夢と希望と笑いと涙の英語塾

INDECという名の東京高田馬場にある英語塾で繰り広げられる笑いと涙の物語
新入会員募集中!

麻生太郎外相論文を称える

2006年03月17日 08時08分41秒 | 時事放談: 中国編
ゴウ先生が知らないうちに、わが麻生太郎外務大臣がすごいことをやってくれました。3月13日付けのアメリカのWall Street Journal(WSJ)に中国批判の論文を掲載したのです。

在日領事館のサイトで原文の英文とその和訳が読めます。WSJのサイトに直接入ると購読料を取られますので、領事館のサイトの方が便利です。

ここでは、和文で論文を紹介したいと思います。中国当局者は当然反発を強めていますが、ゴウ先生に言わせれば、ごくまともなことばかり。どうぞ。

**********

3月13日付ウォールストリート・ジャーナル紙(A18面)
「日本は民主的中国を待つ(Japan Awaits a Democratic China)」
(麻生太郎外務大臣投稿)

私は中国について前向きな見方をしている。中国は、香港と合算すれば、既に我々の歴史上最大の貿易パートナーであり、日本の最近の景気回復を勢いづけた。これから先も、日本と中国の相互依存はますます明確になる一途だろう。私は、中国が自由で民主的な国になっていく限り、中国が東アジアの舞台の中央に返り咲くことを歓迎する。私は中国がそうなると信じている。

アジアにおいて民主主義は拡大している。日本の首相が、最も近隣の民主主義国に行こうと思ったら、一昼夜かけてキャンベラまで飛んでいかなければならなかったのはそう遠い昔のことではない。今では世界で最も活発な民主主義国の首都であるソウルまでは西に向かって2時間のフライトである。

中国の変化は間近に迫っており、私は、その発展の見通しに前向きである。日本や韓国やインドネシアの人々は皆、経済発展の継続が安定した中産階級を創り出し、それが政治的代表の拡大への跳躍台になると証言できる。問題は最早、中国が完全に民主主義国へと「転身するか否か」ではなく、「どのくらいのスピードで変わるか」である。私は、中国にいる我々の友人に対し、日本はその目的に関する中国の成功にコミットしていると保証できる。

想像してほしい。今後20年の間に、日本に対する中国の影響は莫大なものになるだろう。学生からリタイアした人々まで、中国からの行楽客は、日本の観光業界の最大の顧客になり、京都などの観光地を埋め尽くすだろう。東京のタクシー運転手も、英語ではなく中国語を話すようになるだろう。中国は日本経済における最大の投資者となり、東京で取引される株式のかなりの部分が中国の手にかかることになるだろう。今日、日本企業は投資のマーケティングでニューヨークに出張するが、じきにまずは上海に飛ぶようになるだろう。

実は、アジアの歴史的コンテクストを考えれば、このシナリオは特に目新しい話でもなければ驚きでもない。中国は、多くが主張するように新たに世界の大国になったのではない。実際には、その歴史的な偉大さを取り戻しつつあるのである。私は、もはや帝国が存在する場所はないことを中国が認識することを望む。むしろ、今日の世界における指針は、グローバルな相互依存とそこから生まれる国際調和である。

中国の歴史は、最も極端に振れた歴史のひとつである。1842年、清朝がアヘン戦争で負けて西側の列強の支配下に入った。これが一方の極端である。また、1949年、毛沢東が大躍進、文化大革命に突き進んだとき、中国は他方の極端にぶれた。今ではこれらの両方が誤った政策であったと見なされている。最近に至るまで、中国では、ヴィジョンと現実、今ある姿と望む姿とをうまくバランスを取る余裕がなかった。

非常に重要なことに、中国は日本が行った過去の失敗の経験から学ぶことができる。日本は、20世紀の間に極端なナショナリズムを2度経験した。一つの象徴的な出来事は、1964年の東京オリンピック開幕の直前に起こった。ある日本の十代の若者が、当時のライシャワー駐日大使を刺したのである。当時、日本人の感情は、米国のパワーと影響力を前にして高揚していた。北京の指導者たちは、このような日本の経験から教訓を学び、ナショナリズムの高まりをよりよく制御することができるだろう。また、1960年代および70年代に日本を苦しめた環境汚染の問題も、中国が、日本の成功から影響を受けるのと同じくらい、日本の誤りから学んでほしいと願う分野である。

軍事的プレゼンスについては、日本は、アジアの安定装置(ナチュラル・スタビライザー)である。日米は、世界で最も長い期間にわたる安全保障パートナーシップを結んでいる。それは透明性が 高く、二つの民主主義国の間の関係である。日本人も米国人も、単独で行動すれば、不信を抱く向きが出てこよう。他方、共に行動す れば、誤解の余地はない。中国とその他すべてのアジア諸国は、今後も日米が共同で提供する、地域に組み込まれた安定装置(ビルト・イン・スタビライザー)を頼ることができる。これは、中国政府にも利用可能な公共財なのである。そこで私は、中国の防衛支出を十分に公開することを要請したい。中国は、これがまだ不透明であることを認めており、また、この10年間で3倍になっている。

