因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

『DUMB SHOW ダム・ショー』

2006-09-11 | 舞台
シーエイティプロデュース ジョー・ペンホール作 常田景子訳 鈴木勝秀演出 シアタートラム
 結局どういう話だったのか、みている最中もわからず、いまだにわからない。一昨年春にみた、同じペンホールの『ささやく声』(MODE公演 松本修演出)では、舞台に引き込まれる感覚が確かにあったのだが、今回はそう実感できる場面がまったくといっていいほどなかった。これはある意味すごいのでは。

 理由として、俳優になぜあのような演技をさせるのか、意味や意図がわからなかったことにあるだろう。
 ロンドンのホテルの一室が舞台である。銀行員のリズ(浅野温子)とグレッグ(鈴木浩介)が、人気コメディアンのバリー(浅野和之)に、高額ギャラのトークショーを依頼している。二人がバリーをちやほやする様子があまりに嘘くさいし、どう見ても銀行員には見えないことにまず違和感を持つ。二人が実はタブロイド紙の記者であり、ゴシップを狙ってバリーを誘導尋問していることが明かされるのだが、冒頭の演技が必要以上に大仰なので、あまりびっくりできない。暴く側と暴く側の攻防がスリリングなはずなのだが、どういうわけか台詞の意味がつかめない。なぜこの人はこんな大声を出すのか、これほど顔色を変えるのか。

 外国の言葉が日本語に翻訳され、俳優の声とからだを通して客席に伝わる。客席にきちんと伝わるための、何かが欠けている、あるいは違っているのではないか。自分は中央最前列で観劇したにも関わらず、舞台から強いものが伝わってくるとは思えなかったし、客席の雰囲気もひんやりしたものであった。来日したペンホールを迎えて急遽企画されたポストパフォーマンストークの客席がいささか寂しい入りだったことは象徴的である。この舞台についてもっと知りたいという意欲が掻き立てられなかったからであろう。

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