日本も、何とかしないといけません。
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違法野焼き、深刻な煙害 インドネシア、呼吸器障害も
朝日新聞 2015年11月8日18時21分
インドネシアで野焼きから火災に発展した煙害が、異常気象による大気の乾燥のせいで深刻化している。一部の地域で降るようになった雨が消火を助けているものの、完全鎮火のメドは立っていない。焼失面積は東京都の約9倍。温室効果ガスの排出量はドイツの1年分に匹敵するとの試算もあり、国際社会も見過ごせなくなってきた。
スマトラ島南部パレンバンの北東100キロ、アイルスギハン地区の上空を白く濃い煙が覆う。パルプ原料となる木々が植わる、プランテーション(大規模農園)の森林火災だ。
記者は10月中旬、国家災害対策庁(BNPB)の消火ヘリに同乗した。熱風と白煙が機内に入り込む。ぶら下げた巨大バケツで用水路から約4千リットルの水をくみ、火災地点に投下する。だが、火の勢いが弱まる気配はない。地上ではショベルカー4台が土を掘り、延焼を防いでいた。
BNPBが10月20日時点で衛星画像をもとに確認した火災は、スマトラ島、カリマンタン(ボルネオ島)で3226地点。焼失面積は東京都の9倍に相当する200万ヘクタールに及んだ。
火災の原因は違法な野焼きだ。パーム油の原料となるアブラヤシなどの農地にするため、農家が無計画に木々や畑などに火を放つ。アブラヤシなどの大規模農園が増えるようになった1990年代後半から、火災は毎年起きている。
今年は異常気象をもたらす「エルニーニョ」のためインドネシア付近の海水温が上がらず、雲もあまり発生しないため大気が乾燥し、延焼規模が過去10年で最悪水準に拡大。10月下旬から一部で雨が降り始め、火災地点の数は減ったものの、例年11月に始まる雨期の本格化は大幅に遅れるとみられており、鎮圧の見通しはたっていない。
深刻な大気汚染で、インドネシアでは52万人が呼吸器障害を発症し、少なくとも24人が死亡した。飛行機の欠航や学校の休校も相次ぐ。
パレンバン空港に近い小学校では、多くの児童がマスクをして授業を受けていた。3年生の担任ディナ・マリアナさん(26)は「市役所が2カ月前からマスク配布を始めた。お陰で欠席者は目立たなくなったが今後も心配だ」と話す。
パレンバン市の作業員ムハンマド・バクリさん(31)は「1歳半の娘が外出先で急に呼吸困難に陥り、亡くなった」と話した。お悔やみに訪れた市長が「煙害のせいだ」と認め、1千万ルピア(約8万8千円)を手渡したという。
政府はこれまでに1兆2千億ルピア(約106億円)を投じ、兵士2万人と30機以上の航空機やヘリを投入。違法な野焼きをしたとして、国内3業者の事業許可を取り消した。
当初は渋っていた海外からの支援受け入れにも踏み切った。マレーシアやシンガポール、オーストラリアは消火用の航空機を、日本は消火剤と専門家を送った。(パレンバン=古谷祐伸)
■隣国の小中学校も臨時休校
煙害は隣国のシンガポールやマレーシアのほか、一時はタイやフィリピンにも及んだ。
シンガポール政府が公表する大気汚染指数(PSI)は9月中旬から24時間の平均値が「不健康」とされる100を上回る日が増え、マレーシアでは小中学校の臨時休校が相次いだ。
シンガポール国家環境庁は、煙害の原因をつくった疑いがあるとして、農園を運営するインドネシア企業5社を公表。シンガポールで昨年施行された越境煙害法に基づき、「対策を取らなければ法的措置をとる」と異例の警告を出した。
世界8位の森林面積を持つインドネシアの野焼きなどに伴う煙害は、地球規模の環境問題に発展しつつある。
米航空宇宙局(NASA)などは、今年初めから9月下旬までのインドネシアの森林火災による温室効果ガス排出量だけで、ドイツ全体の排出1年分に相当すると試算した。11月末からパリで開かれる国連気候変動会議(COP21)でも煙害が議論されるとみられる。
一方で、世界自然保護基金(WWF)ジャパンの南明紀子さんは「パーム油やパルプ原料の生産国だけでなく、環境破壊の責任は輸入・消費国にもある」と話す。全世界で年6100万トン生産されるパーム油の消費は、インドや中国などが中心だが日本も消費量は少なくない。
財務省の貿易統計によると、日本が昨年輸入したパーム油は約60万トンで過去最高を更新した。約51万8千トンはマレーシアからだが、インドネシアからも約7万8千トン輸入している。パーム油はおもに食用油として使われているほか、洗剤や化粧品など用途は幅広い。
環境や社会に配慮して生産されたパーム油を証明する国際認証(RSPO)を導入する企業も出てきた。WWFなどがつくる国際非営利団体が独自に調査して付与するものだ。だが、インドネシアでRSPO認証を受けたパーム油は全体の1割。WWFの南さんは「日本でも洗剤メーカーなどが導入しているが、パーム油の利用が最も多い食品業界の関心が低い」と嘆く。(シンガポール=都留悦史)
■オランウータン、すみか失い呼吸障害も
野焼きは、絶滅の危機にあるオランウータンにも被害を及ぼしている。
カリマンタン中南部パランカラヤ。10月下旬、小さなおりの中で1頭が横になっていた。野焼きの現場近くで衰弱しているのを住民が見つけた。推定25歳のメスだという。
「栄養を与えているが、どこまで快復するかは分からない」。ボルネオ・オランウータン生存財団(BOSF)の現地責任者デニー・クルニアワンさんが言った。
BOSFはパランカラヤ周辺にいる推定3万頭の保護に携わる。野焼きですみかを失うなどした約470頭を施設で保護するが、多くが煙害で呼吸障害を発症しているという。
オランウータンは密売や森林伐採で頭数を減らし、国際自然保護連合(IUCN)が「絶滅危惧種」に指定した。だが、違法な野焼きでさらなる減少が懸念されている。(パランカラヤ=古谷祐伸)
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インドネシアの火災煙害は、Bloombergの社説「インドネシアの火災は、世界の問題」でも取り上げられ、もはや世界的関心になっています。
http://www.bloombergview.com/articles/2015-11-04/indonesia-s-fires-are-the-world-s-problem
CO2は大量に排出されるは、空気は汚染されるは、世界に与える悪影響は半端ないものです。もはやインドネシアだけの問題ではありません。日本も、この火災を早期に消火するために、できるだけの協力をすべきです。
日本政府の果断な処置を促します。
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