因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

因幡屋通信34号完成

2010-01-17 | お知らせ

 おかげさまで因幡屋通信34号とえびす組劇場見聞録33号が完成し、設置先各劇場に発送いたしました。因幡屋はブルー、えびす組はピンクです。劇場ロビーのチラシラックでお見かけになりましたら、是非お手に取ってくださいませ!お題は以下の通りです。

*働く喜びを、今~ミナモザ公演 瀬戸山美咲作・演出『エモーショナルレイバー』&ホリプロ・こまつ座公演 井上ひさし作 栗山民也演出 小曽根真音楽『組曲虐殺』
*二本立ての功罪 東京乾電池11月月末劇場 加藤一浩作『雷鳴』&別役実作『眠っちゃいけない子守歌』

 えびす組見聞録33号
*いつか歓喜の歌を 第18回グリング活動休止公演『jam』
 こちらはマーガレット嬢と題材が重なりました。グリングの活動休止を惜しみ、再開を楽しみに待つ点では変わりなく、しかし舞台のどこにこだわったかは異なっていて、それをお楽しみいただければと思います。

 阪神大震災から15年がたった。神戸には大学時代からの大切な友達がいて、無事であることがわかったときには涙が出るほど嬉しかった。1月に震災が起き、2ヶ月後に地下鉄サリン事件が起きた。前者は抗いがたい自然現象に人間がなすすべもないことを思い知らされ、後者は自らを過信した人間が信じがたい暴走をするさまに呆然とした。

 そのどちらにも自分は直接関わることがなかった。いろいろ考えたけれども何もしなかった。
 いま同じようなことが起こったら、果たして自分は耐え抜いていけるだろうか。無事で過ごせるのは実に幸せなことで、もっともっと感謝したいが、年々アクシデントに対する耐久力が落ちているのではないかと思うのである。

 99年2月2日朝日新聞掲載の「一語一会」の記事を今でもときおり読み返す。
 作家の小林恭二が悩み多い少年時代、父上から教わった言葉について書かれた短い文章である。「明日のことを思い煩ふな。明日は明日みづから思い煩はん。1日の苦労は1日にて足れり」。マタイによる福音書第6章34節である。いかめしい文語体であるが、「思い悩むな」というあっさりした最近の訳よりもずっしりと心に響く。小林の父上は「人生は苦しみに満ちている。1日生きるということは、それだけで大変なことなのだ、だから明日のことまで心配する必要はない。明日のことは明日悩めばよい。今日の苦しみは今日十分味わったのだから」と解説してくれたのだそうだ。成長した息子は戦争の直撃を受けた父の人生を振り返り、「父にとってこの言葉は楽天的というより、悲観の極致でみつけた知恵の光だったに違いない」と綴る。
 

 いったい何を書きたいのかわからなくなりました(笑)。自分はこの世に人生を与えられ、演劇という宝を与えられただけでなく、その宝の素晴らしさを表現する方法として、小さいながら通信とブログを続けることができています。それは自分だけの力ではなく、多くの人に支えられ励まされているからこそ。1月17日はそのことを改めて心に覚える日にしたいと思います。

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