元アナウンサーでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。月十数本の原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。離れたからこそ見える日本の良さ、改めて抱く違和感など、日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 今から15年ほど前、初めての産休を控えた私に、目上の人から「おめでとう! お祝いにランチをしよう」とありがたいお誘いをいただきました。個室のイタリアン。食事の途中で、その人は「ちょっといいかな?」と目の前でタバコを取り出しました。え? 私、妊婦ですが?!と思いつつも、お世話になっているので断れず、たっぷり3本分、至近距離で受動喫煙したのでした。元が大のタバコ嫌いなうえに胎児への影響も不安でしたから、とてもつらかったです。

 ご当人は「俺はタバコを吸う時に一言断る、マナーの良い喫煙者だぞ」という認識だったと思います。当時はまだ、何も言わずに吸い出す人もいましたから。

 その後は全面禁煙の場所も増え、以前よりは受動喫煙の憂き目にあうことは減りました。それでも今年も数度あったなあ。

 6畳ほどの打ち合わせ室で「ちょっと、タバコいいですか? 苦手だったら言ってくださいね。喫煙ルームに行きますから。でもちょっとここから遠いんだよなあ、あはは」ってね、書類見ながら思いっきり話の途中なのに「では出て行ってください」と言えないの、わかってるでしょうよ。

 あと、仕事の悩みを打ち明けながら「ああ、つらくてやってらんない。吸っていい? ごめん、煙そっち行かないようにするから」って手であおぎながらひっきりなしに吸うとか。分煙レストランではなかったこともあり、やめて、とは言いづらかったなあ。

 愛煙家にはぜひ、喫煙はおならと同じだと思ってほしい。「ちょっといい?」って、人前で放屁します? まして密室とか、打ち合わせ中とか、食事中とか。でね、おならで失うものは当人の好感度だけど、タバコは他人の健康を害するんです。つまり相手をガス室に閉じ込めるのと同じってこと。

 ニコチン中毒のあなたの道連れで毒ガスを吸わされるのはゴメンです。だけど面と向かっては断りづらいもの。マナーの良い喫煙者を目指すなら、「いい?」と聞くのではなく、吸うときはぜひ喫煙室へ

 WHOによると日本の受動喫煙防止への対応は「世界最低レベル」(2014年末時点)なのだとか。お・も・て・な・し自慢のオリンピックまであと3年半。ロンドン並みの屋内全面禁煙は実現するのかなあ

※AERA 2016年12月19日号

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小島さんは、禁煙立国オーストラリアに住んでらっしゃいますから、喫煙天国・日本に帰ってきたら、それはさぞおつらいことでしょう。仕方ないと半分あきらめている人間ですら、喫煙者のマナーの悪さにはうんざりしているのですから。

「喫煙はおならと同じ」。まったくもって、同感です。

タバコと縁を切った離煙者としては、死ぬまでおならを目前でする喫煙者と縁がないことを願います。