徴が人物の造形によく活かされており、登場人物が生き生きしていることで、現実にはありそうにない話が妙な現実味をもって迫ってくるのである。

 恋は、たとえ恋敵がいる場合でも人と競ってゲットするものでもなく、比較して選ぶものでもないと思う。男性の失恋話など、実際に延々と聞かされたらたまらないが、今回は申し訳ないがたくさん笑ってしまった。ありえない設定にありそうなエピソードをうまく絡み合わせることで、「その気持ちわかる!」という共感にもっていく、作者の手腕であろう。小さな空間なので演技のごまかしはきかない。誰かのひとことで場の空気がさーっと変わるところ、台詞のほんのちょっとの間合いなど、台詞が練られ、よく稽古がはいっていることを感じさせる。各人のエピソードが出そろい、混乱を極めてさあどうなるか?!と前のめりになったところで、最後は拍子抜けしてしまった。どうまとめるかは難しい話である。でもたとえば日替わりで結末がかわるなんて、それこそありえないだろうし。

 今日は雛祭りだった。女の子のお祭りの日に、男ばかりのお芝居をみる。今日はわたしにとって「とくお組の日」になった。

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