夢と希望と笑いと涙の英語塾

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知恵と勇気でもの申す

2005年06月10日 11時08分28秒 | 時事放談: マスコミ編
この間、INDEC会員の一人から次のような質問を受けました。TOEFLの英文ライティング試験TWE(Test of Written English)に即してのものです。

「時々ゴウ先生の説明の中で『常識』として使われていらっしゃることやマスコミの言うことが分からなくなるんです。たぶん、私が勉強不足で、先生やマスコミの『常識』を知らないことがあるからだと思うんです。でも、このままだと、何かを批判的に分析せよと言われても、それができる自信がなくて・・・。どうしたらよいのでしょう?」

彼が尋ねたかったのは、背景知識がないと意見・批判はできないのかということでした。TWE対策のみならず、もうワンラクンク上のGMATの英文ライティング試験でも、社会人として働く上でも、重要な質問だと思います。

ゴウ先生もこのブログに「知らない奴は黙っておけ」タイプのご批判をいただくことがあります。日々勉強しているつもりではありますが、細かいことまで非常に詳しい人たちから見れば、ゴウ先生の時事放談シリーズなんか知ったかぶりのタワゴトに見えるのでしょう。

それでは、(ちゃんとした?)背景知識をもたないことには、沈黙しておかなければいけないものなのでしょうか?

そんなことはないはずです。詳細なデータや背後関係はよく知らないかもしれませんが、そこに与えられただけの情報に対して、その論理を吟味するだけで、その議論の正当性ないしは信頼感は十分に議論できるはずです。

もちろんこの「できる」は、節度ある態度での批判ならばもの申す権利があるという意味ですし、乏しい背景知識だけでも批判は可能であるという意味でもあります。

ですから、上記の会員にはこう答えました。「知らないことを威張ったり、開き直ったりしちゃだめだよな。それじゃ、どこかの国とおなじことになる。でしょ?だから、いろいろ勉強しなきゃ。

「だけど、詳しくは知らないけど、これは論理的におかしいんじゃないかと思ったら、それを言えばいいんだ。それが相手にはグサリと来るような痛烈な批判になるんだから。

「ゴウ先生がメディア・リテラシーと言う時には、特別な知識がなくても、つまりまったくリサーチしないかちょっとリサーチするだけで、論理的に情報の正否を見抜くスキルのことを言っている。大切なのは、そういうスキルを使って発表する勇気を持つことなんだ。そこのところを誤解しないでね」

とはいえ、実例を見せないと分かってもらえるものではないでしょう。あれこれ、探しました。そしたらば、ありました。

またまた朝日新聞がメディア・リテラシー問題というか日本語版GMAT用問題を作ってくれていたのです。

GMATのAnalysis of Argumentという試験問題には次のような課題が与えられます。ゴウ先生の抄訳でどうぞ。

「下記の文章を読み、どれだけうまく論証立てられているかを述べなさい。その際には論証の構造と証拠の有無について分析しなさい。たとえば、どのような疑わしい前提が隠されているか、どのような代案もしくは反例が文章の結論を弱めるかを考慮に入れてください」

こういうことができないと、アメリカの有力ビジネス・スクールでMBAを取るなんて夢のまた夢になるのです。まずは、日本語でできて欲しいです、ハイ。

では、チャレンジしてみましょう。

上記の課題を頭に置いて、2005年6月9日の朝日新聞の社説をお読みください。

**********

町村外相発言 すれすれはどちらか

 町村外相の口が滑らかである。国会議員ではなかった前任の川口順子氏が慎重な言葉遣いだったせいか、元気のよさが目立つ。だが、このところの発言は首をかしげざるを得ない。

 今週の講演では、こう述べた。

 「中国に行って無用にごまをする人がいるから日中関係がおかしくなる。どうして中国にあそこまでへりくだらないといけないのか。伝統的に日中友好家という人たちが理解できない」

 中国の呉儀副首相が小泉首相との会談をキャンセルして帰国することを町村氏は事前に知っていた、と自民党議員が中国側に話したというのだ。名指しはしなかったが、念頭にあったのは野田毅衆院議員の訪中だったようだ。

 野田氏は自民党総務会で発言を否定した。さらに「『ごますり』と言ったらしいが、感情を表に出した外交は必ず失敗する」と反論した。もっともな指摘だ。

 日中協会会長でもある野田氏は、小泉首相の靖国神社参拝などでこじれにこじれた関係を解きほぐそうと訪中した。本来、政府が責任をもつべき仕事である外交で政府がしくじっている時に、見かねて動いた議員外交を「無用のごますり」とおとしめるのはいかがなものか。

