因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

ポかリン記憶舎『短い声で』

2005-07-09 | 舞台

*ポかリン記憶舎公演 明神慈作・演出 東京デザインセンター ガレリアホール
 少し無理をしてこの日二本めの観劇。五反田の東京デザインセンターは初めて足を運ぶ場所だ。今回のような演劇の公演ができるフリースペースもあり、食器や家具などさまざまな展示があるらしい。日曜なのでしんと静まりかえっている。
 おなじみ和服美女の案内で、入り口から奥まったところにあるエレベーターで地下に降りる。ぜんたいに白っぽい色彩の建物だが無機質ではなく、ほんのりと温かみの感じられる不思議な空間である。
 横に長い舞台には波を象ったような大きなオブジェが置かれている。美術館の展示スペースとして使われている場所がそのまま舞台空間になっているところがおもしろい。
 個展開催直前になって作者が交通事故に遭い、意識不明の重体になった。彼の仕事のパートナーや助手たち、マスコミや元恋人、母親など彼に関わる人々によって物語が紡がれていく。
 大仰な演技も演出もなく、静かな会話のなかでものを作ることに携わる人々の思いが静かに伝わってくる。
 だが母親が登場したあたりからいささか平凡な印象に。90分のテレビドラマ、秋に放送される芸術祭参加作品のようにまとまってしまったのが少し残念である。
 上品なキワモノを期待した身には少々物足りなかった。
 ポかリン記憶舎の舞台をみる前と後で、自分がまとっている空気が変わっている感覚はどうにも忘れがたく、「もう一度味わいたい」と思ってしまうのである。(6月5日観劇)
 



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