男女シングルスをそれぞれノバク・ジョコビッチ選手、アンゲリク・ケルバー選手が制覇して終わった全豪オープン。その人気が、主催者側の改革により選手間で高まっているとか。記録しておきましょう。
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テニス全豪オープン、選手に大人気の理由は
By TOM PERROTTA
WSJ 2016 年 1 月 29 日 14:55 JST
【メルボルン(オーストラリア)】テニスの四大大会(グランドスラム)の初戦となる全豪オープンは選手の間で「ハッピースラム」と呼ばれている。特典が多いからだ。
フレンドリーな運転手による送迎は無制限。メルボルンから南へ車で約1時間半の風光明媚なグレート・オーシャン・ロードへも連れて行ってくれる。気前のいいトラベルバウチャー(航空運賃・宿泊費に使える金券)がつく。ギフト(アグブーツやアップルウオッチなど)に冒険ツアー(たとえば熱気球フライト)、映画のプライベート上映(「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」)もある。
今年はさらに、選手たちがもっと幸せになれる新たな特典が加わった。無料かつ無制限に楽しめる食事だ。
メインコートのあるロッド・レイバー・アリーナの中にあるレストランでは、選手とコーチは食事カードを提示すれば好きなだけ食べることができる。従来は1日当たり60豪ドル(約5000円)の食費が支給されていた。
全豪オープンの男子ダブルスで2004年以降、決勝に9回残ってきた双子のブライアン兄弟(米)は選手達による「エサの奪い合い」があったと話す。
マイク・ブライアン選手は「寿司には大行列ができているし、食べ物をテイクアウトするのもいるし、家族全員分を持っていくやつもいる」と言う。「ポテトフライは食べ尽くされた。きれいさっぱりと」
他にも鴨の胸肉や子牛肉の蒸し煮、揚げた豆腐入りの米粉ヌードル、各種パスタなどがある。レストランにはサンドイッチや飲み物、ドーナツ、クッキーが常備されているほか、スムージーバーもある。
ボブ・ブライアン選手はこの大会の寛大さから価値ある教訓を学んだと話す。「食べ物が無料なら、人は(いつもより)たくさん食べる」ということだ。
選手達の飽くなき食欲はテイクアウトのルールを変えた。チェックアウトの時間を短縮させるため、寿司のテイクアウトは一度に容器2個までと決められた。だが、もっと欲しければ再び並ぶことができる。
「寿司が嫌いなテニスプレーヤーには会ったことがない」と話すのは、昨年も含め過去6回全豪オープンを制したセリーナ・ウィリアムズ選手だ。
こうした特典が全豪オープンの人気を支える上で大きな役割を果たしている。スター選手はかつて、全豪オープンには出場したがらなかった。オーストラリアまで来るのは面倒である上、大会自体もウィンブルドンや全仏オープン、全米オープンに比べてそれほど魅力的ではなかったからだ。
例えば1970年代末から80年代にかけて活躍したジョン・マッケンローは全米オープンには16回出場したのに、全豪オープンには5回出場しただけだった。1974年に全豪を制したジミー・コナーズに至っては2回しか出場していない。
旅行のしやすさ、新たな施設、賞金額の引き上げが全豪オープンをマスト(必ず出場する)の大会に変貌させた(今年の優勝賞金は男女ともシングルスが340万豪ドル)。
米国のニコール・ギブス選手はとくに2500豪ドル分のトラベルバウチャーが嬉しいと話す。これは予選敗退のためだけにオーストラリアにまで来るような格下の選手も含め、出場選手全員に支給される。さらに、1試合5本までラケットのガット張りが無料になる(他の大会では1本あたり30米ドル=約3500円前後かかる)。
ギブス選手は「一番好きなグランドスラムは、とよく人に聞かれる。米国人として全米オープンだといつも答えるが、客観的なテニスプレーヤーとしてなら(好きなのは)全豪オープンだ」と言う。「(全豪オープンは)とても、とても気前がいい」
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確かに、ジョコビッチ選手のようなトップランクの選手ならば、豪華な宿泊施設に、移動用のリムジン、専用コックまでつけていますから、どこでプレーしようが変わらないでしょう。しかし、そうではないランキングの低い選手にしてみれば、こういう全豪オープンの「気前の良さ(generosity)」は最高のプレゼントに違いありません。
どういう理由で全豪が変わったのかは知りませんが、この企業努力は立派です。他の3つのグランドスラム大会が全豪に追随するかどうか、注目しましょう。
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