因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

二月花形歌舞伎第一部『於染久松色読販』

2011-02-12 | 舞台

*第一部 鶴屋南北作 猿之助四十八撰の内『於染久松色読販 お染の七役』 公式サイトはこちら ル テアトル銀座 25日まで
 友人がチケットを取ってくれた。うしろから二列目の席だったが、客席の傾斜があるので舞台も思いのほか身近である。感謝感謝。坂東玉三郎特別公演から一か月足らずだが、場内にはもうすっかり歌舞伎公演の空気が満ちていて、居心地がよい。

 外題は「おそめひさまつうきなのよみうり」と読む。主要人物七役を早替わりで演じる趣向が売り物の作品である。数年前の歌舞伎座公演で坂東玉三郎の舞台をみたことがあるが、とにかく早替わりが信じられないくらいものすごく(ああ何て単純な表現!)、一瞬にして衣装もかつらも化粧も別人になるのである。引田天功もかくやと思うほどのスーパーマジック。役が替わるたびに「すごいなぁ、どうやってるんだろうなぁ、大したもんだなぁ」と感嘆の声をあげるおじさま客がいらして、上演中のおしゃべりは本来ならNGだけれども、このときばかりは自分が言いたいことをこんなにも素直に溢れんばかりの驚きと喜びをもって表現してくださることがありがたかった。こういう方とご一緒できると、観劇の楽しさが倍増する。楽しかったなぁ。

 さて今回七役に挑戦するのは市川亀治郎である。才気煥発とはこういう人のことを言うのだろうな。自信に溢れて力強く美しく、安心してみていられる。そのぶん、いい意味での不安や緊張がなくて、もしこれが中村勘太郎や七之助であれば、「どうかうまくいきますように」と手に汗握って前のめりになっただろう・・・とこれは自分が陥りがちな、いつものないものねだりと苦笑する。

 友人と別れてから隣のINAXギャラリーに寄り、松浦武四郎の一畳敷展と松井亜希子の銅版画展をみる。ほんのり熱が冷めていく心地よさ。

 

 

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