*文化庁委託事業「2019年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」日本の演劇人を育てるプロジェクト 新進演劇人育成公演俳優部門。
唐十郎作 小林七緒演出 スズキ拓朗振付 流山児祥プロデュース 公式サイトはこちら space早稲田 18日まで
昨年の『腰巻お仙 振袖火事の巻』に続いて、今年の師走もspace早稲田の小さな空間は、次々に訪れる観客で通路までいっぱいの盛況である。
本作は新宿梁山泊公演を観劇したことがあり、はじめのうちはそのときの印象や記憶をたどりながらであったが、いつのまにか頭のなかのもろもろが飛び去り、目の前の舞台の熱量に圧倒され、怒涛の勢いに呑み込まれていった。テンポが速いが、要所要所(要所だらけなのだが)を確実に押さえながらの進行なのでメリハリがあり、気持ちのよい舞台だ。
本プロジェクトの観劇はこれで2度目であり、流山児★事務所の公演にもまだ馴染めないものの、space早稲田での唐十郎作品における、自分なりのおなじみの顔が次第に明確になりつつある。山丸莉菜は見るたびにヒロインとして魅力が増し、自分にとって井村タカオはまだオペラシアターこんにゃく座のイメージが強いのだが、時折美声を朗々と聞かせながらも、唐十郎の劇世界に殴り込みをかけるような勢いがある。劇団鵺的公演でのシニカルな役柄が記憶に新しい祁答院雄貴も、同じ人とは思えない造形を見せたりなど、俳優それぞれが戯曲に立ち向かうさまが嬉しい。大久保鷹は相変わらず健在であるし、個人的には看護婦・フランケの助手役の江口翔平(劇団Studio Life)が、異形の役柄であるのに観客を自然に納得させてしまう説得力があり、「次はどの役で?」と新たな楽しみになっている。
ガラスの子宮を持つ少女、虚構と現実が錯綜する舞台。目の前の俳優と客席の自分はまぎれもない今、ここにいる現実。けれど2時間足らずのあいだにあとかたもなく消えてしまう。凄まじい熱気に包まれたあとの儚さと淋しさもまた、唐十郎作品の魅力であることを改めて実感した一夜であった。
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