*ウィリアム・シェイクスピア原作 安田雅弘構成・演出 公式サイトはこちら 東京芸術劇場シアターウエスト 28日で終了
今年結成30周年を迎える劇団の公演を、今回がやっと初見となった。この夏上演された蜷川幸雄演出のオールメール(男性俳優のみで演じる)版は未見で、松岡和子による新訳の戯曲を読んだのみである。恋愛が絡んだ悲劇、抗争劇というのだろうか、戯曲はわりあいすぐに読めたが作品の核がいまひとつはっきりつかめない。劇場空間に立体化したものを早くみたくなった。
ひとりの美女をめぐる大戦争を描いた本作を、構成・演出の安田雅弘は、人類がすでに滅亡したあとの廃墟に住みついた犬とカラスが争う趣向で描いた。ギリシャ側がカラスで、トロイ側が犬である。それぞれ黒と紫の衣装に羽飾り、毛皮を使った扮装で、からだの動きも鳥や獣を摸しており、ビジュアルとしては大変わかりやすく、手の込んだつくりである。
人物の擬人化やさまざまに趣向を凝らしてあるところは興味深くみることができた。自分が違和感をもったのは俳優の演技、とくに台詞の言い方である。演劇の形式は山の手事情社が独自に作り上げたメソッドとのことだ。たとえば鈴木忠志によるSCOTや、三条会の舞台に感じる違和感に似ており、体質的に相性がよくないと言ってしまえばそれまでなのだが、90分に凝縮された舞台を楽しむに至らなかったことは残念であった。
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