すばらしい試みです。ぜひとも、この全社禁煙が主流になることを願います。
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全社禁煙で「喫煙者ゼロ」に
社長が率先し、社内のムードも後押し
日経ビジネスオンライン 2014年8月26日(火) 井上 俊明
JR新横浜駅周辺を歩くと、「喫煙禁止地区、違反者には罰則(過料2000円)が科せられます」という掲示が目につく。
これについて近くにオフィスを構えるアクロクエスト テクノロジーの鈴木達夫氏(組織価値経営部マネージャ)は、「時代が当社の取り組みに追いついてきた」と話す。
ソフトウエア開発を主業務とする同社は、10年以上かけて「全社禁煙」に取り組んできた。「当時30%だった喫煙率は、現在は0%。飲み会の席を含め、タバコを吸う社員はいない」と鈴木氏は言い切る。
オープンな社風にも有害
表に示したのは、アクロクエスト テクノロジーが全社禁煙に成功した要因だ。禁煙活動に取り組む前、同社は社内分煙をしていた。オフィス内での喫煙は禁止していたが、非常階段のところには愛煙家がたむろして、タバコを吸いながら話をしていたのだ。
アクロクエストの全社禁煙が成功した主な要因
社長自らがタバコを断ち、社員に強い意思を示した
健康面以上に経営上の観点から活動を推し進めた
全社員参加の場で禁煙の意思決定を行った
それを全社禁煙にまで進めた最大の理由は、勤務時間中にタバコを吸いに行くことで生じる労働損失の解消だ。タバコを吸う社員が公然と仕事をさぼれる状況を改善しようと考えたのだ。「クライアントから電話があったり、部下が相談を持ちかけたときに、喫煙のために席を外しているようでは業務に支障が生じる」(鈴木氏)。
一方、愛煙家が口にする「喫煙所でのコミュニケーション」についても、同社は評価しない方針をとった。鈴木氏は、「当社は、社員同士が何でも自由に話し合える風通しの良さが社風。タバコを吸う人だけが固まって、重要な情報を共有してしまうのはよくこれに反する」と話す。非常階段のあたりで重要な話がされるのは、情報セキュリティの点からも問題だった。
そこで2000年から全社禁煙の取り組みをスタートさせた。早速、2001年入社者の採用からは、タバコを吸う学生の採用を見合わせた。
ヘビースモーカーの社長も禁煙
鈴木氏は、「社内禁煙活動の成否は、経営トップが禁煙するかどうかに大きく左右される」と話す。実は同社社長はヘビースモーカーだった。そこで、禁煙治療用の張り薬を使って、数カ月かけて禁煙した。
タバコを吸わない人が徐々に増えてくると、社内の雰囲気も変わってきた。口には出さないものの、タバコを吸いに席を離れる社員に対し、周囲がそこはかとなく冷たい視線を向けるようになったのだ。こうした“居心地”の悪さも、喫煙する社員へらしに一役買ったという。
「禁煙活動は、社員同士の一体感をかもし出す効果もある」と鈴木氏は話す。アクロクエストテクノロジーでは、就業規則に全社禁煙を盛り込んでいるわけではない。全体会議の席で話し、議事録に残したという。「全社員が話し合って自分たちで決めたから、守ろうという責任感が出てきた」(鈴木氏)。
既に同社の社員は、タバコの煙が漂う普通の居酒屋では飲み会を開催しなくなっている。時々借り切って飲み会を開催する会社近くのバーは、「タバコを吸わない酒場」として地元で話題になっているという。鈴木氏は、「女性にとって、タバコの煙がない会社はセールスポイントになる。採用活動の際、『喫煙者は採らない』ことをもっと前面に出してもいいのかもしれない」と話す。
様々な社員を抱え込む
アクロクエスト テクノロジーは、この7月、新しいテナントビルに移転した。床や柱、調度類には木目調が目立ち、観葉植物もたくさん置かれている。社員がリラックスして働けるようにという配慮からだ。移転前から、こうした人間的で温もりのあるオフィスづくりをしていたという。
こうした考え方は、社員に対しても貫かれている。
例えば、メンタルヘルス対策は、社内禁煙と同時期に着手した。うつ病になる社員が出てきたので、心の調子が悪そうな社員には受診を勧めたり、勤務時間を短縮したりしたのだ。だれでもそうした状態になり得るを踏まえ、社員にメンタルヘルスについて啓蒙し、周囲の理解が得られるように配慮した。
対人関係の苦手な、発達障害の1種であるアスペルガー症候群の社員も受け入れている。こうした人は高学歴者の中もおり、社会常識に欠けている面はあるが、ソフトウエア開発などではすごい力を発揮する。そこで、こうした社員への指示は口頭でなく紙に書いて行うようにし、頭の整理をするための「報連相シート」などを作成したりした。
労働時間を削減するために、夜8時にはオフィスの電気を消している。どうしても残業が必要な場合には、手元のLEDライトを頼りに仕事をしなければならない。徹夜仕事をした社員がいた場合、管理職の評価をマイナスする仕組みもある。
「ソフトウエア業界は、働いた人の数と働いた時間の積で、報酬が決まる仕組みだった。だが最近は、成果で評価する会社も出てきている」と鈴木氏は話す。こうした流れを受けてアクロクエスト テクノロジーは、時間よりも成果で社員の仕事ぶりを評価し、仕事とプライベートにめりはりがつけられるような仕組みにしていきたいという。
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10年かかりますか、やっぱり。喫煙というのは本当に厄介な代物だとわかります。ですが、どういう理由であろうが、タバコと縁を切ったことで、すべての社員が満足できているのではないでしょうか。
この流れが途絶えないようにするためにも、アクロクエスト テクノロジーの発展を祈念します。
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