因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

モダンスイマーズ『凡骨タウン』

2010-02-12 | 舞台

*蓬莱竜太作・演出 公式サイトはこちら 東京芸術劇場小ホール1 21日まで
 このところ評価がうなぎのぼりで、旺盛な創作活動している蓬莱竜太の新作である。蓬莱の舞台は2007年4月に『回転する夜』をみたのが初めてで、これはどういうわけかブログに書かず、スルーしております。その後外部書き下ろし作品としてこちらを1本(1)。本作の前篇にあたる2008年上演の『夜光ホテル』は未見。

 場所や時間軸が前後交錯する作りは珍しくない。うっかりすると、それすら「お約束事」に陥る場合もある。客席にわかりやすく親切な作りはありがたい半面、すぐ飽きて続きが読めてしまう。今回の交錯ぶりはいささか手が込んでいて、容易に把握できない。12日朝日新聞に劇評が掲載されており、それを読んで「復習」を試みたりもしたのだが、その方法も違うようだし、さらにまだまだ上演が続くのに、ここまで内容が書かれていて大丈夫なのかなと思ったり。

 萩原聖人、千葉哲也、辰巳智秋、佐古真弓、緒川たまきと、実力も実績も重量級の男優に、才色兼備の女優。素晴らしく充実した客演陣である。劇団メンバー4人もまったく負けておらず、火花を散らすごとくにぶつかりあう。蓬莱竜太の勢いが劇団ぜんたいの力になっていることが伝わってくる。特に暗黒街のボス的存在を演じる千葉哲也の迫力は大変なものだ。萩原聖人はその千葉の長台詞をほとんど動かずに聞き続ける場面が多い。辛抱が必要なむずかしい役どころをよくがんばったと思う。

 俳優陣に圧倒されながらも、やはりぜんたいの話や何を言おうとしているのかがわからずに困惑したまま終わってしまったというのが正直な気持ちである。時空間が交錯するなかで、物語の骨格を客席にしっかり届けたいのか、グレーゾーンを残したままにしたいのか。結末が曖昧だったり、客席に謎を与えて終わる舞台も悪くないが、その余韻を味わうほど甘い内容でもなく、終演後同道の友人との会話もいまひとつ弾まず、しかしこれをきっかけに、もう少し蓬莱竜太の舞台を見続けたいという気持ちは明確になった。まずはこれを収穫としよう。

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