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牧草で育つ「放牧牛」の増加を望む

2016年12月19日 07時25分25秒 | 時事放談: 国内編

「放牧」の普及は、大いに期待します。

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「常識」外の和牛飼育法に注目 赤身ブームで追い風
朝日新聞 2016年12月18日16時03分

 欧米で盛んな「放牧」が、日本でも注目を集めている。和牛は牛舎で輸入穀物を多く与え、肉を霜降りに仕上げる飼い方が国内では「常識」だが、生えている草を食べることで飼料代を抑えられ、耕作放棄地の再生にも役立つ赤身の多い肉も、健康志向を追い風に需要が高まっている。

 ローストビーフにハンバーグ、ソテーに煮込み料理。11月初旬、島根県大田市のレストランに赤身の牛肉を使った料理が並んだ。

 放牧に取り組む研究者らでつくる「日本産肉研究会」の学術集会に出された昼食の特別メニュー。子牛から1年半ほど放牧され、草を食べて育った黒毛和牛の肉で、農研機構西日本農業研究センターと同県を中心に育成する「旨赤(うまあか)ビーフ」だ。

 北海道や関西、九州などから集まった研究者や料理人らは、かむほどに味が出る赤身の肉を楽しみ、おかわりをする姿も見られた。

 数年前まで耕作放棄地だった大田市内の約1・3ヘクタールの土地に牧草の種をまいた。周りを電気柵で囲い、昨年3月、生後10カ月の子牛3頭を放ち、今年9月まで育てた。補助飼料としてワラや牧草、仕上げ時期にはくず米なども与えた。

 今年も10月から4頭を放牧している。日常の管理は見回り程度。牛舎で飼う場合と違い、日々のエサやりや大量の糞尿(ふんにょう)の掃除も不要で、大幅に省力化できる。

 放牧した黒毛和牛は、霜降りではないが、適度に脂肪も入る。生産した肉の一部は、試験的に飲食店にも販売。京都市左京区で肉中心の洋食屋を営む谷本斉さん(29)は、店で「旨赤ビーフ」のステーキを出した。客の反応は良く、「赤身の味わいが持続し、食べやすい肉」と評価する。

 兵庫県香美町の田中一馬さん(38)は、10年ほど前から和牛を夏のスキー場のゲレンデなどに放牧。50頭の繁殖用の雌牛を飼って子牛を出荷する傍ら、初夏から秋にかけて、繁殖の役割を終えた経産牛を6~8カ月間放つ。育てた肉は「放牧敬産牛肉」と呼び、インターネットを通して販売。今年は4頭分を今月下旬から販売する予定。

 「生えている草の種類や肉にする季節で味が変わる。うちの肉は肉らしい味で、がつんとくる」と田中さん。ツイッターやフェイスブック、ブログで牛や日々の作業の様子を発信し、どうやってその牛が育ったかを伝えている。

■消費者の好み、変化

 国内では、1991年の牛肉の輸入自由化以降、輸入肉との差別化のため、穀物を多く与え、より脂肪の多い霜降りの肉をつくることに力が注がれてきた。

 現在、国内に流通する牛肉の6割はアメリカ、オーストラリアなどからの輸入。霜降りの和牛は高級肉となったが、消費者の好みには変化が起きている。

 日本食肉消費総合センターの「食肉に関する意識調査」(15年度)によると、5年前と比べて、牛肉の消費で「赤身肉が増えた」と回答した人は19・6%で、「霜降り肉が増えた」は4・3%。赤身を選ぶ理由は、「価格」「味・食感が好み」「健康・美容によい」が上位となった。

 また、ホットペッパーグルメ外食総研によると、14年の調査(首都圏、関西圏、東海圏対象、有効回答9765件)では、牛肉の脂のある部位が好きな「脂身派」57・6%に対し、「赤身派」は36・1%。5年前と比べて好みが「赤身側に変わった」は28・2%、「脂身側」は3%だった。赤身が好きな理由は「脂が多いと胃もたれする」「赤身の方がヘルシー」「おいしいから」といった回答が多かった。

 生産現場では、輸入穀物価格の高騰で和牛農家の経営が圧迫される一方、稲作農家の高齢化などで耕作放棄地は富山県の面積に匹敵する4200平方キロに増えた。牛が耕作放棄地の草を食べれば飼料コストが削減でき、景観再生、農地保全につながる。

 放牧は持続可能な畜産につながると注目され、大学などでの研究も進む。

 北里大学北海道八雲町の約120ヘクタールの放牧地で、自前の牧草と放牧の自給飼料100%で「北里八雲牛」を育てている。九州大学大分県を拠点に耕作放棄地などでの放牧を研究している。情報通信技術を使った省力化も目指す。「あか牛」が有名な熊本県では、農研機構九州沖縄農業研究センターが放牧技術を研究し、農家への普及を進めている。

 日本産肉研究会副会長の後藤貴文・九州大学大学院准教授は「日本でも消費者の好みに合い、日常的に食べられる牛肉生産に力を入れるべきだ。今は放牧の肉は限定品で値段も高いが、農家に普及すれば安くなる」と力を込める。(西江拓矢)

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 〈牛の放牧〉 国は昨年3月の「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」で、省力化につながる放牧の活用や、適度な脂肪が混じった牛肉の生産の推進を盛り込んだ。肉にまで育てる放牧はまだ少数だが、近年、中山間地では繁殖用の雌牛の放牧が広がり、耕作放棄地の解消にも役立っている。

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牧草だけを食べて育った牛のほうが、穀物を食べさせられた牛よりもはるかに健康的であるということは、もはや科学的常識になりつつあります。反芻胃をもつ牛には、トウモロコシなどの穀類よりも、牧草のほうが絶対に合ってもいます。さらに、放牧となれば、牛に余計なストレスがかからず、すくすくと育つはずです。そのうえ、耕作放棄地の再利用につながるとなれば、良いことずくめです。

食いしん坊としては、放牧された牧草で育った(grass-fed)牛が、安価に食べられる日が一日も早く来ることを願ってやみません。


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