最後に、日本の戦後の歩みについて考えたい。私は、日本が、少数の例外はあるものの、基本的に自らをオープンにし、そして近隣諸国に仲間として接してきたと自信を持って言えると思う。自らを「技術屋」だと自負している者として、私は、日本が近隣諸国に対し示してきたこのような態度を「P2P」あるいは「PEER TO PEER」の関係と称してきた。

私は、こうした考えが広く特に中国の人々の間で共感されればと望んでいる。このため、私は、外務省の同僚に、複数年にわたる学生交流のプログラムを創設するように要請した。この計画は、中国の将来に対する私のビジョンのように、極めて前向きなものである。

私は、日本の若者が中国を温かい目で見てくれることを強く望んでいる。中国の成長は、誰の利益も妨げるものであるべきではない。我々の新たなプログラムは、何千人もの日中の高校生の交流を促進し、これらの若い大使達が互いの国の一般家庭に滞在し相互理解の種を植えるものである。このプログラムが成功すれば、20年後には、日本の男女は中国について自ら直に得た知識をもって、中国人を最もクールな友人として数えるようになるだろう。そして、さらに多くの中国人も、日本についても同じように感じるようになるだろう。

**********

現職の外務大臣が他国に対することで、アメリカの大新聞に寄稿したなど前代未聞のことであります。こういう積極的なマスコミ誘導は大変立派なことだとゴウ先生は考えます。このようにして、世界中の応援を勝ち取らなければ、日本の国際戦略は危ういのですから。

しかも、中国寄りの、アメリカの朝日新聞ことNew York Timesや全国紙で発行部数は多いものの国際問題に関心の薄い読者が多いUSA Todayなどを避けて、WSJにしたのは、実にしたたかな計算です。

外務省のチャイナ・スクールの連中などは慌てているかもしれませんが、そんなことどうでもよろしいのです。獅子身中の虫に足を引っ張られることなく、外相には信念を貫いてもらいたいと思います。

にもかかわらず、このことに対する日本国民の認知度が決して高くありません。残念なことです。

本格的に動き出した、本音で語る麻生太郎外相に注目していきましょう。

++++++++++

なお、麻生論文の英語版をご覧になりたい方は、次をクリックしてください。英語版はこちらをクリック!

++++++++++

関連新聞記事

麻生外相、米紙に論文 中国の民主化促す 「真の国防費公表を」 (産経新聞) - goo ニュース

「外交常識に背く」中国が麻生外相の批判連発 (読売新聞) - goo ニュース

++++++++++

中国側の反応です。

**********

中国政治体制への批判は不適切 麻生氏発言で外交部

外交部の秦剛報道官は15日、日本の麻生太郎外相がこのほど発表した文章の、中国に関する部分について、「日本の外交当局の最高責任者が中国の政治体制を勝手に論じることは、極めて不適切なことだ。日本の過去の誤りも、他国にあれこれ指図する根拠にはならない」と述べた。

麻生外相はこのほど、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」に、「日本は民主的な中国を待望する」と題する論文を掲載した。その中で「中国はかつて大躍進や文化大革命など誤った政策を行い、今もまだ理想と現実の間で平衡点を探し当てていない」とした上で、中国は遅かれ早かれ民主国家になるとの考えを表明。中国が日本の過去の誤りから学び、国内のナショナリズムを抑え、「帝国化」を避けるべきだと述べた。

秦報道官はこれについて、次のように述べた。

中国の特色ある社会主義の建設は、中国の国民自らの選択であり、中国の国情に合致している。中国の発展は中国国民に幸福をもたらすだけでなく、アジアや世界の平和、安定、発展への重要な貢献となっている。日本の外交当局の最高責任者が中国の政治体制を勝手に論じるのは、極めて不適切なことだ。

  中国は平和的発展の道を堅持する。現在も未来も、覇権を追求することはありえない。これは中国の伝統文化、発展の必要性、国益によってよって決定づけられたことだ。日本にとって今重要なのは、自国の歴史認識問題を適切に処理し、アジアの隣国の信頼を真に勝ち得ることだ。

中国は国と国との相互尊重、対等な付き合いを一貫して主張しており、教師気取りの態度には反対する。周知の理由で、日本の過去の誤りも、他国にあれこれ指図するための根拠にはならない。(編集SN)

「人民網日本語版」2006年3月16日

************

対等な付き合いをしていないのは、明らかに中国側なのですが・・・。

とにかく中国と麻生外相の動向からは目を離せません。

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 中国の軍拡は、実戦想定か | トップ | 世界一厳しい禁煙条例が施行さる »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
読み応えがありました (MM)
2006-03-21 23:47:56
中国共産党が抱える悩みがわかりやすい論文でした。経済成長によって、民主主義への移行を望む中産階級の登場が内部の軋轢となっています。そこを逆手にとった論文であり、読み応えがありました。
返信する

コメントを投稿

時事放談: 中国編」カテゴリの最新記事