*立川雄三作 原田一樹演出(劇団キンダースペース) 公式サイトはこちら 両国シアターχ 28日まで
知り合いのご紹介で劇団初見となった。子どもが多いかと予想したが年配の観客が多く、劇団創立45周年の重みは客席にも現れている。昼間子どもへの虐待の連鎖を描いた作品、夜は「子どもたちだけの芝居ではありません」と銘打ったミュージカルである。どちらも子どもと大人の心模様を描いたものだが、手つきはまったく異なる。どちらにも需要があって劇作家の必然があり、舞台が成り立つのである。
主役の「テコ」は小学5年生くらいの少女で、演じる女優さんは子どものような大人のような不思議な印象の人である。そのほかは間違いなく成人の俳優さんだ。大人が子どもを演じている不自然さはどうしてもあって、それをみるのは何とも居心地が悪く、気恥ずかしいのであった。
もう長いことみていないが、自分は演劇集団円の「こどもステージ」が大変好きである。また山崎清介による「子どものためのシェイクスピア」もできれば毎年ゆきたい。それはこの両方とも子どもに向けて作られた舞台でありながら、手抜きや手加減をいっさいせず、難しい言葉や概念も敢えてわかりやすく言い変えたり省略しないことに、大人もまた手ごたえを得て、楽しんでいる子どもの様子にいよいよ幸せが増す。退屈したり困惑したりする子もあるだろう。しかし今すぐこの舞台がわからなくても落胆することはない。その子の心に今日の舞台の何かが残り、いつの日か芽吹くことを秘かに祈ろう。そんな気持ちにさせられるからである。
今夜の舞台に手抜きや手加減や省略があったということではなくて、決してそういうことではなく、むしろ歌もダンスも入念に稽古を重ね、子どもたちに喜んでほしい、子どもたちの未来が明るく笑顔が多いことをひたすらに祈り願うものであることは確かだ。信じて願って45年、演劇活動を続けてこられたことは壮挙であり、敬意を表する。しかし劇団を支えてきた需要と、自分の演劇的需要とは残念ながら接点がみつけにくいということだ。
この記事が説得力と意義をもつためには、どこにどのように接点がないか、どうすれば接点が見いだせるかを論考しなければならないのだが、本日ただいまはここで筆を納めることをご容赦願いたい。
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