 町村氏はさらに、歴史教科書に対して軍国主義を賛美しているなどと近隣国で批判されていることにこう反論した。

 「教科書を執筆している人たちは左がかった人たちだ。左がかった教科書でないと日教組に採択されない。ゴルフでいえば左OB(境界外)すれすれの教科書を書くのだから軍国主義を賛美するわけがない」

 反発を呼んでいる扶桑社の教科書については中道であるとし、「したがって教科書問題はスローガンと偏見だけで批判されている」と述べた。

 文相を経験し、教科書問題にも詳しい町村氏の持論なのかもしれない。だが、日本の教科書を擁護するためとはいえ、「左がかっている」「日教組が採択」という言葉はあまりに乱暴だ。

 同じ日、外相の諮問機関「ODA総合戦略会議」ではこんな発言をした。

 「首相が靖国神社に行ったから軍国主義だとか批判はあるが、とんでもない。赤字国債を出してまでODAを一生懸命出し続け、90年代は第1の供与国だったことは胸を張って言える」

 日本が軍国主義でないことも、途上国援助に努力してきたことも事実だ。だがそれらを結びつけてしまうと、多額のODAを出しているのだから靖国参拝を批判すべきでないと聞こえないか。

 町村氏はいま、国連の安保理常任理事国入りに奔走し、年内の日中首脳会談の実現を目指すという。韓国とは近く首脳会談がある。こうした仕事と一連の発言は外相の中でどう響き合っているのか。

 政治家がわかりやすい言葉で率直に考えを述べることは歓迎するが、外交責任者としての責任と払うべき配慮があることを忘れてはならない。

**********

いかがでありましたか。どのように感じられたでしょうか。

まずは、ゴウ先生がこの社説に着目した理由からご説明します。

ゴウ先生がこの社説を取り上げたのは、確かに昨今にぎわしてくれている政治問題をあの朝日が取り上げたからでもありますが、それよりも大きな理由はこの社説のタイトルの意味が分からなかったからです。

町村外相発言 すれすれはどちらか」なんて言われても、そんなことを外相が言ったかどうか知りませんから、ナンダナンダと思って読もうと思ったわけです。

読み終えてもイマイチ釈然としませんでした。この社説では3種類の外相発言を取り上げていて、その2番目の発言の中に「すれすれ」は出てきます。「ゴルフでいえば左OB(境界外)すれすれの教科書を書くのだから軍国主義を賛美するわけがない」という具合に。

だとすれば、朝日は「ゴルフでいえば右OB(境界外)すれすれの教科書を書くのだから軍国主義を賛美する」と言いたかったのでしょうか。これが扶桑社の歴史教科書だと言っているのでしょうか。後から詳しく述べますが、まずもって意味不明です。

第一、社説全体のタイトルが2番目に置かれた問題から引用されても、全体の意図が見えません。こういうタイトルをつけるようでは、ブログ記事だって読んでもらえないし、GMATやTWEではペケです。

そんな稚拙なタイトルを持っているがゆえに、少しイチャモンつけたくなった次第です。こちらの浅学非才なにとぞお許しください。

それでは、まず構造を分析してみます。

社説は、不適切だと朝日が判断した町村外相の発言を3種類拾い上げて、論駁しようとします。そうする理由は、その発言が常任理事国入り、日中首脳会談、日韓首脳会談を控えて「外交責任者としての責任と払うべき配慮」に欠けているからだというわけです。

月並みな構成と理由ですが、チェック&バランスというマスコミの役目からすれば、時の権力者に批判的なのは分かります。こういう発想から書かれても、頭から否定はしません。

問題は、それぞれの発言が公平に取り上げられて、公平に批判されているか、であります。

しかし、それぞれの反駁を眺めてみると、あまりに杜撰すぎます。一つ一つ見ていきましょう。

ここで、注意していただきたいのは、ここで取り上げられる朝日による「」つきの引用がはたしてその通りに当人が言ったものかどうかは不問にするということです。特別な知識もリサーチもなく、どこまでこの社説にいちゃもんをつけられるかが課題ですから。

まず社説は町村外相の次の言葉に噛み付きます。

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 「中国に行って無用にごまをする人がいるから日中関係がおかしくなる。どうして中国にあそこまでへりくだらないといけないのか。伝統的に日中友好家という人たちが理解できない」

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朝日の異議です。

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 中国の呉儀副首相が小泉首相との会談をキャンセルして帰国することを町村氏は事前に知っていた、と自民党議員が中国側に話したというのだ。名指しはしなかったが、念頭にあったのは野田毅衆院議員の訪中だったようだ。

 野田氏は自民党総務会で発言を否定した。さらに「『ごますり』と言ったらしいが、感情を表に出した外交は必ず失敗する」と反論した。もっともな指摘だ。

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無知なゴウ先生にはよく分からないのが、2段落目にある野田議員の発言引用の意味です。

感情を表に出した外交は必ず失敗する」ということですが、本当でしょうか?しかも「必ず」というほど、失敗するのは必然的なんですか?実例があったら教えてください。

田中角栄は周恩来と激しく口論して国交回復をしたという逸話がありますが、こういうのは感情を表に出したとは言わないのですか?

