齢を重ねて、風貌が初代に似てきた感のある中村吉右衛門丈。『競伊勢物語』について語っています。
**********
「競伊勢物語」に挑む中村吉右衛門
読売新聞 2015年09月01日 05時20分
「紀有常」雅の中に悲しさ / 初代と実父が得意な役
初代中村吉右衛門(1886~1954年)をしのぶ「秀山祭九月大歌舞伎」が、2~26日、東京・東銀座の歌舞伎座で開催される。
初代の養子だった当代吉右衛門は、昼の部で、初代と当代の実父である初代松本白鸚はくおうがともに得意とした「競伊勢物語(だてくらべいせものがたり)」の紀有常役に挑む。歌舞伎座での上演は1965年以来、半世紀ぶりとなる。
豆四郎・信夫夫婦と老母の小由こよしが暮らす奈良の田舎に、公家の有常が訪れる。小由は、有常が失脚した時に世話になった相手。訳あって預けた一人娘の信夫を返してほしいと告げる。実は、有常は養女として育てた先帝の娘・井筒姫の身代わりに、信夫を殺そうとしていた。
「ひなびた中に雅みやびさを感じさせる物語。忠義と義理で、我が子を殺そうとする苦しさや悲しさを、悲惨な有り様にせず、雅さの中でどう見せていくのかが眼目だと思ってます」
小由が作ったはったい茶を飲みながら、2人で思い出話にふける場面は「時代と世話の使い分け」といったセリフ術を要する。
「簡単に言えば、力強く語る『時代』と砕けた感じの『世話』。2人の息が合い、自然に使い分けられるのかがミソ。セリフ回しがうまかった初代吉右衛門が好んだ理由が想像できます」
豆四郎と信夫は有常の願いを聞き入れ、何も知らない小由は、別れを惜しむ信夫が奏でる琴の音に合わせ、砧きぬたを打つ。
「死の直前にお琴を弾き、太ざおが掛け合う。歌舞伎ならではのすてきな場面」
信夫役の尾上菊之助も琴の稽古に励んでおり、「雰囲気にあったもの悲しい音を聞かせてくれると思う」と期待する。
白鸚は56年に有常を演じ、2度目の芸術祭賞を受賞しており、本作の上演は当代の悲願だった。
「実は実父の舞台を見たかどうかも覚えてないんです。若い頃は手が出せなかった。ですが、私も経験を積み、当時の録音や写真の資料から物語を再構築していく力が、少しばかりついたと思うので」
昨年12月に座頭を務めた「伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)」でも、44年ぶりに「岡崎」の場面を復活させ、第22回読売演劇大賞で歌舞伎初の大賞を受賞した。
「とっかかりがあるにせよ、物語を構築するという意味では、復活ものも新作と同じ部類に入る。今回も同じ気持ちです」
夜の部では通し狂言「伽羅先代萩めいぼくせんだいはぎ」で仁木弾正を勤めるが、若き日に教わった動きに71歳の体が「追いつかない」と笑う。
「あの頃に分からなかったことが分かってくると、体力は落ちていくというジレンマ。でも、初代の名を汚すわけにはいかないという執念だけは、いつまでも変わらないんです」と語った。
(電)0570・000・489。
(冨野洋平)
**********
大雨続きなので大変ですが、吉右衛門ファンとしては早く見たいので、できれば今日にでも歌舞伎座に行ってきます。もちろん、一幕見席です。空いているとよいのですが。
公式サイト:http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/2015/09/_1_5.html
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます