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同作品観劇の過去記録→新宿梁山第62回公演(2018年3月)、2019年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業(2019年12月)、唐組 第66回公演(2021年1月)∔因幡屋通信68号、新宿梁山泊第74回公演テント版(2023年6月)
10月12日から15日まで第75回公演『失われた歴史を探して』(金義卿作 金守珍演出)を、そして同じザ・スズナリで17日から19日まで第76回公演として『少女都市からの呼び声』が連続上演された。しかも後者は18日に3回、19日に2回公演を行うという大変なスケジュールである。そこは文字通り若衆公演の強みであろうか。田口役の柴野航輝、雪子役の矢内有紗、有沢役の二條正士、ビン子役の本間美彩の複雑な関係性と移ろいがよりくっきりと伝わってきた。
ただやはり冒頭から全編に渡ってさまざまな趣向が凝らされており、盛りだくさんで「足し算」の多い演出は、舞台が熱く賑やかになるほど、観る方は冷めて引いてしまうところも少なくなかった。超絶技巧のダンス、出とちりすら芸にしてしまう大久保鷹と金守珍の老人二人のやりとりなど、客席も大いに沸く。しかし一方でほとんど受け止めることを拒むかのように固まっている席もあり、足し算も引き算もしない、戯曲そのものを観たい、聴きたいと思うのである。
公演チラシに掲載された唐十郎の言葉を改めて読み返す。2010年のソウル公演パンフレットへの寄稿とのことだ。「この作品は、存在するものと、しないもの、つまり現実と非現実の融合の物語です」。目の前で生身の俳優たちが繰り広げる田口の夢の中の物語。客席の自分は雪子を確かに見たのに、田口は覚えていないと言う。田口の現実と客席が体験した非現実が溶け合い、ガラスのように壊れる。何が現実で、何が非現実なのか。田口の台詞「ここは無い世界だ」を反芻しながら、軽い夢遊病のようにおぼつかない足取りで帰路に着いた。
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