それに、ここ15年くらいの中国の政府要人とやらの発言は、ゴウ先生の常識から考えると、どう考えても感情を表に出してはいるように思えるのですが、違うのでしょうか?教えてください。

中国側の非礼な外交態度に対して、感情を表に出さずに冷静に日本政府が対応しているように見えて、ゴウ先生はいらだつくらいなのですが。

そしてこう続きます。

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 日中協会会長でもある野田氏は、小泉首相の靖国神社参拝などでこじれにこじれた関係を解きほぐそうと訪中した。本来、政府が責任をもつべき仕事である外交で政府がしくじっている時に、見かねて動いた議員外交を「無用のごますり」とおとしめるのはいかがなものか。

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なるほど、野田議員は偉いんですね。政府ができないことをできるんだから。だったら、野田議員に首脳会談をやってもらいますか。

でもそれはできないはずですよね。よく知りませんが、いくら日本の場合総理大臣が衆議院議員から選ばれるとはいえ、フツーの衆議院議員が政府の専権事項に口を挟むのは変です。

だって、衆議院議員は立法府の人、総理は行政責任者。つまり議会の外で議員が総理に直接あれこれ言うのは本来は三権分立の精神を反古にしていることになります。

そもそも、いまは「政府が責任をもつべき仕事である外交で政府がしくじっている」状態なのでしょうか。ゴウ先生にはよく分かりません。

抗日デモがあったからですか?それは向こうの勝手でしょう。しかもいまは沈静化しています。これも現政府が動いた結果ではないのですか?

日本の車や製品があちらでボイコットされているのですか?経済交流はかなりスムーズだと思います。

尖閣列島と竹島の問題やガス田開発の問題がしくじっていることですか?ゴウ先生には分かりません。

だって、こうした問題は、小泉内閣が成立するはるか前からの問題であったはず。それに対して以前の内閣は何もできなかったのに、現政権はそこそこやっているように見えるのですが、違うのですか?

拉致問題も以前の内閣のしたことからすれば、はるかに前進したではないですか。違うのですか?

本当は中国・韓国との間で朝日が言うほど揉めていることは、あまりないのではありませんか?ない問題をあるあると狼少年になって言いふらしているようにすら見えてくるのですが。

とにかく、どこに政府がしくじっていることがあるのか、この社説の中でもっときちんと教えてください。裏読みばかりすると言われても、こんな曖昧な書き方では、それも仕方ないではないですか!

ここまででだけで、こんなに分からないことがあったのに、まだあと二つもあるんです。お付き合いください。やれやれ。

二番目はこれです。

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 町村氏はさらに、歴史教科書に対して軍国主義を賛美しているなどと近隣国で批判されていることにこう反論した。

 「教科書を執筆している人たちは左がかった人たちだ。左がかった教科書でないと日教組に採択されない。ゴルフでいえば左OB(境界外)すれすれの教科書を書くのだから軍国主義を賛美するわけがない」

 反発を呼んでいる扶桑社の教科書については中道であるとし、「したがって教科書問題はスローガンと偏見だけで批判されている」と述べた。

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いやあ、なかなかユーモアのある外相だと思いました。でもかなり過激ですから、相当しつこく書いてくるかと思うと・・・。

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 文相を経験し、教科書問題にも詳しい町村氏の持論なのかもしれない。だが、日本の教科書を擁護するためとはいえ、「左がかっている」「日教組が採択」という言葉はあまりに乱暴だ。

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エエッ、これだけ!それも「左がかっている」「日教組が採択」という言葉が「乱暴だ」とケチをつけるだけですか・・・。理解できません。

朝日にとって一番大切なのは、左翼や日教組のメンツだけなんですか!

それに、「乱暴だ」というのが分かりません。ただ単に教科書検定の現実を元文相として語っているのではないですか。

「乱暴」なのは、何の説明もなく他人を批判するこの社説です。社説を読むためには、どれだけの背景知識がいるのですか?外相発言がどのように外交上まずいのかもっと語ってください!

そして最後の横槍です。

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 同じ日、外相の諮問機関「ODA総合戦略会議」ではこんな発言をした。

 「首相が靖国神社に行ったから軍国主義だとか批判はあるが、とんでもない。赤字国債を出してまでODAを一生懸命出し続け、90年代は第1の供与国だったことは胸を張って言える」

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そうだったんですか。すごいですね、日本って。誇りに思います。ゴウ先生は国債は買ってあげられませんけど。

でも朝日によれば、そうではないのですね、真実は。

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 日本が軍国主義でないことも、途上国援助に努力してきたことも事実だ。だがそれらを結びつけてしまうと、多額のODAを出しているのだから靖国参拝を批判すべきでないと聞こえないか。

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首相が靖国神社に行ったから軍国主義だとか批判はあるが、とんでもない」という表現で、どうやら外相は、次のような三段論法を論駁したいようです。

  大前提: 靖国神社に参拝する者は、軍国主義者である。
  小前提: 小泉首相は、靖国神社に参拝する。
  結 論: ゆえに、小泉首相は、軍国主義者である。

この三段論法はムチャクチャですよね。大部分の人には、大前提が通用しません。

ゴウ先生家族は毎年8月15日には靖国神社にお参りに行きます。すごい数の人です。あの人たちはみんな軍国主義者なのでしょうか?信じられません。

靖国神社って、日本国民にとって、明治神宮や東郷神社や乃木神社と同じもので、日常的に手を合わせるところのはずです。それが軍国主義者の証だと言われたら、悲しくなります。平和を愛する気持ちはだれにも負けないつもりですから。第一、後三者も中国には相当因縁深い神社ですが、そこに参拝するのもだめなのでしょうか。

ですから、この大前提は明らかに間違いだと主張します。

だとすれば、朝日だったらこういう風に大前提を変えろと言うのでしょうか。

  靖国神社に参拝する総理大臣は、軍国主義者である。

そんなバカな!

戦後相当な数の首相が靖国に参拝なさっているはずです。これだと戦後日本の歴代首相の大半は、軍国主義者になってしまいます。事実はそうではないから、平和が60年も続いているんです。

それとも軍国主義という言葉の意味が朝日や近隣諸国ではゴウ先生の考えているものと違うのでしょうか。ゴウ先生は、軍国主義者を「外交上の問題を軍事行動で解決しようとする考え方」だと思っているのですが、違うのですか。教えてください!

ですから、おかしいのです、この三段論法。ゆえに、外相は否定しようとしたのです。

そして、その否定の仕方がけしからんと主張するのが今日の社説です。書き換えるとこういう三段論法だと思います。

  大前提: 中国に多額のODAを出したといっても、中国の要求は聞くべきだ。
  小前提: 中国に多額のODAを出してきた。
  結 論: ゆえに、中国の要求は聞くべきだ。

いやあ、これって常識的に通じない話です。どこの社会に、お金を出した人が出してあげた人間の要求をさらに聞いてあげなければならないのでしょう。中国ではこういう風にしてよいのでしょうか。信じられません。通常、お金を出した人にこそ、あれこれ出してあげた方に注意・要求をする権利があると思うのですが・・・。

しかも朝日は「聞こえはしないか」と見えない影に怯えまくっているように見えます。外交ってこちらの言い分をきちんと相手に伝え、相手の言い分も聞き、できればwin-win関係に持っていくべきものだったはずです。どうして一方的に相手の言うことを聴かなければならないのでしょうか?

ゴウ先生、読めば読むほど分からなくなる社説でした。これで朝日の言い分を聞いてくれと言われても、ゴウ先生はできません。

どうでしたか。背景知識がそれほどなくても、メディアの主張に異議を唱えることは出来るのです。知ったかぶりと言われても、おかしいと思ったことは発言するように、論理と勇気とがんばっていきましょう!

ご拝読ありがとうございました。
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2 コメント

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なるほど (エンペラー)
2005-06-11 22:03:45
これなら私にも批判が出来そうです。

「批判」と単純に書いてしまいましたが、少なくとも(先生の解説あっての事ですが)、この問題に対して疑問に持つ事も意見も出来ます。

ただ、この記事をぱっと見たら、「ふーん、そうなんだ」と言う感じで流してしまいそうな感じです。

しかしそれに流されないように、このような記事を見たときに(書き手の思いはあるにせよ)、いかに自分自身で意見を持てるかという気付き力は知識無くとも意識すれば作る事が出来ると感じました。実際日本人としてつける必要があると強く思いました。貴重な情報をありがとうございます。
返信する
勉強になります (MM)
2005-06-25 07:03:56
すごい勉強になります!

私は頭が悪く、本質を見抜けないなとへこたれていたのですが

まずは自分でポジションをとる勇気を持って、冷静に読み込んでいくことからはじめます。
返信する

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